ワールドカップのたびに起こる渋谷での大騒ぎもベルギー戦の敗北でいったん収まり、次に日本のサッカーが盛り上がるのは2年後の東京五輪、あるいは4年後の2022ワールドカップと考えている人も多いだろう。しかし、その前に注目してほしいものがある。Jリーグだ。ワールドカップの時だけのブームで終わらせるのではなく、ここからJリーグをさらに盛り上げることで日本サッカーは強くなる。特にこれからの4年間はJリーグが非常に大きなカギを握る。なぜなら、新たに日本代表を引っ張っていく若い世代の選手たちが必要不可欠だからだ。
今回ロシアワールドカップに臨んだ日本代表の平均年齢は28歳を超えている。過去の大会と比較すると日本にとって最高齢のメンバー構成となり、大会前はおっさんジャパンなどと皮肉られた。選手たちはその批判に負けじとベスト16入りを果たしたわけだが、このメンバーのまま4年後のワールドカップを戦うことはできない。今後も代表を引っ張る選手はいるだろうが、すでに最後のワールドカップと宣言している本田圭佑、代表引退を発表した長谷部誠を含め、大半のメンバーが変わることになると予想できる。史上最高齢でロシアワールドカップを迎えたとなれば、ここからは史上最大規模の世代交代が必要になってくるのだ。そしてその原石はJリーグにいる。
今回はメンバーから漏れてしまったが、ヘントFW久保裕也、ハノーファーFW浅野拓磨、クルトゥラル・レオネサMF井手口陽介、ポルティモネンセでゴールを量産した23歳FW中島翔哉、ザルツブルクFW南野拓実らリオデジャネイロ五輪世代に加え、ハンブルガーSVで今季衝撃を与えた21歳FW伊藤達哉、フローニンヘンでルイス・スアレスやアリエン・ロッベンら偉大なるクラブOBと何度となく比較された20歳MF堂安律など、すでに海外で結果を出している選手も今後は深くA代表に絡んでくるだろう。彼らが主役候補なのは間違いない。しかし、Jリーグの底上げなくして4年後の成功はない。堂安にしても中島にしても、Jリーグで結果を出してから海外へ飛び立っている。日本人選手の場合は高校や大学を卒業してそのまま海外クラブに行くケースはほとんど存在せず、今後さらにJリーグ全体で若手を盛り立てて海外クラブに引き抜かれるような人材を育成していかなければならない。この世代交代のタイミングだからこそ、今回のワールドカップを1つのブームで終わらせるのではなくJリーグの盛り上げに繋げてほしい。
タイミングの良いことに、ワールドカップ後にはヴィッセル神戸でスペイン代表MFアンドレス・イニエスタがプレイすることになっている。イニエスタ見たさにスタジアムへ足を運ぶサッカーファンも増えるだろう。今後も欧州で一時代を築いた名手たちがJリーグにやってくる可能性があり、そうなればJリーグの注目度が高まるのは間違いない。それに合わせて4年後の代表を支えてくれるであろう若手選手たちも是非チェックしてほしいところだ。そうした若手をチェックできていれば、今後世代交代していく日本代表をもっと楽しめるようになるだろう。
また東京五輪の存在も大きい。この世代では堂安らと同じく注目を集める17歳のFC東京MF久保建英がおり、久保は4年後に21歳となっている。フランス代表で19歳のキリアン・ムバッペが大暴れしていることを考えると、21歳が若すぎるということはない。4年後に日本代表のスタメンに割って入ることも十分に可能なはずだ。その久保や堂安らとともに昨年のU-20ワールドカップを戦ったコンサドーレ札幌MF三好康児、センターバックに加えてボランチも担当できる大型のベガルタ仙台MF板倉滉、横浜F・マリノスで積極的に仕掛け続けている快速アタッカーの遠藤渓太、大怪我から復帰したジュビロ磐田FW小川航基、日本の高さ不足を補える189cmのサイズを誇る20歳になったばかりの清水エスパルスDF立田悠悟、上背ならアビスパ福岡からすでにベルギーのシント・トロイデンへ移籍した19歳のDF冨安健洋も188cmある。今の若手世代には期待が持てる才能が溢れており、ここから4年後へ向けた激しいサバイバルがスタートすることになる。本田や長谷部といった経験豊富な選手たちの世代に1つの区切りがつくのは寂しい気もするが、次の世代が育っていることは非常に楽しみだ。
また東京五輪世代の選手たちならば、4年後だけではなく8年後のW杯も続けて狙うことが可能となる。長期的な視点に立って代表を強化していくこともできるはずだ。鹿島アントラーズDF植田直通、川崎フロンターレMF大島僚太、柏レイソルGK中村航輔ら今大会もメンバーに入っていた若い世代をベースに、柴崎岳、昌子源、酒井宏樹ら4年後も主力として戦える経験豊富組、そこに東京五輪世代がバランスよく食い込んでくれば非常に興味深い。
今回名前を挙げた立田や遠藤、三好、板倉など東京五輪世代はJリーグの舞台でしっかりと出場機会を得ている。4年後のワールドカップを迎えた時、大半の顔ぶれが変わった代表メンバーを見て「誰?」とならないためにも、ロシアワールドカップの応援だけで終わりとせずJリーグにも足を運んでほしいところだ。