[ロシアW杯#60]ロシア国民の想いを乗せた一撃炸裂も…… クロアチアが20年ぶりの4強を決めた

前戦から入れ替えた選手たちが結果を残す

31分にチェリシェフが左足一閃。GKが一歩も動けず、シュートは左上隅に突き刺さった photo/Getty Images

決勝トーナメント1回戦で120分間の激闘の末に、PK戦を制してきたロシアとクロアチア。両国ともに体力面の消耗具合が気になるところだが、互いにスタメンの変更を1人に留める形で、4強の最後の椅子を懸けた戦いが始まった。

良いスタートを切ったのはロシアだ。2分、ショートパスの交換からゴールに迫ると、5分にはクリアボールを拾ったジュバがシュートを放つ。いずれも得点には結びつかなかったが、5バックを用いたスペイン戦とは異なり、[4-2-3-1]で攻撃色を強めたいチェルチェソフ監督の狙いは、出だしのプレイぶりからはっきり窺えた。

その後はクロアチアにボールを支配され、両サイドを攻め込まれる苦しい時間帯が続く。ただ、持ち前の堅守で対抗し、ゴールは許さない。すると、31分だった。ジュバのリターンパスを受けたチェリシェフが、PAの手前からゴールマウスの左上隅を射抜くビューティフルショットを決め、ロシアに貴重な先制点をもたらした。

今大会の“ラッキーボーイ”となっているレフティの一撃で先手をとったロシアは、手数は少ないながら効率の良さを感じさせる攻撃が目立つ。一方、クロアチアは相手の固い守備ブロックをこじ開ける工夫が足りない。モドリッチとラキティッチを中盤の底に並べたことでポゼッションは安定したが、サイドアタック一辺倒となり、なかなか決定機を作れなかった。

それでも40分、同点弾が生まれる。最終ラインの裏に飛び出したマンジュキッチがゴールの左手前からラストパス。これに頭で合わせたクラマリッチが試合を振り出しに戻したのだ。このアタッカーも先制点のチェリシェフも、決勝トーナメント1回戦で先発出場していない。そう、両指揮官が前戦から唯一入れ替えた選手が結果を残し、前半の攻防は幕を閉じた。

両者の運命は2戦連続でPK戦に

98年大会以来の準決勝進出が決まり、ガッツポーズを決める主将モドリッチ photo/Getty Images

後半の決定機は両チーム通して一つだけ。60分、PA内でクリアボールを拾ったペリシッチがシュートを放つも、狙い澄ました一発は左ポストに嫌われた。辛うじて難を逃れたとはいえ、ロシアは前線で起点となっていたジュバを下げた79分以降、攻撃の形を作るのに苦労。選手全員のハードワークが光る守備は買えるも、勝ち越しゴールを奪う気配がなかった。

文字通り膠着状態に入った試合は、延長戦にようやく動く。101分、CKをヘディングで叩きつけたヴィダが、クロアチア待望の追加点を挙げた。これで勝負ありかと思われたが、ホストカントリーが意地を見せる。115分、ジャゴエフのFKにフェルナンデスが頭で合わせ、土壇場で追いつくことに成功。まるでロシア国民の想いを乗せたような一撃がゴールに吸い込まれ、勝負の行方はPK戦に委ねられることになった。

勢いはロシアにあった。しかも、相手GKのスバシッチは試合中に右太もも裏を痛めている。運否天賦のPK戦とはいえ、ホストカントリーの勝機は小さくなかったはずだ。ただ、勝利の女神が微笑んだのはクロアチアだった。完全アウェイの状況にも怯まず、5人中4人が成功し、3位に躍進した98年大会以来20年ぶりの準決勝進出を決めた。

[スコア]
ロシア代表 2–2(3 PK 4) クロアチア代表 

[得点者]
ロシア代表:31分 チェリシェフ、115分 フェルナンデス
クロアチア代表:39分 クラマリッチ、101分 ヴィダ

文/遠藤 孝輔

theWORLD219号 2018年7月8日配信の記事より転

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