【欧州5大リーグの勢力地図#3】ストップ・ユーヴェ! 激戦必至のセリエAで王座を狙うライバルたち

攻撃力アップに成功も守備面で不安が拭えないユーヴェ

ユーヴェの未来は若きエースに託された。今季から栄光の背番号「10」を身につけるディバラ photo/Getty Images

ここ数年、どのチームも打倒ユヴェントスで戦ってきたが、絶対的王者に追随することもできず、圧倒的な強さを見せつけられてきた。ゴンサロ・イグアインをライバルであるナポリから引き抜いた昨シーズンも、後続との差を広げたと考えられていた。ところが、実際に出された結果は違った。

ユーヴェは最終的に6連覇を達成したが、優勝が決定したのは残り2試合となった第37節だった。ひとつ前の第36節では2位ローマとの直接対決に1-3で敗れており、あわやというシーズンだった。そのローマとは勝点4差、3位ナポリとは勝点5差という例年にない“僅差”でのスクデット獲得で、アドバンテージがなくなっていることを感じさせた。

ユーヴェの連覇を止めるのはどのチームなのか──。これまでは非現実的だったが、昨シーズンの結果、そして今オフの各チームの補強をみるといよいよ一時代が終わりを告げるかもしれない。今シーズンのセリエAは昨年以上に白熱した優勝争いになりそうだ。

期待の新戦力D・コスタ(左)とベルナルデスキ(右)。ユーヴェを7連覇へ導けるか photo/Getty Images

7連覇を目指すユーヴェだが、堅守を支えてきたCBレオナルド・ボヌッチがミランへ、右SBダニエウ・アウベスもPSGへ移籍した。前者のポジションはダニエレ・ルガーニがカバーすると考えられ、後者にはマッシミリアーノ・アッレグリ監督の元教え子であるマッティア・デ・シリオをミランから獲得している。また、どちらのポジションでもプレイできるアンドレア・バルザーリも36歳ながら健在だ。

このように人材はいるが、最終ライン4枚のうち2枚の顔ぶれが変わるのはいかにユーヴェといっても不安がある。さらには、左SBアレックス・サンドロを狙っているチームも多く、もし移籍するとなれば相応の補強が必要になってくる。バルザーリだけでなく、ジョルジョ・キエッリーニ(33歳)、ステファン・リヒトシュタイナー(33歳)など守備陣には年齢が高めの選手が多いのも気になるところだ。

とはいえ、おそらく採用するであろう[4-2-3-1]の「3」の部分に関しては、フェデリコ・ベルナルデスキ、ドウグラス・コスタなどを補強し、選手層を増している。攻撃力に関しては、昨年以上かもしれない。問題は「2」のポジションだったが、すでにブレーズ・マテュイディがメディカルチェックを受けており、獲得に至ればしっかりと強化されることになる。逆に、マテュイディが獲得できないと同ポジションの強化も必須となる。

こうした事実を整理すると、今シーズンのユーヴェは決して磐石ではなく、守備面に付け入るスキがあることをうかがわせる。では、代わってスクデットを獲得するとしたら、それはどのチームなのか? ローマ、ナポリ、さらには大型補強を行なったミランにもチャンスがありそうだ。

大本命は積極補強のミランか ローマ、ナポリも目が離せない

主力が残留し、より一層チームとしての成熟度が増すナポリ photo/Getty Images

昨年シーズン、ユーヴェの牙城をあと一歩で崩すところまで迫ったローマやナポリに必要なのは、下位との対戦で勝点を取りこぼさないことだ。ユーヴェの上をいくためには、引き分けで勝点2を失うのも痛い。現地メディアによると、ローマのエディン・ジェコは「(ユーヴェに)たしかに近づいたが、その他のクラブとの対戦でポイントを落としたのが痛かった」と昨シーズンを振り返っている。また、エメルソン・パルミエリも「すべての勝点が重要。格下相手にポイントを落とした代償を支払うことになった」とコメントしている。

ローマは移籍の噂があったラジャ・ナインゴランやコスタス・マノラスの慰留に成功し、一方で最終ラインにアレクサンダル・コラロフ、前線にグレゴワール・デフレルなどを獲得して攻守両面の戦力を高めている。あとは、サッスオーロから引き抜いたクラブOBでもあるエウゼビオ・ディ・フランチェスコ新監督のもと、攻撃的スタイルを貫いて勝点を積み上げるだけとなっている。

現状、あまり大きな動きをみせていないナポリは、3年目を迎えるマウリツィオ・サッリ監督のもと、確実に精度を高めてきたコレクティブなサッカーでスクデットを取りにいく。昨シーズンは黒星がどこよりも少ない4敗(ユーヴェは5敗)だったが、引き分けが8試合(ユーヴェは4引き分け)もあり、セリエBに降格したペスカーラ、パレルモにも引き分けている。こうした取りこぼしをなくさなければ、ユーヴェには届かないだろう。

ユーヴェからミランへ電撃移籍を果たしたボヌッチ。新天地では主将に任命される photo/Getty Images

今シーズンを楽しませてくれそうなのが、潤沢なチャイナマネーを得て200億円超えの予算を費やす大型補強を行なったミランだ。前述したボヌッチをはじめ、アンドレア・コンティ、リカルド・ロドリゲス、フランク・ケシエ、ハカン・チャルハノール、ルーカス・ビリア、アンドレ・シウバなどを続々と獲得。いずれも良質な即戦力だが、これで終わりではなくさらなるストライカーの獲得を画策している。一方で守備神のジャンルイジ・ドンナルンマの慰留に成功するなど、ミランは確実に戦力を高めている。

これだけ選手が加入すると新たなチーム作りが求められるが、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督に率いられた新生ミランは中国で開催されたインターナショナル・チャンピオンズ杯でバイエルンを4-0で下し、UELの予選ラウンドでも連勝するなど確実に勝利を収めている。ついに復活するのか、そう簡単にはいかないのか……。今シーズンもミランはいろいろな話題を提供してくれそうだ。

これらのチームと比べると、補強がうまく進まなかったインテルは少し小粒な印象を受ける。長友佑都がプレイする左SBのポジションにダウベルトを獲得し、中盤から前線にかけてボルハ・バレロ、マティアス・ベシーノを補強、ステヴァン・ヨヴェティッチも戻ってきたが、インパクトにかける。ただ、エムレ・モルやユリアン・ドラクスラーの獲得を狙っているのも事実で、移籍期限である8月31日まで選手編成は続くことになる。いずれにしても、いよいよ力をつけてきた対抗馬たちがユーヴェを蹴落とすときやってきたのか。今季のカルチョは激戦必至だ。

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。

theWORLD189号 2017年8月23日配信の記事より転載

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