開幕前に苦戦するJ王者 “川崎スタイル”を貫くためには「幅」を使え

キックオフ前に円陣を組む川崎の選手たち photo/Getty Images

間違いなく警戒される川崎のパスサッカー

昨季、悲願であったJリーグ制覇を成し遂げ、クラブ史上初のタイトルを獲得した川崎フロンターレだが、2018シーズンは苦しい船出となっている。

今季初タイトルがかかったフジゼロックス・スーパーカップでは、因縁の相手セレッソ大阪に2-3で敗れ、昨季のYBCルヴァンカップに続いて辛酸を嘗めさせられた川崎。Jリーグ王者として臨んでいるAFCチャンピオンズリーグでも、上海上港に0-1、蔚山現代に1-2で惜敗し、公式戦3連敗スタートを切ることとなった。

Jリーグ開幕前に多くの課題が浮き彫りとなっている川崎だが、監督や選手たちが口を揃えて言うのがやはり「守備面」での課題だ。蔚山現代戦後のインタビューで、川崎のキャプテンを務めるFW小林悠は「チームとしては、やはりまず先制点を奪われないこと。誰がとかではなく、チームで前半をまずゼロで抑えないといけない。僕たちのスタイルからすると。チームとして耐えるところは耐えないと、自分たちで苦しい展開にしている」と口にした。クラブの公式サイトが伝えている。

一方で、「攻撃面」での課題を明かしたのがMF大島僚太やFW大久保嘉人。蔚山現代戦後に、前者は「真ん中からいけるところまでいくというのはチームとしてやってきたこと。ただ(パスが)入った先、入れるパスで引っかかってしまうと相手にカウンターを狙われる。攻める場所をはっきりさせなければいけない」と。後者は「前に人がいないのが気になる。引いてボールを受けるのは簡単にできるが、自分まで下がるとユウ(小林悠)が1人なってしまうので、ボールを持ったときにどうしても前に相手ディフェンスがたくさんいることになる。ゴール前で誰かが抜け出してDFを引きつけてくれると、シュートを打てたりするが……」と話している。

川崎の特徴は何と言っても、風間八宏前監督時代に築き上げた見る者を魅了する美しいパスサッカー。どんなに狭いところでも素早いパスや針の糸を通すようなパスで相手を崩し、ゴールを量産してきた。ただ、プロ選手といってもサッカーにミスはつきもの。DFとMFの間でボールを奪われて失点するシーンなどが見られ、これまではなかなかタイトルを手にすることができなかった。

だが、昨季はそこに鬼木達監督が守備の規律をもたらし、パスを回す場面と前線にロングボールを入れる場面を使い分けた。その結果、リーグ最多得点数と3番目に少ない失点数で、悲願のタイトルを手にしたのだ。前線で体を張り、ロングボールを収めることができた小林の存在も大きい。ショートパスとロングボールの使い分けがうまくハマり、結果的に同選手は得点王を獲得できたのかもしれない。

敵地で奮闘する大久保。試合後に攻撃面での課題を明かした photo/Getty Images

しかし、今季はまだわずか3試合を行なったのみだが、大島が言うようにしばしば高い位置でボールを奪われるシーンが見られる。大久保は「川崎にとって距離感が大事」と述べた上で「フロンターレのリズムを崩さないよう、ボールが入ったときにワンタッチでやろうとすると、距離が遠すぎて引っかかってしまうことがあった」と明かした。

つなぐことが厳しそうであれば、前線へロングボールを入れ、小林が裏へ抜け出すか、彼を壁にして攻撃を展開。それらを相手が警戒することで、相手選手たちが縦に広がり、中盤にスペースができる。そして十八番のパスサッカーで相手を攻略。この川崎のサッカーは昨季すでに披露しており、小林が得点王を取ったことで間違いなくほかのチームにも警戒される。蔚山現代戦後に鬼木監督が「相手チームは我々のサッカーを研究した中で戦ってきている」といったように、研究されたからこその公式戦3連敗なのかもしれない。

では単純に選手同士の距離をもっと縮めれば良いのかといえばそうでもない。選手たちの距離が縮まれば、マークしてくる相手選手たちの距離も縮まる。つまり、ボールを持った選手の周りに人が密集し、パスを回すスペースもなくなってしまうことで、川崎の良さも無くなってしまうのだ。

そこで今季、川崎の攻撃において重要となってきそうなのが「幅の使い方」だ。縦がダメなら横で。昨季も目に見える結果を残したMF家長昭博やMF阿部浩之に加え、横浜F・マリノスから強力なウィンガー齋藤学が加入。MF中村憲剛や大島といった中盤の要が今まで以上に彼らをうまく使い、チームとしてもっと幅を使うことができるようになれば、さらなる“川崎スタイル”が見られるかもしれない。そして攻撃時の課題が改善されることで、守備の負担も軽減。結果的に失点が減り、守備面の課題の改善につながりそうだ。


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