[ロシアW杯#10]歴史的アップセット! メキシコ、超絶カウンターで’85年以来のドイツ撃破!

シュートが乱れ飛ぶアグレッシブな試合展開

シュートが乱れ飛ぶアグレッシブな試合展開

ロサーノの一撃がメキシコサポーターに歓喜をもたらした photo/Getty Images

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最終スコアは1-0だが、両チームに多くのチャンスがあり、数多くのシュートが乱れ飛ぶ見どころの多い試合となった。終わってみれば、ドイツが25本、メキシコが12本のシュートを放っている。ゴールを感じさせるプレイが多かった一戦は、ルジニキスタジアムを埋めた約7万8千人の観衆を十分に満足させた。

とくに、メキシコサポーターはキックオフ前から会場を盛り上げ、ホームの雰囲気を作り出していた。大歓声に後押しされたメキシコは立ち上がりから動きが良く、開始1分に左サイドのロサーノが相手DFの裏に抜け出し、ゴールにならなかったもののファーストシュートを放った。その後はドイツにボール支配を許したが、それは想定内のこと。ボアテング、フンメルス、ケディラ、クロースなど後方の選手が低いポジションでボールをさわるぶんには自由にさせ、4バック+2人の守備的MFが抜群の連携でバイタルエリア付近のスペースを完全に埋めていた。

ただ、どうしても両サイドにスペースができてしまっていたが、中盤のロサーノとラジュンがときに低いポジションを取ることで対処していた。逆に、ドイツの両SBであるキミッヒやプラッテンハルト、さらにはフンメルス&ボアテングの両CBに攻撃参加をさせ、守備が手薄になったところに効果的なカウンターを仕掛けていた。
良い流れで戦っていた35分、メキシコが決勝点となった1点を奪った。自陣でボールを奪うと素早くタテに運び、エルナンデスが抜け出してゴールに迫る。この時点でメキシコ・サポーターは腰を浮かし、すでに“準備”していた。エルナンデスからの丁寧なパスを受けたロサーノが冷静な切り返しから右足シュートでゴールネットを揺らすと、大歓声とともにスタジアムが揺れた。そして、歓喜するメキシコサポーターによるビールのシャワーが記者席にも浴びせられた……。

全身全霊の守りで1点を守りきったメキシコ

全身全霊の守りで1点を守りきったメキシコ

ドイツの心臓クロースは試合後「問題を解決できなかった」と吐露 photo/Getty Images

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その後もメキシコの守備は乱れず、とくにペナルティエリアのなかでは自由にシュートをさせなかった。たとえフィニッシュされてもそこには緑の戦闘服をまとった勇者たちが密集しており、ボールがすり抜ける隙間はなかった。実際、77分にはドラクスラーにペナルティエリア内で左足シュートを許したが、飛び込んだDFが身体に当てて難を逃れている。

全身全霊を込めたその守りは、前回王者のシュート感覚も狂わせた。76分、84分にはミドルシュートの使い手であるクロースにフリーでフィニッシュされた。しかし、1本目はゴール枠外へ、2本目はGKオチョアがキャッチし、無事にピンチを回避。さらに、87分には途中出場したマリオ・ゴメスにゴール前でヘディングされるピンチを迎えたが、目測を誤った相手にすくわれた。

両国は昨年のコンフェデ杯準決勝で対戦し、ドイツが4-1で快勝していた。メキシコにとっては倍返し、いや3倍返しぐらいの価値がある勝利となった。グループ内の最難関ドイツを倒して勝点3を得たことで、ラウンド16への特急券を手にしたといえる。

[スコア]
ドイツ代表 0-1 メキシコ代表

[得点者]
メキシコ代表:ロサーノ(35)


文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より6大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD202号 2018年6月18日配信の記事より転載

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