名良橋晃の定点観測♯35「J1の優勝争いを分析。C大阪、磐田、川崎は守備力が向上。浦和は守備力の改善が必須」

好調のC大阪には穴がない。磐田の川辺に注目している

好調のC大阪には穴がない。磐田の川辺に注目している

柿谷(右)、山村(中央左)などを擁するC大阪は、攻守のバランスが取れている。Photo/Getty Images

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J1は7月29日の第19節から後半戦がスタートします。優勝争いに目を向けると、鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、川崎フロンターレなど開幕前から絡むだろうと考えられていたチームに加えて、セレッソ大阪、柏レイソル、横浜F・マリノス、ジュビロ磐田といった“予想外”のチームが上位となっています。ここ数年、優勝争いから遠ざかっていたこれらのチームがどこまで絡めるか、上位をキープできるかが後半戦のひとつの見どころになります。

私がとくに驚いたのは、C大阪の躍進です。質の高い選手が多く、もともと力があったところに尹晶煥監督の就任で戦う姿勢が植え付けられ、付け入るスキがない穴のないチームとなっています。清武弘嗣がケガで離脱したものの、杉本健勇、柿谷曜一朗に、トップ下へ大胆にコンバートされた山村和也が加わった攻撃は迫力があり、得点力もあります。

山口蛍、ソウザのダブルボランチも機能しているし、山下達也、マテイ・ヨニッチで固める最終ラインも連携が取れていて、最後方にはGKキム・ジンヒョンがいます。チームとしてバランスが整っていて、第17節FC東京戦、第18節柏戦にいずれも逆転勝ちするなど勝負強さもあります。また、山村和也を前線に起用するシステムに固執するのではなく、状況に応じて4バックから5バックに変更し、最終ラインに下げることもあります。今後は他クラブからスカウティングされたうえで戦うことになりますが、こうした柔軟性があることを考えると、シーズン終盤まで優勝争いに絡むかもしれません。
磐田については、やはり決定的なパスを出せる中村俊輔の加入が好影響を与えていると思います。試合を重ねるごとに周囲との連携が取れてきて、同じく新加入の川又堅碁がゴールを奪うようになってきました。この両名がフィットしてきたことで、チーム全体に勢いが生まれ、勝点を積み上げています。

そうしたなか、川辺駿が中盤で良い動きを見せています。すごく自信をつけていて、プレイに迷いがありません。中村俊輔が下がったときは自分が前に行き、上がったときは下がる。献身的に上下動できる選手で、バランスの取り方が絶妙にうまいと感じます。加えて、正確なパスが出せるし、ドリブルもできて前線に飛び越すこともある。川辺駿は私がいま期待している選手のひとりです。

守備も確実に改善されていて、昨季から劇的に失点が減っています。第18節を終えて15失点は横浜FMと並んでJ1最少失点であり、守備の固さが際立ちます。この磐田がどれだけ優勝争いにからんでくるか非常に楽しみですが、29日の第19節が川崎とのアウェイゲームとなっています。先日磐田の試合を取材したときに服部年宏強化部長と話したのですが、「その試合(川崎×磐田)は重要。そこだよね」と意識していました。磐田は後半戦の最初にいきなり重要な一戦を迎えることになります。

守備の改善が見られる川崎。浦和はスタイルを貫く

守備の改善が見られる川崎。浦和はスタイルを貫く

攻撃力は問題ない。浦和が優勝するためには、守備力の改善が必須だ。Photo/Getty Images

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シーズン当初はケガ人が多く、なかなか結果が出ていなかった川崎ですが、試合を重ねるごとに新加入の阿部浩之がフィットし、いまではどこからでも得点できるチームとなっています。タイトなスケジュールのなか行なわれた第17節鳥栖戦はアウェイで2点をリードされる苦しい展開になりましたが、3点を奪って逆転勝利を収めています。ケガから復帰した家長昭博も活躍しつつあり、今後もっと攻撃力がアップすることが予想されます。ACLを含めたシーズン後半戦を通じてどんなチームに仕上がるのかとても楽しみです。

攻撃力に目がいきがちな川崎ですが、現役時代を鹿島で過ごした経験を持つ鬼木達監督は球際の強さを求めており、守備面に改善が見られます。私個人としては安定した守備力を持つチームが優勝すると思っているので、前線からの連動した守備がしっかりとできている川崎は最後まで優勝争いに絡むのではないかと見ています。

逆に、浦和レッズは守備面に改善が見られず、同じようなパターンで簡単に失点するケースが目立ちます。攻撃力があり、得点を奪う力は間違いなくあります。あとは守備のところをどう修正するかなのですが……。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の教えのもと常に真っ向勝負を挑むのもいいですが、対戦相手は浦和のシステムや戦術を詳しく研究し、勝つためにいろいろな対策を練っています。自分たちのやり方を追求しつつ、結果が出ないときは柔軟な判断が必要だと思います。

サンフレッチェ広島は下位に低迷したことで森保一監督が辞任し、ヤン・ヨンソン新監督が就任しました。パトリック、ネイサン・バーンズ、丹羽大輝を獲得し、攻守両面に即戦力も補強しています。浦和がスタイルを維持しているのに対して、広島は新監督、新戦力を迎えました。今後、両チームがどんな結果を導き出すのかとても興味深いです。

最後に、J2第22節ジェフユナイテッド千葉×カマタマーレ讃岐で気になった判定ミスが2つあったので指摘しておきます。13分に千葉が奪った先制点は、羽生直剛がミドルシュートを放ち、讃岐のGKがセーブしたボールをラリベイが押し込んだものでした。しかし羽生直剛がシュートを打ったときに、ラリベイはオフサイドポジションにいたように見えました。讃岐の抗議によって試合は中断しましたが、判定は覆りませんでした。

80分には千葉が右サイドから上げたクロスが讃岐DFの手に当たったとしてPKになりましたが、これは明らかにペナルティエリアの外で讃岐の選手に当たっています。ハンドだったにしてもFKが妥当で、ちょっと信じられない判定でした。主審が間違った判定をしてしまったと思ったら、速やかに副審や第4審判が正せばいいのではないでしょうか? PKになったハンドは明らかにペナルティエリア外でのプレイであり、4人の審判全員が確認できなかったのだとしたら、それはそれで大きな問題です。

この一戦だけでなく、審判の判定ミスは度々見られます。私は以前から選手の競技力向上に審判がついていけていないと感じています。ビデオ・アシスタント・レフリーの導入だけが判定ミスをなくす手段ではないと思います。Jリーグの発展のためには、選手だけではなく審判の質も上げなければいけないと切実に感じています。

構成/飯塚健司

theWORLD188号 2017年7月23日配信の記事より転載

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