[ロシアW杯#32]負ければGL敗退が決まるデスマッチ これがコロンビアの“真の強さ”か

右WGクアドラードが試合の流れを引き寄せる

今大会初ゴールを記録し、コロンビアに勝利を手繰り寄せたファルカオ。スコアラーとしての役目を果たした photo/Getty Images

両軍ともに初戦を落としているグループHの“本命”同士の一戦は、負けた方がグループリーグ敗退となるデスマッチとしてキックオフ。どちらも喉から手が出るほど欲しい勝ち点3を求めて、スタートから敵陣に踏み込んでいく。

ただ、互角の勝負が繰り広げられたのは前半途中まで。20分を過ぎたあたりから、コロンビアが攻守の両局面で優位に立つ。敵の最終ラインにしっかりプレッシャーをかけ、パスコースを限定。ポーランドがさほど得意ではないビルドアップを妨害し、レヴァンドフスキにボールを送らせない。マイボールになれば、テンポの良いパスワークで局面を打開。最後の30メートルでは右ウイングのクアドラードによるドリブル突破をフル活用し、チャンスを作っていく。

そのクアドラードが36分、敵陣の深い位置で魅せる。独特のリズムを刻むドリブルで二人を置き去りにし、ゴール前まで侵入。折返しのパスをGKシュチェスニーに阻まれたが、この快足ドリブラーの再三に渡る仕掛けは、チームに流れを引き寄せる要因となった。

そして、40分だった。やはりクアドラードを起点に、キンテーロを経由して相手ボックス内に入り込んだハメスにボールが渡る。このパスを受けた背番号10が、ダイレクトでフワリとしたパスをゴール前へ。それに反応したミナが打点の高いヘディングで、コロンビアに先制点をもたらしたのだ。
 

歯車が噛み合ったコロンビア 采配が裏目に出たポーランド

コロンビアのGL突破の希望はつながった。試合後にハメスも思わずガッツポーズ photo/Getty Images

ビルドアップが上手くいかない攻撃も、左サイドを何度となく突破された守備も。攻守が機能しないポーランドは後半、前線からのプレスの強度を高めて、試合の流れを掴もうとする。しかし、コロンビアの選手たちは涼しい顔。持ち前のボールテクニックとパスで相手の寄せをいなし、攻めては51分にファルカオがフィニッシュに持ち込むなど、有効打を放っていく。

開始3分の退場で10人での戦いを強いられ、黒星を喫した日本戦のショックを感じさせず、むしろ11人でのサッカーを心から楽しむように好プレイを連発するコロンビア。それを象徴する存在だったのが、前半からノールックパスなど妙技を連発していたキンテーロで、この魅惑のレフティが70分に違いを作り出す。オフサイドラインぎりぎりでフリーになったファルカオに絶妙なラストパスを通し、待望の追加点を演出したのだ。

この時点で勝負の趨勢は決した感があったが、75分にはダメ押しゴールを挙げる。ハメスの糸を引くようなスルーパスを受けたクアドラードが敵陣を独走。GKとの1対1を冷静に制し、コロンビアの今大会初勝利を決定づけた。

MVP級の働きを見せたこのアタッカーとともに称賛すべきは、コロンビアの守備だ。レヴァンドフスキにボールが入った場合は即座に複数人で囲い込む。その他の相手アタッカーには、1対1のデュエルで対応。その大半で勝ち切るなど、敵に付け入る隙を与えない堅守を90分間通して披露しつづけた。

攻守の歯車ががっちりと噛み合ったコロンビアとは対照的に、ポーランドは縦に速い攻撃やサイドアタックという持ち味をまるで発揮できなかった。初戦の黒星を受け、システムとスタメン4人を入れ替えたナヴァウカ監督の采配が裏目に出た印象は否めず、3戦目を待たずして敗退が決まった。

文/遠藤 孝輔

theWORLD209号 2018年6月25日配信の記事より転載

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