[ロシアW杯#36]欧州王者ポルトガルがあわやGL敗退に ロナウドのPK失敗が響いたか

序盤から優位に進め、先制したポルトガル

序盤から優位に進め、先制したポルトガル

初戦ではきっちりPKを沈めたが、今回は失敗。頭を抱えて悔しがるロナウド photo/Getty Images

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グループBは「2強+2弱」。その構図は書き換えられた。スペインと引き分けて最後の最後に勝ち点を得たモロッコも、そのアフリカの雄から初戦で勝ち点3をもぎとったイランも、決して弱者ではなかった。モロッコとの2戦目で苦しみ抜いた末に1-0で勝利した欧州王者のポルトガルは、グループリーグ最終戦でその事実を改めて痛感させられることになる。

1、2戦目とは異なり、リズミカルなパス回しでボールを支配したポルトガルは、開始から10分も経たないうちに決定機を作り出す。W・カルバーリョがフワリとしたボールをエリア内に送ると、イランのCBプーラリガンジがクリア。そのボールを拾ったJ・マリオが、イランGKの飛び出しにより無人になっていたゴールを狙う。しかし、枠を捉えるには至らず、幸先の良いスタートを切れなかった。

ビッグチャンスをフイにしたものの、ポルトガルの勢いは止まらない。18分までに4本のCKを得るなど、イランを自陣に釘付けにしていく。7分、33分と相手の鋭いカウンターを食らったが、守備陣も高い集中力を発揮し、決定的な場面には持ち込ませない。ここまでは戦前の予想通りの展開だ。
あとはイランが誇る堅牢をいかにしてこじ開けるか。そこにポルトガル・ファンの興味が注がれる中で、強烈な輝きを放ったのがクアレスマだった。今大会初のスタメン出場を飾った円熟のウインガーが、前半終了間際に世界の度肝を抜く。アドリエン・シウバとのワンツーで右サイドからセンターに切り込むと、自身の代名詞であるトリヴェラ(アウトサイドキック)をゴール左上に突き刺した。

イラン、相手のPK失敗で息を吹き返したが……

イラン、相手のPK失敗で息を吹き返したが……

94分に勝ち越しのチャンスを迎えたイランだが、タレミの放ったシュートはゴール左に外れた photo/Getty Images

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この超絶弾で決勝トーナメント進出に近づいたポルトガルに53分、追加点のチャンスが訪れる。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の審判員による助言と主審の映像確認により、PKが与えられた。キッカーは2戦目までに4ゴールと絶好調のC・ロナウド。これで勝負の趨勢は決する。誰もがそう考えたはずだ。しかし、エースの放った一撃は、抜群の反応を見せたベイラバンドの腕の中へ。スコアは動かない。そして、この失敗がイランを勇気づけることになる。

実際、絶体絶命のピンチを脱した後のイランは、それまでとは別のチームのようにエネルギッシュなプレイを連発する。パススピードと動き出しの質が上がり、58分には右サイドを突破。際どいクロスを放った。72分にはCFアズムンのポストプレイから途中出場のゴッドスがシュート。同点ゴールを奪いそうな気配を漂わせる。

そして、91分だった。今度は自分たちがVARの恩恵を受け、PKを獲得したのだ。これを途中出場のアンサリファルドがきっちりモノにして、スコアは1-1。なおもロングボール攻勢でポルトガル陣内に踏み込むイランは、94分に勝ち越しのチャンスを迎える。ゴドスが放ったシュートの跳ね返りが、ゴール前でフリーのタレミの元へ。だが、背番号17のフィニッシュは惜しくも枠を捉えず、ポルトガルの息の根を止められなかった。これが決まっていれば、逆転でグループリーグを突破していたイランにとっては、悔やんでも悔やみきれない決定機逸となった。

[スコア]
イラン代表 1-1 ポルトガル代表

[得点者]
イラン代表:アンサリファルド(90+3)
ポルトガル代表:クアレスマ(45)

文/遠藤 孝輔

theWORLD210号 2018年6月26日配信の記事より転載

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