『ポスト吉田、山口、大迫』の姿を見た アジア大会で大きな収穫を得たU-21世代
ソン・フンミンと競り合った立田 photo/Getty Images
想像以上の粘りで準優勝
ジャカルタで行われたアジア競技大会2018において、男子サッカー日本代表は準優勝という結果を手にした。決勝で韓国代表に延長戦の末敗れたのは残念だったが、2年後の東京五輪へ大きな期待が持てるポジティブな大会になったのではないか。
そもそも今大会に日本はオーバーエイジを1人も召集しない21歳以下のチームで参加しているが、他国はU-23のチームも多かった。決勝で戦った韓国もU-23にソン・フンミンらオーバーエイジを加えたチーム構成で臨んでいる。しかも日本は堂安律や冨安健洋など海外でプレイするU-21世代の数名を欠いている。大会前は決勝まで駒を進めると予想していた者は少なく、準優勝という結果は大健闘と言えるはずだ。
何より目立ったのは守備の粘り強さだ。攻撃ではグループステージから引いた相手を崩し切れないケースが目立ったが、大会を通して3バックを中心とした守備には安定感があった。韓国戦では延長戦で2失点したものの、大会を通して日本の失点は僅かに4。そのうちの1点は自陣でのパスミスから生まれたもので、相手に完璧に崩されたケースはそれほど多くなかった。マレーシア、UAEなど過密日程で体力的に苦しい中1‐0で白星を掴んだ粘りは大いに評価できる。守備陣は今大会で自信を掴んだはずだ。
特に3バックの中央を任されていた立田悠悟、守備的MFもこなせる板倉滉は両者ともサイズがあり、東京五輪だけでなく将来のA代表入りにも期待が持てる。立田は189㎝もあり、韓国相手にも負けることなくヘディングで何度も相手の攻撃を跳ね返していた。この高さはA代表の最終ラインにとっても魅力的で、サイズ的にはサウサンプトンで活躍する吉田麻也と似たものがある。現在清水エスパルスでプレイする立田も海外でプレイできる素質があり、ポスト吉田のような存在になってほしいところ。4年後に立田が吉田麻也、植田直通、昌子源らとポジション争いを展開してくれれば面白い。また今回召集されていないが、ベルギーのシント・トロイデンでプレイするDF冨安も188㎝とサイズがある。サイズのあるセンターバックが出てきたのは非常に大きい。
中盤では上背こそないが、渡辺皓太の運動量も光った。ハードに相手を潰すシーンも大会を通して目立ち、A代表では山口蛍に近いタイプか。連戦の中でも走り切れる運動量は大きな武器で、五輪代表監督とA代表を森保一監督が兼任することを考えれば渡辺のA代表抜擢も考えられる。
最前線ではラッキーボーイ的存在だった法政大学2年FW上田綺世も興味深い。182㎝の上田は韓国のセンターバック相手にも空中戦で競り負けない強さ、跳躍力を見せた。体を強引に入れてボールを持つこともでき、A代表でいうならロシアワールドカップで大活躍だった大迫勇也に近いタイプだ。足下の技術など改善すべき点もあるが、韓国相手に競り負けなかった強さは評価できる。
日本もここにオーバーエイジを加え、さらには堂安やハンブルガーSVで活躍するFW伊藤達哉、U-20ワールドカップに出場したFW小川航基、レスター・シティ地元紙が注目したFW田川亨介らが絡んでいくことになる。今大会で経験を積んだメンバーを含め、なかなか豪華なサバイバルと言えよう。また森保監督が今後も[3-4-2-1]のシステムを採用する場合、今大会でこのシステムを選手たちが経験できたのは大きい。A代表に上がる際に溶け込みやすくなるはずだ。
理想では東京五輪世代から数名がカタールW杯の代表メンバーに入っていき、吉田や柴崎岳らロシア大会を経験した選手たちや久保裕也らリオデジャネイロ五輪世代とバランスよくMIXされるチーム構成が望ましい。主に守備陣を中心に今大会で手応えを掴んだ選手もいるはずで、東京五輪だけでなくカタールW杯へ向けて収穫の多いアジア大会になったと言えるのではないだろうか。