ネイマールは正しい道を歩んでいるか 目立つPSGでの自己中心的プレイ

PSGに移籍したネイマール photo/Getty Images

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現代サッカーの流れから逆行している

今夏バルセロナからパリ・サンジェルマンに移籍したブラジル代表FWネイマールは、バロンドール獲得へ向けて正しい道を歩んでいるのだろうか。その才能は疑いようもなく、現段階でも世界トップクラスの選手なのは間違いない。近い将来バロンドールを獲得するだけのクオリティは備えている。しかし、PSGへの移籍が成長に繋がるかは微妙なところだ。

ネイマールはPSGに移籍することでリオネル・メッシの引き立て役というポジションから脱し、本当の主役になることができると言われてきた。その予想通りPSGではすっかり主役になっており、ネイマールを中心にチームは回っている。しかし、そのぶん独り善がりなプレイも目立つ。観衆を沸かせる派手な足技にトライすることも多く、現代サッカーの流れに逆行しているようにも感じられる。その姿はどこかブラジルのサントスで自由気ままにプレイしていた頃を思わせるものがあるが、果たしてこれは正しい成長と言えるのだろうか。

ネイマールは2011年に日本で開催されたクラブワールドカップにサントスの一員として出場し、決勝でバルセロナに世界トップレベルの実力を見せつけられて大敗した。その2年後には自身に衝撃を与えたバルセロナへ移籍し、ネイマールはそこで組織立ったプレイを学習。バルセロナの独特な哲学に少し窮屈そうにしているところもあったが、ネイマールは徐々に現代サッカーに合う選手へと変化していった。しかしPSGに移籍したことで、再びネイマールは独り善がりな王様になりつつある。
データサイト『WhoScored』によると、ネイマールは昨季リーガ・エスパニョーラで1試合平均5.6回のドリブルにトライしていた。これでもチームトップの数字だったが、PSGに移籍してからは1試合平均9.8回のドリブルを試みている。まだシーズンは始まったばかりだが、このままバルセロナ時代以上にドリブルを仕掛け続けるだろう。すでにリーグ・アンではトゥールーズ戦で相手選手4人に囲まれたところを突破してゴールも決めるなど、ドリブルから信じられないゴールも生まれている。しかし、ドリブルを仕掛ける回数が増えたぶんロストの数も増えている。

ここまでは1試合平均4.8回のボールロストとなっており、昨季は2.8回だった。ネイマールが今後もPSGで同様のプレイスタイルを続けるならば、ボールロストも当然増えてくる。フランス国内ではPSGが圧倒的な力を誇っているために目立たないが、チャンピオンズリーグではネイマールの不用意なボールロストが失点に繋がる可能性もある。さらにそのスタイルをブラジル代表でも続けるとなれば、ワールドカップなど大一番で悪影響が出てしまう恐れもある。

また、最近は相手選手やチームメイトと小競り合いを起こす機会も目立つ。移籍が完了する前の7月にはバルセロナでの練習中にネウソン・セメドと激しい口論となり、試合中にも相手DFと言い合いになることも珍しくない。ネイマールはファウルをもらおうと派手に倒れることもあり、それに加えて派手な足技を見せつけられるためマークについたDFがフラストレーションを溜めてしまう。それにネイマールも応戦し、小競り合いになるケースも見慣れたものになってきた。これには先日チャンピオンズリーグで対戦したセルティックDFミカエル・ルスティグも世界最高の選手になるにふさわしくない行為と苦言を呈している。

ネイマールはPSGへ移籍したことでメッシの影から抜け出した。バルセロナ時代以上に注目が集まることとなり、バロンドール獲得のチャンスが増したと考えることもできる。しかしバルセロナで学んだ組織プレイを忘れたかのような独り善がりなドリブルを続けることは、世界一への正しい道とは言えないはずだ。もちろん史上最高額の移籍金が動いたことでプレッシャーもかかり、ネイマールにも観衆を盛り上げなければとの気負いがあるのだろう。問題はここからだ。メッシ、クリスティアーノ・ロナウドのように世界の頂点に立つためには、何が本当に必要なのかを見極めなければならない。PSGで自由気ままにプレイすることが世界最高の選手になるために必要なものではないはずだ。

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