[水沼貴史の欧蹴爛漫020]アーセナルがトップ4に返り咲くために、しなければいけないこと
今夏にロンドンに赴き、アーセナルを上昇気流に乗せたエメリ監督 photo/Getty Images
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無敗記録は続いているが……
水沼貴史です。今回は直近のプレミアリーグ11試合負けなしのアーセナルについてお話しします。1996年より指揮を執ったアーセン・ヴェンゲル前監督が昨季限りで退任し、ウナイ・エメリ新監督を迎えたアーセナルですが、ポジティブな変化が窺える一方で、課題も浮き彫りになっています。彼らがプレミアリーグのトップ4に返り咲き、来季のUEFAチャンピオンズリーグの出場権を確保するために、何が必要でしょうか。
今季開幕前にアーセナルに加入したL・トレイラ。小柄でありながら力強い対人守備を見せる photo/Getty Images
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リスク管理がカギに
今季のプレミアリーグ上位6クラブ中最多の16失点を喫していることから、トップ4浮上のためにはより守備を安定させる必要があるでしょう。リーグ戦第13節のボーンマス戦では追加点を狙いに前がかりになった隙を相手に突かれ、前半終了間際にカウンターから同点ゴールを浴びてしまいました。
今季のリーグ戦で前半をリードして終えたことが1度もないアーセナルですが、このようなデータは選手にも伝わっているはずですので、あの試合ではよりリスク管理を徹底したかったですね。積極的に追加点を狙ったこと自体は良かったですし、ボーンマスのカウンターが素晴らしかったことも事実ですが、失点場面ではアーセナルの攻守の切り替えや帰陣が遅かったと、私は思います。特に左ウイングバックのセアド・コラシナツの帰陣が若干遅く、空いた左サイドのスペースをボーンマスの選手に使われてしまいました。コラシナツとエクトル・ベジェリンの両ウイングバックの攻撃参加を活かしたいというエメリ監督の意図が窺えますが、リード時には相手のカウンターに備えてウイングバックのポジションを調整する、もしくはウイングバックにより素早い帰陣を徹底させるなど、試合展開や点差に応じて攻守のバランスを整える作業が必要でしょう。攻撃をシュートで終えること、相手のカウンターに繋がるような不用意な横パスを出さないという基本事項も、もう少しチーム内で徹底したいところです。
また、今季開幕前に加入したMFルーカス・トレイラの活躍もあり、 中盤でのインターセプトが格段に増えました。しかし彼がボールホルダーにアプローチした隙を相手に突かれ、彼が空け渡した中盤のスペースを使われてしまうケースも見受けられます。もう一人のボランチであるグラニト・ジャカが後方でバランスをとるなど、トレイラが釣り出された際の他の選手のポジションニングを整備した方がいいと思います。
ヴェンゲル体制ではあまり見られなかった連動したプレスからのショートカウンターを短期間で植え付けたほか、3バックと4バックの併用に着手して戦術のバリエーションを増やすなど、ロンドンに赴いて以降のエメリ監督の仕事ぶりには光るものがあります。来月2日のリーグ戦第14節ではトッテナム、5日の第15節ではマンチェスター・ユナイテッドと、上位陣との対戦が続くアーセナルですが、ここでライバルクラブを叩き、トップ4浮上への足がかりを築けるか。“エメリ・アーセナル”の真価が問われる連戦と言えるでしょう。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。