[ロシアW杯#33] エジプト、45歳GKが奮闘も…… サウジがAT弾で24年ぶりの勝利

エジプトが幸先よく先制も、2度目のPK献上が仇に

W杯の最年長出場記録を更新したエル・ハダリ。41分にはアル・モワラドのPKをストップ photo/Getty Images

1-1で迎えた後半アディショナルタイム。終始攻撃的に戦いながら決定力だけが足りなかったサウジアラビアがエジプトのゴールをこじ開け、 勝利を手繰り寄せた。彼らにとって、1994年アメリカ大会以来となる24年ぶりの勝点3だった。

先制点は堅守速攻を持ち味とするエジプトに生まれた。22分、ハーフウェイライン付近でアル・ドサリのパスミスを奪うと、ロングフィードからカウンターを仕掛ける。トップスピードでこれに反応したサラーは見事なコントロールで前を向き、飛び出したGKよりも一歩早く足を出してループシュートを決めた。今大会屈指の千両役者として開幕前から脚光を浴びていたサラーは、この試合でも異彩を放った。おそらくコンディションは万全ではなく、 リヴァプールで見られた輝きはない。それでも、パスを受ければスタジアムは盛り上がり、大歓声の後押しを受けてトップスピードに乗った。

もうひとりの主役は、今大会初めてピッチに立ったエジプトのGKエル・ハダリだ。約20年にわたってエジプト代表のゴールを守ってきた守護神は、この試合でW杯の最年長出場記録を更新。41分にはサウジアラビアにPKのチャンスが訪れたが、アル・モワラドのシュートは45歳161日の守護神の左手に弾かれ、ポストを直撃した。ちなみにエル・ ハダリはジネディーヌ・ジダンやルイス・フィーゴと同い年で、今大会に出場している32チームには彼より年下の監督が3人もいる。

エル・ハダリの見せ場となった41分のPKまでは、守勢に回っていたエジプトが“らしさ”を見せた展開だった。しかし、前半のアディショナルタイムにはまたしてもサウジアラビアにPKのチャンスが舞い込む。キッカーのアル・ファラジがゴール右隅に強烈なシュートを突き刺し、試合を振り出しに戻した。

サウジは決定力不足を露呈も 、アグレッシブな姿勢が結実

後半AT、右サイドからのクロスのこぼれ球にアル・ドサリが反応。決勝点を挙げた photo/Getty Images

迎えた後半も、前半と同様にサウジアラビアが攻勢に出た。54分には右サイドから決定機を作るが、バハビルのシュートは枠を大きく外れる。69分に迎えた決定機も、エジプトの守護神エル・ハダリのビッグセーブに阻まれる。サウジアラビアのシュート数はすでに11を数えたが、 やはり決定力が足りない。それでもアグレッシブな攻撃姿勢を貫いたサウジアラビアに決勝ゴールがもたらされた。アディショナルタイムも残りわずかとなった90+5分。右サイドの敵陣深くまで侵入したアル・ブレイクがクロスを入れ、オタイフの落としに反応したアル・ドサリがシュート。 ボールはポストを叩いてゴールラインを割った。

すでに敗退が決定していた両者の対戦には、第2戦までの緊張感や覇気はなかった。キックオフ時の気温は35度。過酷な条件下での戦いでもあった。それでも、サウジアラビアはW杯で24年ぶり、エジプトは史上初の勝利を目指し、その意気込みは両者の表情から強く感じられた。サウジアラビアはグループAの3位、エジプトは同4位という形で今大会を去るが、両者にとってこの3試合が特別な意味を持つことは間違いない。

[スコア]
サウジアラビア代表 2-1 エジプト代表

[得点者]
サウジアラビア代表:アル・ファラジ(45+6)、アル・ドサリ(90+5)

エジプト代表:サラー(22)


文/細江 克弥

『ワールドサッカーキング』『ワールドサッカーグラフィック』などの編集部を経て、2009年にフリーのサッカーライター/編集者として独立。現在も本誌をはじめ、『Number』などさまざまな媒体に寄稿している。欧州からJリーグ、なでしこリーグまで、守備範囲は幅広い。

theWORLD210号 2018年6月26日配信の記事より転載

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