[特集/いざ、アジアカップへ! 02]名良橋晃が見た森保ジャパンとアジア杯

南野、堂安、中島がベストも、他の組合せにも良さがある

南野、堂安、中島がベストも、他の組合せにも良さがある

選手それぞれの個性を森保監督が 引き出すことができるか photo/Getty Images

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 1月に迎えるアジアカップは森保ジャパンにとってはじめての公式戦であり、今後W杯予選でライバルとなる国々との真剣勝負の場でもあります。求められるのは覇権奪回で、5回目のアジアチャンピオンを目指して一試合一試合を勝利にこだわって戦ってほしいです。優勝した先にコンフェデ杯がないのは残念ですが、ここで勝っておけば6月のコパ・アメリカに臨むときに「アジア王者」の称号とともに乗り込むことができます。また、2022年カタールW杯に向けたアジア予選を考えても、しっかりと実力を見せておきたいところです。

 とはいえ、もちろん簡単ではありません。前回オーストラリア大会を振り返れば、ラウンド16のUAE戦で敗れています。主導権を握るなか先制点を許したことで相手にがっちりと守られ、なんとか同点にはしたものの勝ち越し点を奪うことができず、PK戦によって敗退しました。アジア各国との戦いではこのような展開が常に予想されます。いかに守備を固める相手を崩せるかが鍵になります。

 11月20日のキルギス戦では4点を奪う攻撃力を発揮しましたが、この試合はあまり参考になりません。アジアカップで対戦する各国はもっと厳しく、激しい守備で対抗してきます。そうなると攻撃のバリエーションが求められ、3バックという選択もあり得ると思っています。現状、森保一監督はU-21代表でしか3バックを採用していませんが、間違いなく考えているはずです。4バックをベースに戦うなか、攻撃が手詰まりになったときにどう打開するか注目しています。
 ここまでは南野拓実、堂安律、中島翔哉の活躍が際立っていてその他のコンビネーションについて心配する声もありますが、伊東純也、北川航也、原口元気らが加わったときはまた違う良さがあり、要は組合せによっていろいろな特徴があるということです。ベストと考えられる3人はそれぞれパスを出せるし、受けられるし、ドリブルで仕掛けることができます。揃って出場するのがベストかもしれませんが、2人+北川航也や伊東純也など、セットを変えることで攻撃のバリエーションが変わってきます。3人以外がダメという判断を私はしていません。誰が出場してもチーム力は変わらないという状況になることが理想でしょう。

 むしろ気になるのは、大迫勇也が体調不良なことです。前線で替えが利かない選手になっているので、彼が出場できないときに誰を選択するのか……。鈴木優磨は天皇杯準決勝の終了間際にハムストリングを痛め、小林悠も手術明けとなります。鎌田大地がベルギーで好調を維持していますが、今回は招集が見送られました。森保一監督がどう考えて選手起用するか楽しみです。

 他にも長友佑都がケガから復帰したばかりですし、三竿健斗も負傷しています。山中亮輔も肉離れとなっていて、大島僚太、車屋紳太郎などもケガをしています。こうした状況のなか招集した選手たちをどう組み合わせて戦っていくのか、そこもポイントになります。ただ、森保一監督はチーム内で競争することを求めており、そう考えるとアジアカップは各選手にとってチャンスだといえるでしょう。

どの大会、どの試合でも勝ちにこだわるのが大事

どの大会、どの試合でも勝ちにこだわるのが大事

引いてくる相手をどう崩すか。積極的な 判断が求められる photo/Getty Images

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 グループリーグで対戦するのはウズベキスタン、オマーン、トルクメニスタンの3か国です。もちろん侮れない相手ばかりですが、3位でも決勝トーナメントに進出する可能性が高いレギュレーションなので、正直ここは突破できると思います。問題はやはりラウンド16からの一発勝負です。

 ひとつ確かなのは、柔軟な対応が求められるということ。対戦相手が守備を固めているからといって、あまりにも前がかりになるとカウンターを食らうことになります。アジア各国の前線には質が高く、ワンチャンスを得点に結びつけることができる強烈なストライカーがいます。勝ち上がれば勝ち上がるほどその傾向が強くなるので、どれだけ主導権を握っていてもリスクマネージメントは必ずしておく必要があります。いかに相手の堅守を崩すかが鍵になりますが、単純な失点をしないことも大事です。VARも採用されるので、セットプレイで不用意なファウルをしないことも意識すべきです。

 いずれにせよ、森保一監督が就任してからやってきた全員攻撃、全員守備、さらには球際に強くいくという部分は引き続き意識してプレイしていってほしいです。あとは個性的な選手たちがいかにチームとしてまとまるかで、国際経験が豊富な選手がいれば、まだあまり出場したことがない選手もいます。そうした選手たちの“融合”もテーマになってくると思います。

 ロシアW杯後、日本代表は5試合を戦いましたが、いずれも国内での強化試合でした。アジアカップははじめてのアウェイゲームで、繰り返しになりますが真剣勝負の公式戦でもあります。チームを取り巻く環境、試合会場の雰囲気が違えば、相手のモチベーションも違うのでこれまでとは少し異なる対応が求められます。試合がキックオフされてからピッチのなかで気づくこともあり、選手には柔軟な判断が求められます。言われたこと、指示されたことをこなすだけではなく、相手の出方をみてピッチのなかで個々の選手が物事を決めていく自主性があってほしいです。

 すべては、勝つために必要なことです。どの大会でもどの試合でも、勝ちにこだわる。その過程で「こうしたほうがいい」と思うことがあれば、私は各選手にどんどん積極的な判断をしてほしいです。とくに、組織的に守っている相手にはそのほうが効果的で、良い結果につながる可能性が高いです。

 チーム内の基本的な約束事、ベースを維持するのはもちろん大事で、そのうえで変化をつけていく。日本人選手の特徴を引き出すのがうまい森保一監督に率いられた日本代表がアジアカップでどんなパフォーマンスを見せるのか、いまから楽しみにしています。

取材・文/飯塚健司

theWORLD228号 2018年12月15日配信の記事より転載
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