[元代表・名良橋晃が斬る]最後まで読めない、大混戦のJリーグ

神戸の監督交代は不可解 長崎にもまだチャンスがある

リージョ監督に今後を託した神戸。しかし、不可解な監督交代だった photo/gettyimages

 J1の残留争い、J2の昇格争いが近年稀にみる大混戦になっています。勝点計算をしようにも残留ライン、昇格ラインがわからず、最後までなにが起こるかわかりません。J1残留に関しては勝点30を超えてくればというのが通説でしたが、今シーズンはもっと高いラインでの争いになっています(数字はすべて10月11日時点)。

 J1の順位表をみると、いま下位にいるチームでも連勝すれば中位、場合によっては上位も狙えます。J2の昇格争いも僅差で複数のチームが競り合っており、どちらも混沌としたシーズンになっています。

 そうしたなか、神戸と鳥栖が監督交代に踏み切りましたが、なぜこのタイミングなのでしょうか。神戸はたしかに連敗していましたが、吉田孝行前監督のもとやっているサッカーは悪くなかったので少し不可解です。フアン・マヌエル・リージョ監督の就任がプラスに働けば良いですが、あまり結果を残してきた人物ではありません。

 フェルナンド・トーレスをうまく生かせなかったことで、鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ前監督も解任となりました。この決断がどんな結果をもたらすかわかりませんが、大事なのは金明輝新監督のもと代表戦による中断期間にどれだけチーム力を高められるかで、これは同じく新監督のもと残り試合を戦う神戸にも当てはまります。

 名古屋がそうだったように、神戸、鳥栖ともになにかキッカケがあれば浮上する力を持っています(名古屋はまた連敗していますが……)。G大阪も宮本恒靖監督の就任、今野泰幸の復帰、渡邉千真の加入があり、ファン・ウィジョの決定力がより生かされるようになって安定感が出てきました。清水もドウグラス、北川航也が点を取れていて調子をあげています。個人的に北川航也には注目していたので、今回の代表招集をうれしく感じています。できれば、代表でも実際にプレイする姿をみたいと思っています。

 柏もオルンガ、瀬川祐輔の2トップが機能してきました。前線にボールを入れれば多少アバウトでもオルンガが力強くキープしてくれるし、瀬川祐輔は常に最終ラインの裏を狙っています。なにより、中盤に大谷秀和、最終ラインに鈴木大輔が固定されてきたのが大きいです。経験のある大谷秀和はピッチで的確な指示を出せるし、鈴木大輔は気持ちのこもったプレイをみせています。戦術うんぬんではなく、メンタルで引っ張れる選手がいるのはチームに好影響があります。

 現在18位の長崎にしても、粘り強く勝点を稼いでいます。守りをベースとするなか、鈴木武蔵がゴールできています。カウンターのカタチは機能しているので、あとは自分たちのスタイルを貫いて戦い抜くだけでしょう。例年、この時期になると残留を逃すチームが1チームはみえてきますが、長崎にもまだまだチャンスがある状況です。

大分はJ1で見てみたい 監督の経験も大事になってくる

まだ難敵との戦いを残している photo/gettyimages

 J1で残留争いに絡んでいる各チームはいま、J2の昇格争いにも注目しているはずです。なぜなら、J1ライセンスを持たない町田が自動昇格となる2位以内に入った場合は17位がプレーオフにまわり、16位は残留できるからです。町田がプレーオフ圏内となった場合は、単純に町田を除いたチームでプレーオフが行われ、J1の16位も戦うことになります。

 その町田は他チームよりも2試合消化が少ない状況ですが、シーズン終盤を迎えて昨季同様に勝ちきれない試合が出てきています。結果を出しても昇格できないなか、どうモチベーションを維持するかが問題です。また、走るスタイルを指向するなか、選手層はあまり厚くありません。そのため終盤を迎えると足が止まり、それが結果につながってしまっているのかもしれません。
 この町田も含めて、僅差の勝点のなかに複数のチームが存在しています。昨季の千葉(終盤7連勝でプレーオフ進出)のことを考えると、6位東京Vまで勝点9差の9位山形、10位山口までプレーオフ進出の可能性があると思います。

 首位に立つ大分は連勝していますが、今後に町田、千葉、松本、横浜FCという難敵との連戦を残しており、ここでの結果が運命を左右するでしょう。大分は片野坂知宏監督のもとJ3からチームを作ってきており、いまのメンバーでここまで到達しました。戦術の引き出しが多い指揮官で、相手によってカメレオンのように戦い方を変えています。中盤の組合せを変えたり、前線の枚数を変えたり……。個人的にはそのままJ1で戦う姿を見てみたいチームのひとつです。

 これだけの混戦のなか、明暗を分けるのはどのような要素なのか?

 まず、やはり失点の少ない安定感のあるチームが有利です。突発的な出場停止やケガ人の発生に対応できる選手層の厚さも必要になってきます。また、監督が昇格争いを経験したことがあるかないかも重要なポイントになってきます。松本の反町康治監督、福岡の井原正巳監督、山形の木山隆之監督はプレーオフを戦った経験があり、それぞれシーズン終盤の戦い方、一発勝負の難しさを理解できていると思います。

 これだけ競り合っていると、残り試合のなかで勝点1を取れるかどうかで順位が変わってきます。負けを引分けにする粘りが必要で、今後は内容も大事ですがなによりも結果が求められます。最低限「勝点1」のために、どんなゲームプランを選択するのか。たとえばアウェイで終了間際に1点のビハインドを追い付いたときに、確実に勝点1をキープするのか、それとも勝点3を狙うのか。中途半端にならず、しっかりと判断することです。

theWORLD226号 2018年10月15日配信の記事より転載

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