ついにコウチーニョ放出もリヴァプールは好調を維持
コウチーニョ(背番号10)を放出したが、リヴァプールは好調を維持している photo/Getty Images
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監督就任3年目を迎えたユルゲン・クロップのもと、リヴァプールはCL、プレミアリーグで完成度の高いサッカーを披露している。CLグループリーグではセビージャ、S・モスクワ、マリボルと同組となり、3勝3分けの無敗で首位通過。圧巻だったのは攻撃力で、6試合で23得点してみせた。これは25得点したPSGに続く数字で、ポテンシャルの高さを力強く示したといえる。
プレミアリーグでも好調で、最後に負けたのは第9節トッテナム戦であり、第23節を終えた現時点で14試合連続で負けていない。この間、10勝4分けと引分けが多かったわけでもなく、順調に勝点を積み重ねている。第23節では無類の強さを誇っていた首位マンチェスターCをホームに迎えて、点の取り合いを制して4-3で競り勝っている。現在のリヴァプールはモチベーターであり、選手の能力を引き出す能力に長けたクロップのもと、各選手が気持ちよくプレイできている。
これまでどんなに高額オファーがあっても手放さなかったフィリペ・コウチーニョをついにバルサに放出した背景には、「もう大丈夫」という確信があったのだろう。
クロップは選手の能力を最大限に引き出し、チームに昇華してみせる photo/Getty Images
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実際、モハメド・サラーがプレミアリーグ18得点、CL5得点。ロベルト・フィルミーノがプレミアリーグ10得点、CL6得点。さらに、サディオ・マネもプレミアリーグ6得点、CL3得点と、前線の選手たちがゴールを量産している。もちろん、プレミアリーグ7得点、CL5得点だったコウチーニョの流出は痛いが、クロップのチーム作りは“個”に頼るものではなく、各選手が連動することでゴールが生み出される。コウチーニョが去ったあともプレミアリーグで勝利を積み重ねており、致命的なチーム力の低下は招いていない。
来るべきラウンド16のポルト戦では、エムレ・チャンが累積警告のため第1戦に出場停止となる。グループリーグ6試合に出場した左SBのアルベルト・モレノも昨年12月に大腿骨を骨折しており、欠場となる。コウチーニョの放出と合わせて、本来これらはマイナス材料と考えられる。しかし、リヴァプールにはダメージを受けている様子がなく、迎えるポルト戦も涼しい顔で乗り切ってしまうかもしれない。
なにしろ、かつてドルトムントを率いて決勝進出を果たした経験を持つクロップは、CLを勝ち上がる方法を知っている。アウェイでの第1戦にはエムレ・チャンがいないが、選手、システムともに選択肢は豊富だ。[4-3-3]か[4-4-2]が予想され、ジョーダン・ヘンダーソン、アレックス・オックスレイド・チェンバレン、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ジェイムズ・ミルナーのなかから最適な選手が選択されピッチに立つことになる。
ポルトには厳しい一戦になる 中島を獲得する可能性も!?
ポルトの前線には身体能力が高く、「個」の力があるアブバカルがいる photo/Getty Images
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一方、ポルトは第1戦のホームゲームでなんとしてもアドバンテージがほしい。今シーズンのリヴァプールはプレミアリーグ、CLともにホームのアンフィールドで敗戦がなく、第2戦で勝利するのは難しいと理解しておきたい。つまり、第2戦の敵地では引分けでOKという状況を作れるかどうかが、ポルトにとっては8強入りに向けた鍵になる。
とはいえ、現実は厳しいと言わざるを得ない。ここ数年のポルトは勝負強さがなく、国内のタイトルを含めて4年間無冠となっている。現在は今シーズンから指揮を執るセルジオ・コンセイソンのもと組織を構築中で、完成度の面でもリヴァプールに劣っている。
CLグループリーグでも序盤3試合に1勝2敗とスロースタートとなり、早期敗退の可能性さえあった。そうしたなか、いずれもレンタルバックで復帰したヴァンサン・アブバカル、ムサ・マレガなどを前線に起用したシステムが徐々に機能し、第4節ライプツィヒとのホームゲームに3-1で競り勝つと、続く第5節ベシクタシュとのアウェイゲームにも1-1で引分けて勝点の積み上げに成功。最終戦はグループリーグ突破の可能性を失っているモナコとのホームゲームで、5-2で快勝して2位に滑り込み、ラウンド16に進出している。
マレガも1人で得点できるタイプ。ポルトは第1戦で勝利したい photo/Getty Images
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選手層の厚さ、チームの総合力ではどうしてもリヴァプールが上だ。ポルトが勝ち上がるシナリオとしては、ホームの第1戦に僅差で勝利し、アウェイでの第2戦を引分けで終えるという感じになる。そのためにはイバン・マルカノ、フェリペのCBコンビを中心に、守備的MFのエクトル・エレーラ、ダニーロ・ペレイラが中央のスペースを埋め、リカルド・ペレイラ、アレックス・テレスの両SBも守備の意識を高く持ってプレイし、フィルミーノ、サラー、マネといったリヴァプールが誇る攻撃陣に仕事をさせない必要がある。
あとは、おそらく少ないだろう得点チャンスをアブバカル、マレガといった前線の選手が確実にモノにすることだ。両名ともにポルトガルリーグで14得点(第18節終了時点)しており、決定力に関しては問題ない。守備陣が踏ん張り、1点を奪って競り勝つ──。こうして考えるだけなら簡単だが、実際はリヴァプールとの間には埋めがたい実力差が存在する。やはり、ポルトは苦戦するだろう。
ひとつ気になる情報として、現地メディアによればポルトは中島翔哉(ポルティモネンセ)の獲得を狙っているという。これが実現し、中島がCLのピッチに立てれば貴重な経験が積める。ポルトを経由して、さらなるビッグクラブへという流れも十分に考えられる。リヴァプール戦に向けて、冬の移籍市場が締まるまでにポルトがどんな動きをみせるか注目が必要だ。
文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。
theWORLD194号 2018年1月23日配信の記事より転載