本田、香川、岡崎、武藤、柴崎大暴れ! ハリルホジッチは欧州遠征”不参加組”をどう組み込む?

日本代表を率いるハリルホジッチ監督 photo/Getty Images

続きを見る

日本代表で起こる危険な現象

日本代表を指揮するヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、今年の3月にはロシアワールドカップに臨むメンバーをある程度固めたいとの方針を明かしていた。その時まで残り2か月となったが、ここへきて状況は大きく変わりつつある。パチューカMF本田圭佑、ドルトムントMF香川真司、レスター・シティFW岡崎慎司、マインツFW武藤嘉紀、ヘタフェMF柴崎岳と、昨年11月の欧州遠征には招集されていなかった海外組が好調を維持しているからだ。本田はパチューカで攻撃の中心となっており、ここ最近は出場するたびにゴールに絡む活躍を見せている。香川もペーター・シュテーガー体制の柱であり、前半戦の終わりから非常に良い状態をキープしている。岡崎は今季開幕直後から得点を量産しており、レスター加入以降では最高のペースでネットを揺らしている。マインツの武藤も今季ブンデスリーガで6得点を記録しており、柴崎もヘタフェで高いテクニックを見せつけている。今の状況を考えると、彼らをW杯メンバーから外す案はサポーターが納得しないだろう。

一方で、昨年8月のアジア最終予選・オーストラリア代表戦で日本をW杯出場に導いた選手たちが所属クラブで苦戦している。20日に行われたブンデスリーガ第19節のマインツとシュツットガルトの試合では、武藤が2ゴールと結果を出したのに対してシュツットガルトFW浅野拓磨には出番がなかった。浅野といえばオーストラリア戦で貴重な先制点を決め、ハリルホジッチ監督からも信頼されているスピードスターだ。しかし所属クラブでポジションを確保できていない状況で、昨季からプレイタイムが減少傾向にあるのは気がかりだ。これはヘルタ・ベルリンで居場所を失っているFW原口元気も同じだ。またケルンFW大迫勇也、サウサンプトンDF吉田麻也のように所属クラブが残留争いに巻き込まれているところもあり、満足なパフォーマンスができていない選手がいることも問題だ。浅野と同じくオーストラリア戦で得点を決めて一気にブレイクしたMF井手口陽介は今冬にリーズ・ユナイテッド移籍を選択し、今後はレンタル先のクルトゥラル・レオネサでプレイすることになる。これもギャンブル的要素が強く、ここで言語や環境に適応できずにコンディションを落とせばハリルジャパンにも大きな影響を与えることになる。オーストラリア戦以降固まりつつあったメンバーに思わぬ変化が生じ、欧州遠征に参加しなかった香川や本田らが状態を上げてきている現状をハリルホジッチ監督がどう見ているのかは非常に気になるポイントだ。

メンバーを絞るのが難しくなるのはもちろん、武藤や柴崎のように怪我などもあって代表戦で満足にテストできなかった選手たちをどうチームに組み込んでいくのかも問題だ。本田、香川、岡崎、武藤、柴崎の5人をW杯メンバーに選ぶと仮定するなら、彼らをどう起用すればいいのか。本田の場合は右サイドでヘントFW久保裕也、シュツットガルトの浅野とポジションを争うことになるはずで、現在のコンディションを考えると本田がポジションを奪い返しても不思議はない。ここは3月の代表戦で十分にテストできるだろう。しかし、他の選手は難しい。
香川と柴崎は[4-3-3]のインサイドハーフを担当できるが、ここで2人を同時起用するのはあまりに攻撃的だ。オーストラリア戦や欧州遠征では井手口、山口蛍、長谷部誠と守備に走れる3枚を選択しており、あのスタイルはあまり香川や柴崎に向いているとは言えない。ハリルホジッチ監督が絶賛した浦和レッズMF長澤和輝もこのポジションの候補者で、かなりの激戦区だ。起用する選手によって特長が大きく変わってくるため、ただクラブで好調な選手を呼べばいいという問題ではない。武藤、岡崎の場合は起用するポジションもはっきりと定まっていない。武藤はクラブで最前線を務めるケースが多いが、現在の日本代表では大迫が重要な役割を担っている。恐らくハリルホジッチ監督も大迫を代表の柱の1人と考えているだろう。欧州遠征や12月のEAFF E-1選手権(東アジア杯)でもセレッソ大阪FW杉本健勇やジュビロ磐田FW川又堅碁のようにサイズのある選手を招集し、大迫と同じく前線でボールを収められる選手を求めているように感じられた。岡崎は全くタイプが異なる選手で、前線で強引にボールをキープするやり方は得意としていないことがアジアの予選で分かっている。武藤は体が強いが、前を向いてスピードに乗った時に強みを発揮する選手だ。今の日本代表ではウイングの位置からセンターフォワードの選手を追い越すような役割を担う方が特性を発揮できるだろう。これらのことをW杯本番までの代表戦で十分にテストできるのかは疑問が残る。

ハリルホジッチ監督が3月のテストマッチを見たうえで30人程度のメンバーを決めたとしても、戦い方まで定まっているとは限らない。仮にオーストラリア戦以降の戦い方をベースとするなら、香川や柴崎、岡崎といった面々の能力を100%引き出すのは難しいだろう。少なくとも今回挙げた好調組の5名をスタメンで同時起用するのは現実的ではない。対戦相手との力量などを考えると、守備を意識した布陣で臨むのが妥当だろう。そうなれば10番を背負う香川であってもベンチスタートを受け入れる必要があるかもしれない。かといって彼らが途中出場から流れを変えられるかと問われると、こちらも難しい。彼らの能力は確かだが、これまでのハリルジャパンにおいて彼らをジョーカー的役割でテストしたケー スはあまり多くない。彼らを投入すると同時にゲームプランに変化を加え、得点を奪いに行く態勢を取れるのであれば問題ないが、欧州遠征や1-4と大敗した12月の韓国代表戦でもハリルホジッチ監督が試合途中から大幅にゲームプランを変えることはなかった。香川や岡崎らだけではなく、他の選手たちがスムーズに攻撃的なプランに切り替えられるのかは不透明だ。そうしたことを3月からのテストマッチでどこまで試せるかが大きなポイントとなる。

オーストラリア戦、欧州遠征を経験している選手たちが所属クラブで苦戦し、参加しなかった本田や香川らが大活躍している現象はチームを混乱させる危険性がある。W杯直前で好調を維持している選手だけを呼ぶオールスターのような戦い方でグループステージ突破を狙えるほどW杯は甘いコンペティションではない。これまでアジアの予選を通して積み重ねてきたものを発揮する必要があり、現在の状況はそのベースを破壊してしまいかねない。ハリルホジッチ監督は欧州遠征に参加しなかった選手たちをどうチームに組み込んでいく考えなのか。残された時間は多くない。

記事一覧(新着順)

電子マガジン「ザ・ワールド」No.299 フリック・バルサ徹底分析

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:コラム

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ