[ロシアW杯#09]指揮官の人選が奏功! セルビアがコラロフの“超絶FK弾”を守り切る

コスタリカが攻勢を強めるも...... セルビアが冷静に対応

コスタリカが攻勢を強めるも...... セルビアが冷静に対応

名GKナバスも及ばず photo/Getty Images

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ショートコーナーでセルビア守備陣の視線を一旦ずらし、大外からゴンサレスがフリーでヘディング。コスタリカの出だしは悪くなかった。また、ウレーニャに当てるフィードはシンプルだが、人の集散がよく、素早いボール回収のためには有効な手段だった。ただ、この基本戦術にセルビアが慣れてくると攻め手を失った。代替案を用意していなかったのだろうか。しかもキャプテンであり、大エースでもあるB・ルイスが完全に沈黙。右サイドでも左サイドでもまったく仕掛けず、そもそもボールに触れる回数が少なすぎる。大きなミスこそなかったものの、そのパフォーマンスは終始ネガティブだった。
 
さて、グループEはブラジルが同居しているため、優勝候補の最右翼といつ闘うのかが決勝トーナメント進出の大きなカギを握る。セルビアは対戦順に恵まれ、ブラジルとは3戦目に激突する。要するに妙な星勘定はせず、初戦のコスタリカ、2戦目のスイスに連勝してグループリーグ突破を決め、楽な気分でブラジル戦を迎えるのがベストだ。初戦でブラジルと闘うスイス、2戦目で相まみえるコスタリカと比べると、グループリーグ全体のマネジメントは整えやすい。こうしたスケジュールも関係したからこそ、セルビアは比較的リラックスして闘えたのではないだろうか。

重要な初戦で光ったクルスタイッチ監督の用兵術 

重要な初戦で光ったクルスタイッチ監督の用兵術 

マティッチ(21番)は対人守備で強さを見せた photo/Getty Images

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コスタリカの戦術に慣れてきた後は、ほぼイニシアチブを握っていた。時おりピンチを迎えたものの、マティッチに加え、中盤センターにバランサーのミリボイェビッチを配置したクルスタイッチ監督の用兵もズバリ的中。最終ラインが慌てふためくようなシーンは数えるほどだった。戦術オプションとしてリャイッチ、ミリンコビッチ・サビッチ、マティッチの中盤3センターも有しているが、この3選手ではボールロスト時の対応に不安がある。なぜならマティッチを除く2名は、攻撃意識が勝ち過ぎているからだ。大事な初戦でリスクは冒せない。選手の個性を見抜いたクルスタイッチ監督の人選も、勝因のひとつである。
 
そして、やはり、コラロフはコラロフだった。56分、25メートルほどの直接FKは、コスタリカの名GKナバスでさえ対応できない見事な一撃だった。壁が割れたとはいえ、コラロフの左足から放たれたボールは角度、スピード、コースともにほぼパーフェクト。レフティモンスター健在である。

ところで、再検証すべきシーンがふたつある。後半の追加タイムに起きた小競り合いの際に、コスタリカのコリンドレスがミリボイェビッチの頬を平手で張った。セルビアのプリヨビッチはドルブルで進みながら意図的に右手を振りまわし、追走するアコスタの顔面にバックハンドブローを見舞った。前者はレフェリーが仲裁で収束し、後者はVAR判定の結果、プリヨビッチにイエローカードが提示されている。FIFAがフェアプレイを謳うのなら、より詳細にチェックしなくてはならない。コリンドレスの平手打ちも、明らかに意図的だ。

[スコア]
コスタリカ代表 0-1 セルビア代表

[得点者]
セルビア代表:コラロフ(56)


文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD202号 2018年6月18日配信の記事より転載

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