制空権を握ったスウェーデン セットプレイで好機演出
堅守速攻のプランを完遂し、メキシコのパスワークを封じたスウェーデンの面々 photo/Getty Images
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“予想外の結末”が、両チームを決勝トーナメントに導いた。
メキシコは2勝、スウェーデンは1勝1敗で迎えた第3戦。韓国対ドイツの一戦が戦前の予想通りドイツの勝利で終わるなら、メキシコには引き分け以上、スウェーデンには勝利が求められる一戦だった。しかし、実力伯仲の両者の対決は、予想外の展開へと引き込まれる。
立ち上がりにチャンスを作ったのは、精神的にやや追い込まれた状態にあったスウェーデンだ。開始直後のFKで決定機を迎えると、4分、5分と立て続けにチャンスを作る。12分にはCKのチャンスから最後はベリがオーバーヘッド。ゴールの枠をわずかに外れたが、スウェーデンは持ち前の高さを活かしてセットプレイで相手に脅威を与えた。開始15分のボール支配率はメキシコが65%とリードしたが、スウェーデンの組織的な守備を前にメキシコは攻めあぐねる。
徹底的に研究されたメキシコは得意のパスワークを封じられ、作った決定機は17分の1本のみ。スウェーデンは18分にフォルスベリ、31分にベリ、さらに前半終了間際のアディショナルタイムにはカウンターから再びベリが決定機を迎え、ボール支配率の劣勢とは裏腹に試合の主導権を握った。その勢いが、後半に入るとついに結果に結びつく。
スコアレスのまま迎えた50分、スウェーデンは中央でつないで右サイドへと展開。クロスに合わせたクラーソンのシュートは当たり損ねたが、“大外”から飛び込んだ左サイドバックのアウグスティンションが押し込んで先制ゴールを奪う。さらに62分、ペナルティエリア内でベリが倒されてPKを獲得すると、キャプテンのグランクヴィストがゴール左上にシュートを突き刺して2-0。この時点で韓国対ドイツが0-0であったことから、スウェーデンはメキシコを得失点差で上回り、グループ首位に躍り出た。
追い込まれたメキシコだが、ドイツの失態で命拾い
韓国がリードしたことを知り、喜びを爆発させるメキシコのサポーター photo/Getty Images
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ドイツが勝利すれば3位に後退するメキシコは、攻勢に出るための交代カードを切った。65分にはDFガジャルドに代えてMFファビアンを投入。ところが、74分にスウェーデンのロングスローからトイヴォネンと競り合ったアルバレスがオウンゴールを献上し、ビハインドは3点に広がる。このゴールで意気消沈したのか、過去2試合で見られたメキシコの強さは最後まで見られず、残り時間は韓国対ドイツの結果が気になるばかり。アディショナルタイムを経て、まずはスウェーデンの決勝トーナメント進出が決まった。その数分後、“ドイツ敗戦”の一報が届き、メキシコも喜びを爆発させた。
この試合におけるスウェーデンの強さは圧巻のレベルにあった。[4-4-2]の布陣でスペースを埋める組織的な守備は最後まで崩れず、2連勝でこの試合を迎えたメキシコの勢いを完全に削ぎ落とした。
「ドイツ戦の敗戦が、我々を強くした」
スウェーデンのアンデション監督は前日の記者会見でそう話したが、確かに、チームとしての完成度は試合を重ねるごとに高まってきている。決勝トーナメントでも波乱を起こすだけのポテンシャルは十分にある。
一方、ドイツの失態によって7大会連続の決勝トーナメント進出を決めたメキシコも、この完敗によってリセットできるだろう。“死のグループ”は思わぬ形で決着したが、スウェーデンもメキシコもダークホースとして十分な存在感を誇示している。
[スコア]
メキシコ代表 0-3 スウェーデン代表
[得点者]
スウェーデン代表:アウグスティンション(50)、グランクヴィスト(62)、OG(74)
文/細江 克弥
『ワールドサッカーキング』『ワールドサッカーグラフィック』などの編集部を経て、2009年にフリーのサッカーライター/編集者として独立。現在も本誌をはじめ、『Number』などさまざまな媒体に寄稿している。欧州からJリーグ、なでしこリーグまで、守備範囲は幅広い。
theWORLD212号 2018年6月28日配信の記事より転載