[ロシアW杯#41]3大会連続で王者がまさかのGL敗退…… どうした、ドイツ代表

動きが重いドイツ 選手交代で攻勢に出るも

動きが重いドイツ 選手交代で攻勢に出るも

韓国に敗れ、GL敗退が決まった王者ドイツ。フンメルスが膝から崩れ落ちた photo/Getty Images

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「本気のドイツに勝てるはずがない!」

前韓国代表監督で、ドイツ人でもあるウルリッヒ・シュティーリケ氏は断言した。確かにそのとおりだ。あらゆる面で格が違う。そもそも韓国は、ドイツが1勝1敗で第3戦に臨むとは予想していなかっただろう。メキシコとスウェーデンに連勝し、韓国戦は控え選手のテスト。〈本気ではない〉ドイツとの一戦で、ひょっとすると3ポイントも……と目論んでいたに違いない。もっとも、自分たちも連敗は想定せず、第3戦までに3~4ポイントを奪えれば、決勝トーナメント進出の可能性も少しはあるはずというのがグループリーグの見通しだったはずだ。したがってメキシコに敗れたとき、韓国のプランはほぼ崩れていた。

それでもペルーは意地を見せ、貴重な3ポイントを勝ち取って帰国した。しかも彼らと異なり、韓国には決勝トーナメント進出の可能性がわずかながら残されている。2点差以上でドイツに勝ち、スウェーデンがメキシコに敗れる──が条件だ。厳しすぎるハードルではあるものの、今大会のドイツはディフェンシブ・トランジション(攻→守の切り替え)が非常に鈍い。韓国にも付け入る隙はある。
 
しかし、韓国がどうのこうのではなかった。ドイツの動きは相変わらず重い。相手の出方をうかがっていた前半のパフォーマンスはともかくとして、いつまで経ってもペースが上がらなかった。
58分、ベンチにスウェーデン先制の情報が届いたのだろう。レーヴ監督は中盤のケディラに代え、FWのゴメスを投入した。「より攻撃的に」という合図である。引分けではなく、勝利が必要になった。

それでもドイツはもどかしい。ボールを奪われてもすぐに回収せず、ゆっくりと自陣に戻ってくる。パスを出しても止まっている。焦りの影響か全体的に窮屈になり、味方同士の距離感まで崩れていく。66分、ゴレツカに代えてミュラーをピッチに送り込み、78分にはDFキミッヒ→FWブラントという攻撃的な選手交代も図ったが、迫力と精度を欠いたままだ。また、再三にわたる韓国GKチョ・ヒョヌの好守もドイツを苛立たせていた。

韓国が均衡を破った 後半ATに2発!

韓国が均衡を破った 後半ATに2発!

決勝トーナメント進出は逃したが、ジャイアントキリングを成し遂げ喜びを爆発させる韓国メンバー photo/Getty Images

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残り時間が少なくなる。まだスピードが上がらない。ショートパスで崩そうとの意識が強すぎるのか、ゴメスとミュラーの高さを生かすハイクロスも多用はしていない。しかも前がかりになり、韓国にロングカウンターのスペースを提供しはじめる。そして、後半の追加タイムを迎えた。

93分、左CKからキム・ヨングォンに先行を許す。96分、GKノイアーが前線に飛び出していたため、ドイツゴールはがら空き。ロングボールがソン・フンミンに渡ったとき、ドイツの命運は尽きた。

10年南アフリカ大会のイタリア、前回大会のスペインに続き、ディフェンディング・チャンピオンがグループリーグで姿を消した。アルゼンチンも命がらがら決勝トーナメントに進出している。ロシア・ワールドカップは、なにが起きるかわからない。

[スコア]
韓国代表 2–0 ドイツ代表

[得点者]
韓国代表:キム・ヨングォン(90+3) 、ソン・フンミン(90+6)

文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD212号 2018年6月28日配信の記事より転載

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