[元代表・名良橋晃が斬る]ついに始動「森保ジャパン」への期待値

チーム全体に浸透していた前へ仕掛ける積極的な姿勢

森保ジャパンは青山を中心に前へ仕掛ける姿勢を貫き、初陣に完勝した photo/gettyimages

 日本代表×コスタリカ代表は3-0という結果もさることながら、観ていてワクワクしてくるポジティブな要素ばかりが目立つ一戦となりました。

もちろん、韓国戦から中三日だった相手のコンディションがどうのというのもありますが、それを差し引いても日本のほうが選手の質で上回っていたし、躍動していました。一試合限定ですが、本当に良い印象が残りました。

 私はもっと手堅い戦いを選択すると思っていました。森保一監督は広島時代にどちらかというと守備に重点を置いていたし、日本代表を率いて最初の試合ということもあり、バランスを取れる選手を起用するだろうと考えていました。

 ところが、蓋を開けてみれば各ポジションに積極的に仕掛けることができる選手、自分でボールを運べる選手が抜擢されました。とくに、2列目に堂安律、南野拓実、中島翔哉を並べたのは思い切った決断でした。南野拓実は1トップを務めた小林悠との距離感もよく、高いポジションを取って2トップ気味になることで相手の守備陣をカク乱していました。

 ゴールへ向かう姿勢、前へ仕掛ける積極性があったのは攻撃陣だけではなく、すべての選手がボールを持つとまず前方をファーストチョイスにしており、チーム全体にその意識が浸透していました。右SBの室屋成は最後まで攻撃参加する姿勢があったし、左SBの佐々木翔も前方でプレイする中島翔哉のサポートをするべく、うまくバランスを取っていました。

 話が少し逸れますが、個人的に佐々木翔の活躍には涙が出そうになりました。本人も試合後にコメントしていましたが、2度に渡る大ケガで苦しんだ時期があるなか、ついに日本代表のユニホームに袖を通しました。そして、いままさにケガをしている選手たちに勇気を与える見事なプレイをみせました。心のなかに「森保さんのために」という気持ちがあったのではないかと想像できます。

 これは槙野智章、青山敏弘も同じで、「監督のスタイルをまわりに伝えなければ」という意識が今回の合宿を通じてあったと思います。なかでも、青山敏弘の存在の大きさは試合から感じ取れました。短期間の準備でこれだけの戦いができたのは驚きでしたが、チームとして前向きに戦うことができたのは青山敏弘の導きでもあったと思います。

 とにかく、コスタリカと戦った日本代表にはゴールへ向かう姿勢、前方へ仕掛ける積極性がありました。攻守の切り替えが早く、スピード感もありました。球際に強くいけていたし、足を止めることもありませんでした。数人の選手という単位ではなく、チーム全体でできていました。

 これからはこの試合がベースになります。森保ジャパンでプレイするためには、こういう姿勢がないといけないという方向性が示されました。ここにアジア大会を戦った選手たち、ロシアW杯に出場にした選手たちが入ってきます。こうした競争が日本代表を強くしていくのだと思います。

安西、杉岡、西村など楽しみな若手が多い

状況に応じて柔軟なポジション取りをみせた南野。66分には追加点をゲットした

 今回は一試合の開催となったので、出場しなかった選手がいました。欲をいえば伊藤達哉や冨安健洋にもプレイしてほしかったですが、クラブに戻って真摯に取り組んでいればまたチャンスがやってくると思います。

 森保一監督のなかには間違いなく3バックの構想もあります。コスタリカ戦はどうしても勝利が必要なことからロシアW杯でも採用した日本代表が慣れ親しんだ4バックで戦いました。しかし、アジア大会では3バックで戦った試合もありました。今後、必ずどこかでシステムを変えて戦うはずです。そのときにどんなメンバーを起用するのかいまから楽しみにしています。

 システムに関係なく、私がいま注目している選手をここに紹介しておきます。鹿島の安西幸輝、湘南の杉岡大暉はいずれもポリバレントな選手で、複数のポジションで高い能力を発揮できる選手です。自分で仕掛ける力、前への推進力もあり、新しい日本代表のコンセプトにマッチした特徴を持っています。

 CSKAモスクワに移籍した西村拓真も代表に近いポジションにいると思います。本人は一日でも早く新天地で結果を出すことを考えているでしょう。また、広島の稲垣祥、札幌の福森晃斗、清水の北川航也にも間違いなくチャンスがあります。

 というより、すべての選手に扉が開かれています。10月、11月にも強化試合が2試合ずつ合計4試合予定されていて、パナマ、ウルグアイなどが来日します。今回と同じような姿勢で臨むことができれば、結果はともかく多くのことを得られるでしょう。

 最後にひとつ、私にはいま懸念していることがあります。日本サッカー協会がなぜあのタイミングでヴァイッド・ハリルホジッチ元監督との契約を解除したのか、真相は明らかにされるのかということです。双方に言い分があると思いますが、どこに本当のことがあるのか定かではありません。ロシアW杯でラウンド16進出という結果が出たことで、真相は闇のなかとなりそうです。しかし、このまま有耶無耶で終わってしまうと、真の解決にはなりません。今後、この問題に動きはあるのでしょうか……。私はいま、とても懸念しています。

theWORLD225号 2018年9月15日配信の記事より転載

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