リヴァプールの戦術との相性もピカイチ
今季のプレミアリーグで24得点(第29節終了時点)を挙げているサラー photo/Getty Images
水沼貴史です。今回は僕が特に注目しているFWモハメド・サラー(エジプト代表)についてお話ししたいと思います。フィオレンティーナやローマにいる時から印象的なゴールが多く、僕自身彼のプレイを見るのが大好きなのですが、彼がなぜ今季のプレミアリーグでキャリアハイの得点(第29節終了時点で24得点)を挙げているのか。その理由に迫りましょう。
彼の最大の武器は、何といっても天性のスピードやスプリント力です。そのうえフリーランニングのコース取りが非常にうまい。常に相手最終ラインの背後を狙っていますし、仮にそこのスペースを消されても相手の陣形の欠陥を見抜き、瞬時に動き直せる。これが彼の主な特長です。
今季開幕前にリヴァプールに加入したサラーですが、ユルゲン・クロップ監督が志向する縦に速いカウンター攻撃が、彼の持ち味を最大限に引き出していると言えるでしょう。ボールを奪ったら直線的にゴールを目指す(中盤で余分なパスを回さない)という原則が徹底されているので、「ボールを奪った選手が即座にサラーを見る」→「スピードに乗ったサラーが相手DFを置き去りにする」→「サラーの得点」という必殺パターンが生まれています。
「カウンターで仕留めきれなかったらどうするのか」という疑問が湧くと思いますが、実はそこにもサラーの凄さが垣間見えます。相手DFの体の向き(重心)やステップを観察しながら自分もステップを踏みかえ、抜き去る。このプレイをトップスピードに乗った状況だけでなく、密集地帯にいる時や自分が立ち止まっている時にもできるので、遅攻を強いられてもゲームから消えないのです。ボールタッチもかなり細かいので、相手DFとしては足を出すタイミングが掴みにくく、厄介ですね。ペナルティエリア内で不用意に飛び込もうものならPK献上です。
大柄でフィジカルコンタクトに優れたDFが、彼のようなプレイヤーに何度もかわされてしまうケースはサッカーにおいて珍しくないので、そんなDFが多く在籍するプレミアリーグで彼が得点を量産しているのは、ある意味必然と言えるでしょう。快足だけでなく、1対1の局面での落ち着きも兼ね備えている部分はリオネル・メッシ(現バルセロナ)に通ずるものがあります。
策士モウリーニョは“エジプトのメッシ”をどう止めるのか
マンUの左SBに定着しているヤング photo/Getty Images
さて、10日にはプレミアリーグの第30節が予定されており、サラー擁するリヴァプールがマンチェスター・ユナイテッドと対戦します。マンチェスター・ユナイテッドを率いるジョゼ・モウリーニョ監督が彼をどう止めるのか。想定される試合展開をお話ししましょう。
まず彼を抑え込むにあたり、最終ラインを低めに設定するでしょう。先ほどご説明した通り、自陣のスペースを消しても彼をゲームから完全に排除することは難しいのですが、まずは彼がスピードに乗れる状況を作らないことが重要です。
また、モウリーニョ監督が(最終ラインと中盤の2ラインによる)通常のゾーンディフェンスを敷くのか、それともサラーにマンマークを付けるのか、その点も興味深いですね。マンマークを付けるとしたら同じサイドで対峙するアシュリー・ヤングだと思いますが、彼ひとりの力でサラーを抑え込むのは至難の業です。モウリーニョ監督の左サイドバックの人選は勿論のこと、サイドバック、サイドハーフ(アレクシス・サンチェス)、中盤の選手(ネマニャ・マティッチやスコット・マクトミネイなど)が連係してサラーを挟み込めるか。この試合をご覧の皆さんには、マンチェスター・ユナイテッドの守備隊形に注目してほしいです。
ではでは、また来週お会いしましょう!
※プレミアリーグ第30節、マンチェスター・ユナイテッド対リヴァプールの一戦は10日(日本時間)の21時30分にキックオフ!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
参照元:youtube