[村上アシシ FROM RUSSIA #3]W杯を楽しめるのは、世界平和あってこそ!

photo/村上アシシ

「世紀の祭典」を楽しめる環境に、改めて感謝

ボルゴグラードのママエフの丘にそびえ立つ「母なる祖国像」は、高さ85メートルもある巨大な像だ。かつてこの都市はスターリングラードという名前だった。第2次世界大戦において、史上最大の市街戦と評される「スターリングラード攻防戦」が行われ、ソ連軍とドイツ連合軍合わせて約200万人の死者が出た。

戦後、旧ソ連はこの街に「英雄都市」という称号を与え、戦争犠牲者を追悼する施設としてこの像を建設し、今や街のシンボルとなっている。ボルゴグラードは戦争で未曾有の被害が出た都市として、広島と姉妹都市提携を結んでおり、街中にはヒロシマ・ストリートという名前の通りが存在する。こういった歴史的背景を知った上で、ワールドカップの開催都市を巡ると、旅の興味も深くなる。

日本対ポーランドが行われたボルゴグラード・アリーナから約2kmということもあり、試合後に多くの日本代表サポーター、ポーランド代表サポーターがこの丘を登った。丘の頂上までの道のりには様々な慰霊碑が祀られており、丘全体が荘厳な雰囲気だった。今や「平和ボケ」と言われるほど世界平和が当たり前のように感じられてしまう時代だが、こうやって何事もなく「世紀の祭典」を楽しめる環境に、改めて感謝したいと思う。

文/村上アシシ

プロサポーター、経営コンサルタント、著述家。「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを2006年から継続中。著書は『日本代表サポーターを100倍楽しむ方法』(朝日新聞出版)ほか。

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