[ロシアW杯#07]運命を分けたペルーのPK失敗 潮目の変化を逃さなかったデンマーク

飛ばしすぎたペルーと無失点で耐えたデンマーク

決勝ゴールを挙げたポウルセン。喜びのあまりゴール後に吠えた! photo/Getty Images

W杯の舞台から遠ざかった36年という空白の期間を埋めるように、立ち上がりからペルーが飛ばす。コンパクトな陣形でプレスの罠に誘い込み、ボールを奪えばスピーディーに仕掛けるアタックで、デンマークを自陣に押し込めたのだ。

特に目立ったのが、トップ下の位置から攻撃を操った“小さなテクニシャン”クエバと、右サイドから果敢に仕掛けた金髪のドリブラー、カリージョだ。彼らを中心にショートパスをつなぎつつ、ときに大胆なサイドチェンジや思い切りのいいミドルシュートも織り交ぜるなど、実にのびやかなペルーが試合の主導権を掌握する。

一方のデンマークは、高さのあるN・ヨルゲンセンとポウルセンをターゲットにロングボールを蹴り込むばかりで、なかなか攻撃の形を作れない。頼みの司令塔エリクセンも、ジョトゥンとタピアの相手ダブルボランチから激しいチェックを受け、ずるずるとポジションを下げてしまう。さらに36分には、センターハーフの一角を担っていたクヴィストが負傷退場。嫌なムードが立ち込めた。

優位に試合を進めるペルーに、千載一遇のチャンスが訪れたのは前半終了間際だった。周囲とリズミカルに連動しながらエリア内に進入したクエバが、守備に戻ったポウルセンに倒され、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による判定の結果、PKを得たのだ。これを決めていれば、おそらくペルーが大きく勝利に近づいただろう。だが、クエバが自ら放ったシュートは、クロスバーのはるか上を越えていった。

先制を逃したペルーは、後半に入ると目に見えてペースダウンする。精神的なショックが原因ではないだろう。前半に飛ばし過ぎたせいで疲労からプレスが弱まり、とりわけデンマークの切り込み隊長、シストのドリブルに悩まされることになる。そして、ようやく流れを掴んだデンマークが、その勢いのまま一気に均衡を破るのだ。

59分、中盤と最終ラインの間にぽっかりと空いたスペースをフリーで持ち上がったエリクセンが、ポウルセンにスルーパス。RBライプツィヒで売り出し中のアタッカーは、これを左足で冷静に流し込んだ。

大エースの投入で終盤にペルーが猛攻を仕掛けるも……

何度かチャンスが巡ってくるも、ゴールネットは揺らせず。悔しさをあらわにするゲレーロ photo/Getty Images

ただ、この失点でペルーの選手たちの心が折れることはなかった。むしろ、63分にゲレーロが大歓声とともにピッチに投入されると、チームの士気は大いに高まった。ドーピング違反による出場停止処分が一時凍結され、初めてW杯の大舞台に立ったペルーの大エースは、投入から1分後に惜しいヘディングシュートを放ってスタジアムを沸かせると、その後も最前線で起点となって両サイドからのアタックを巧みに引き出す。

68分、トラウコの左からのクロスをロドリゲスが折り返し、ファルファンが飛び込む。79分、クエバのラストパスをゲレーロが華麗なヒールで狙う。だが、いずれもゴールには至らず、84分には右サイドを鋭く切り裂いたカリージョのマイナスのクロスをファルファンが合わせたが、これもGKシュマイケルのビッグセーブに阻まれた。

結局、試合はこのまま終了。良いサッカーをしたのはペルーの方だろう。だが、唸るような強さこそなかったものの、CBケアを中心とした堅守を支えに、潮目の変化を逃さなかったデンマークの試合巧者ぶりが、それ以上に際立つ一戦だった。

[スコア]
ペルー代表 0-1 デンマーク代表

[得点者]
デンマーク代表: ポウルセン(59)

文/遠藤 孝輔

theWORLD201号 2018年6月17日配信の記事より転載

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