日本は先に失点すると苦しい 積極的な守備で先制点を狙う
4年前とは違い、コロンビアにはハメス・ロドリゲス(左)に加えて、ファルカオ(右)もいる photo/Getty Images
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あまりにも厳しい試練のようにも感じるし、雪辱を果たす絶好の機会を与えられたようにも感じる。日本の初戦は2014年ブラジルW杯のグループリーグで対戦し、1-4で完敗を喫したコロンビアとの再戦となった。日本は過去に5回W杯に出場し、2回ラウンド16に進出しているが、いずれも初戦で勝点を得ている。逆に、初戦で勝点を得られなかったときはグループリーグで敗退している。すなわち、4年前のリベンジがかかった一戦は、過去を払拭するとともに、グループリーグ突破という目標を達成するためのものでもある。
とはいえ、客観的にみればどう判断してもコロンビアのほうが強い。世界でも有数の指導力を持つホセ・ペケルマン監督のもと完成度を高めてきたコロンビアには、ここ一番の勝負強さがある。とくに、大事な試合では高い集中力を発揮し、しっかりと勝点を奪ってみせる。南米予選でもウルグアイやアルゼンチンに0-3で完敗した一方で、負けられない状況での下位とのアウェイゲームではしっかりと競り勝って勝点を得ている。
4年のときを経て、コロンビアはより熟成されている。ハメス・ロドリゲス、ファン・ギジェルモ・クアドラード、クリスティアン・サパタ、アベル・アギラール、サンティアゴ・アリアスなど前回大会を経験している選手も多く、彼らは過去最高位(ベスト8)の更新を狙っている。
なにしろ、ケガのためブラジル大会に出場できなかったエースのラダメル・ファルカオが調子を取り戻していて、南米予選が終盤を迎えた第16節ブラジル戦、第17節パラグアイ戦で得点している。さらに、今シーズンは所属クラブのモナコでもゴールを量産している。前線には他にも、カルロス・バッカ、ミゲル・ボルハ、テオフィロ・グティエレスなど異なる特長を持つ個性的な選手たちが揃っている。「今回はファルカオもいる。もっと先まで行けるだろう」と語るのはホセ・ペケルマン監督で、日本がこの相手から勝点を取る姿がなかなかイメージできないのが現状だ。
日本の攻撃は前線へボールが入らないとカタチにならない。大迫にかかる負担が大きい photo/Getty Images
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イメージできないが、日本を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は相手を分析する能力に優れ、どうやったら勝点を取れるかあらゆる方向から対策を講じ、万全の準備をして試合に臨むタイプだ。国際大会の経験も豊富で、初戦の重要性、コロンビア戦が持つ意味も十分に理解している。ハメス・ロドリゲス、クアドラード、アベル・アギラールといった中盤の選手たちに厳しくプレッシャーをかけ、前線にパスを出させない。ボールを奪うことができたら、おそらく大迫勇也が務めるだろう前線に素早く、正確にくさびを入れ、両サイドがサポートする。あるいは、狙えるなら一発で相手DFラインの裏を突く──。
こうしたサッカーを仕掛け、なんとか先に1点を取りたい。リードを奪うことができれば、コロンビアはリスクを犯して前に出て来ざるを得ない。彼らのリズムで普段どおりの戦いをされたら敵わないが、集中力をちょっとでも失い、バランスを崩してくれればチャンスがある。 そういう状態に持っていくためにも、試合序盤から積極的にプレッシャーをかけたいところだ。ただ、11月の欧州遠征で対戦したブラジルやベルギーがそうだったように、技術力が高い選手が揃っているチームは、いくら激しくプレッシャーをかけてもパスワークやポジショニングでかわすことができる。そして、いまの日本は先に点を取られるとその後の戦いが難しくなる。リードを奪った相手に守られてしまうと、自分たちから仕掛けてゴールを奪う攻撃力は備わっていない。これはコロンビア戦に限らず、その後の試合にも当てはまることだ。そうした展開にしないためにも、いずれの試合でも先制点がほしい。
不気味な存在のセネガル ポーランドも油断できない
シセ監督は選手時代にW杯を経験している。セネガルはしたたかに上位進出を狙っている photo/Getty Images
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日本がコロンビアの次に対戦するセネガルは、アフリカ予選を基本的には[4-3-3]で戦い抜いたが、[4-2-3-1]で戦った試合もあり、アリュー・シセ監督のもと複数のフォーメーションを使い分けている。もともとセネガルは組織力のあるチームで、02年日韓大会に出場したときも開幕戦で前回王者のフランスを考え抜かれた堅守速攻のサッカーで下し、その後も統率の取れた戦いを続けて初出場でベスト8まで勝ち進んでいる。
このときに主将を務めていたのがアリュー・シセ監督で、セネガルは2回目のW杯出場になるが、大舞台の雰囲気や戦い方を心得ている。代表のほとんどの選手が欧州でプレイしており、普段から高いレベルで戦ってもいる。また、アフリカ最終予選を4勝2分けの無敗で乗り切っており、勝負強さもある。とくに、カリドゥ・クリバリ、カラ・エムポジ、シェイク・クヤテなどで構成された守備組織はまとまっていて、6試合で3失点しかしていない。まずは、守備が堅いチームだと認識しておきたい。守備の要ストーンズこれをカバーする手前線のタレントも豊富で、サディオ・マネ、ケイタ・バルデ・ディアオ、イスマイラ・サール、ムサ・ソウはいずれも身体能力が高く、個人の力で状況を打開することができる。プレッシャーをかけてこないからといってゆっくりボールをキープし、主導権を握った気でいると危ない。 守備の時間が長くなり、自陣に押し込まれていてもそれはセネガルにとって決してピンチではない。カウンターからしたたかに、鋭くゴールを狙っているので注意が必要だ。
欧州予選で16得点したレヴァンドフスキ。今大会の得点王候補に挙げられる photo/Getty Images
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日本がグループリーグで最後に対戦するポーランドには、ロベルト・レヴァンドフスキという絶対的なエースがいる。日本がもっとも苦手とする高さ、強さがあり、足元の技術力も高いストライカーで、空中戦、地上戦ともに競り勝てる日本人選手はいない。つまりは、彼にボールが到達する前に防ぐ必 要があり、中盤、前線で厳しくプレッシャーをかけなければならない。
しかし、ポーランドの中盤もまた、そうしたプレッシャーをかわして前方へボールを運ぶ技量を備えている。しかも、日本にとってはやっかいな力強さ、スピードで勝負する選手が多く、とくに両サイドのヤクブ・ブワシュチコフスキ、カミル・グロシツキは突破力があり、彼らのアシストからロベルト・レヴァンドフスキがゴールを決めるのがポーランドの得点パターンになる。
このポーランド戦は、コロンビアやセネガルとの戦い以上に日本が主導権を握れる可能性が存在するが、いまの日本はそういう戦いを指向していない。本大会までの約6か月で新たなオプションとしてポゼッションからの攻撃のカタチを再整備できたなら、ポーランドからはもちろん、3戦とも勝点を取れるかもしれない。逆に、現状の攻守両面でバリエーションに乏しく、素早く縦に突っ込むことを繰り返すだけのサッカーだと、力負けして跳ね返されるのが目にみえている。まだ時間は残されているが、ロシアW杯での日本は、厳しい戦いを強いられそうだ。
以上のことから判断すると、グループHを突破する有力候補はコロンビアで、初戦のポーランド×セネガルで勝ったほうがこれに続くか。日本にチャンスがあるとしたら、初戦で勝点を取れたときだ。引分けによる勝点1でもいい。これが達成できれば、2戦目、3戦目に望みをつなぐことができる。
文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。
theWORLD193号 2017年12月23日配信の記事より転載