年功序列ジャパン、おっさんジャパンにも次代へ残せるものがある! 見えてきた「日本のサッカー」

批判をひっくり返した本田 photo/Getty Images

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参考にしたいのはメキシコ代表

なぜ堂安律や中島翔哉ら若手をメンバーに含めないのか。西野朗監督が選んだロシアワールドカップメンバーには、サポーターから多くの疑問の声が挙がった。「年功序列ジャパン」、「おっさんジャパン」といった批判的なワードもあり、開幕前は平均年齢の高さばかりが指摘されてきた。確かに、今大会で奮闘している本田圭佑、長友佑都、乾貴士、長谷部誠らは30歳以上の選手で、4年後も日本代表に名を連ねている可能性は低い。ロシア大会で彼らが結果を出しても、日本サッカー界の将来に繋がりにくいのではないかとの声が出るのは当然だ。

しかし、今の西野ジャパンは「日本が世界でどう戦うべきか」という重要な答えを次の世代へ残すことができるのではないだろうか。ワールドカップ前の親善試合で黒星が続き、期待されないまま臨んだ本番で結果を出す流れは2010南アフリカ大会の岡田ジャパンとそっくりだ。しかし、戦い方は大きく異なる。相手を徹底的にリスペクトして守備的な戦術を執った当時のサッカーに対し、西野ジャパンはあくまで攻撃的だ。相手との力量差を考えつつも、日本人選手の強みを活かした攻撃的なサッカーを披露して結果へ繋げている。まだグループステージを突破できると決まったわけではないが、2014ブラジルワールドカップのグループステージ敗退以降迷い続けてきた「日本が目指すべきサッカー」の答えが見えてきているのではないか。

4年前に味わった屈辱から日本サッカー界は大きく揺れ、どのスタイルが日本の目指すべき道なのか分からなくなっていたのは間違いない。しかし今西野ジャパンが見せているスタイルで決勝トーナメント進出の結果を得ることができれば、その迷いが晴れるはずだ。若手に経験を積ませることはできていないが、日本独自のスタイルを次代へ残すことはできる。
もちろんヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が主張し続けたデュエル、速攻も絶対忘れてはならない。それを身につけずワールドカップベスト4、優勝などはあり得ないことだ。しかし、デュエルや堅守速攻といったワードにばかり囚われて守備的になりすぎる必要はないことを西野ジャパンは示している。4年後にガラリと日本代表の顔ぶれが変わったとしても、目指すべき方向性さえ定まっていれば問題はないはずだ。

参考にしたいモデルは、メキシコ代表だ。メキシコは国内組の選手も多く、海外組にも超のつくビッグクラブに所属している選手がいるわけではない。しかし、メキシコ代表として集結した時に彼らは驚くべき力を発揮する。それは「メキシコサッカーといえばこれ!」という確固たるスタイルが存在するからであり、選手も監督も自分たちの強みを理解してプレイしている。それが1994年大会以降ベスト16入りを続けている理由なのだ。

体のサイズなどを考えてもメキシコのやり方は日本が見習うべきもので、彼らはポゼッションと堅守速攻の両方に対応できる。ハリルホジッチ前監督の言うデュエルもサイズの割に強く、日本が今後継続的にワールドカップで決勝トーナメント進出を決めていくにはモデルにしたいチームだ。

日本と言えばこのスタイルというものを定めることができれば、選手や監督が代わっても方向性が大きくブレることはない。これまでの日本は守備的だった2010年大会、攻撃的だった2014年大会とワールドカップごとにスタイルが変わってしまっている部分がある。そのサイクルはあまり褒められたものではなく、しっかりとした土台をそろそろ築くべき時期にある。それを日本人監督である西野監督の下で築くことができれば、これほど大きな財産はない。

2010年大会とは違う、日本らしいサッカーで決勝トーナメントへ。おっさんジャパンと批判され続けたベテラン陣だが、彼らは若手の成長以上に大きなものを日本サッカー界に残してくれるかもしれない。

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