昌子、槙野のパフォーマンスには不安も
2018ロシアワールドカップ出場を懸けた8月31日のアジア最終予選・オーストラリア戦がまもなくやってくる。日本代表は勝てばワールドカップ出場が決まるが、オーストラリアは決して楽な相手ではない。ホームで戦えるとはいえ攻め込まれる場面もあるだろう。そんな中で不安なのが日本代表のセンターバックだ。すっかり日本の最終ラインを束ねる存在となった吉田麻也は所属するサウサンプトンでも主軸の1人になっており、プレシーズンマッチではキャプテンマークも巻いている。しかし、その吉田も5日のセビージャ戦で太ももを負傷してしまい、オーストラリア戦に不安が生まれている。吉田が問題なく出場できるとしても、相棒を誰に任せるかも問題だ。
前回の代表招集ではこれまで常連だったFC東京の森重真人がメンバーから外されており、センターバックでは鹿島アントラーズの昌子源、浦和レッズの槙野智章、ガンバ大阪の三浦弦太を招集している。イラク戦では昌子が吉田の相棒を務めたものの、最高の出来だったとは言い難い。さらに昌子は29日のヴァンフォーレ甲府戦でも不安定なパフォーマンスで、GKにバックパスを選択しようとしたところを後ろからドゥドゥに詰められてボールをロストしてしまい、GK曽ケ端準と1対1のシーンを作られる軽率なプレイがあった。DFのミスは試合の行方を変えてしまう危険があり、オーストラリア戦と9月6日のサウジアラビア代表戦では90分間 パーフェクトなプレイが要求される。昌子は急激な成長を見せているものの、甲府戦でのプレイは不安だ。
また、昌子や三浦に比べて代表経験が豊富な浦和の槙野にも不安が残る。まず浦和はチーム全体が守れない状態に陥っており、リーグ戦でも失点が続いている。チーム状況も影響しているだろうが、槙野も相手FWとの1対1に敗れるケースが目立つ。カウンター、ロングボールの対応に不安があり、29日のコンサドーレ札幌戦ではコーナーキックで都倉賢との競り合いに敗れてしまい失点。そのフラストレーションもあったのか、失点後には都倉の顔面付近を故意に蹴ったとの判定で退場処分を命じられている。現時点で槙野を含め浦和の選手を吉田の相棒にチョイスするのは危険だろう。
残る三浦は大阪ダービーで得点を決めるなど活躍したが、代表での経験が乏しい。この大一番で先発起用するのはギャンブルだ。さらにガンバの最終ラインもセレッソ大阪戦では杉本健勇、山村和也の2人を完璧に抑えきれず、ボールを収められてしまう場面も目立った。今のオーストラリアはショートパスを繋ぐチームに変化しているものの、前線にはトミ・ユーリッチ、トム・ロギッチなど大柄な選手も揃う。そこで力負けしているようでは、オーストラリアを無失点に抑え込むのは難しいだろう。
今の状況を考えると森重を代表に戻す案も検討したいところだったが、その森重は7月2日のセレッソ大阪戦で負傷。28日にはクラブが左腓骨筋腱脱臼で4か月ほど離脱することを発表しており、最終予選のラスト2試合には当然間に合わない。代表の最終ラインには経験の浅い選手を配置することになる可能性が高く、かなり不安が残る。オーストラリアは今夏ロシアで開催されたコンフェデレーションズカップ2017でグループステージ敗退に終わったが、グループステージの全3試合で得点を記録している。高さと技術を兼ね備えるロギッチ、スペースを作り出す動きの上手いロビー・クルーズ、前線へのダイナミックな攻め上がりが魅力のマッシモ・ルオンゴ、そしてスーパーサブ的存在のティム・ケーヒルと興味深い人材は揃っている。フルメンバーではないとはいえ、ドイツ代表から2得点、チリ代表から1得点を挙げた攻撃力は脅威だ。
9月のサウジアラビア戦がアウェイゲームであることを考えると、日本としてはホームのオーストラリア戦でワールドカップ出場を決めておきたい。攻撃陣がオーストラリアから大量得点を奪うシナリオはなかなか想像しにくいため、接戦を制すためにも守備陣が踏ん張る必要があるだろう。代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは誰をセンターバックにチョイスするのか。オーストラリアとの決戦が迫った中で守備陣には不安が残っている。