[特集/いざ、アジアカップへ! 03]日本代表はどう戦うべき?

アジアの戦いで必要な3つのポイント

ワントップを務める大迫。ファーストディフェンダーとして守備にも貢献する photo/Getty Images

 アジアカップの戦い方は、ロシアワールドカップを踏襲したものになる。日本人が集まって普通にプレイしたらこうなる、という感じの無理のないサッカーだ。これまで外国人監督の下で少し背伸びしながらプレイしてきた日本代表がおそらくはじめてつかんだ等身大のサッカーといえるだろう。それが何なのか、それでいいのか、という問いはまた別にあるとして、短期間にまとまりやすい、コンセンサスのとりやすいスタイルは代表向きだ。森保一監督はロシア大会のコーチングスタッフの1人であり、監督就任後も明確にロシアの継承を基本としている。

 フォーメーションは[4-2-3-1]。守備はミドルゾーンでのプレスを基調に、チャンスがあればハイプレスに移行して押し上げる。攻撃はミドルゾーンで奪ってのショートカウンターと、自陣でのビルドアップからコンビネーションを使った攻め込み。ただ、ワールドカップとアジアカップでは少し戦い方は変わる。アジアでは、日本に対してはっきり引いて守備を固める相手があるからだ。必然的に日本のディフェンスラインは高くなり、守備も前線でのハイプレスがメインになる。

 ここで第一のポイントになるのがMFの守備力だ。ハイプレスを外されると、そのまま相手のカウンターアタックになってしまう。そこで、相手のカウンターの芽を摘むボール奪取のスペシャリストが必要になる。ハイプレスの主力になる前線は大迫、中島、南野、堂安。そして二の矢がボランチの2人。前線4人の攻撃力は素晴らしいが守備でボールを奪いきれるだけのフィジカルの強さはない。ボランチも1人は攻撃の組み立てに優れた柴崎、青山を起用するだろうから、MFのボール奪取スペシャリストの枠は1人だけになる。守田英正か遠藤航だ。このポジションにかかる負担は大きく、ここでカウンターを止められるかどうかは日本のプレイに大きな影響を与えるだろう。

 第二のポイントはロングボール対策。ワールドカップではベルギーの空中戦にやられたが、アジアカップで日本に対して空中戦で優位性を持てそうなのはオーストラリア、イラン、韓国ぐらいだろう。そこまでボールを支配され、押し込まれる状況もあまりないと思う。むしろ危険なのはディフェンスラインの裏へ落とされるロングボールだ。日本が押し込んでいれば必然的にラインは高くなる。ところが、守備の中心になる吉田の弱点はスピードなのだ。逆にアジアのライバルにはスピードのあるFWがいる。例えば、韓国のソン・フンミンのスピードはプレミアリーグでも無双レベルだ。長い時間、ハイラインを維持してのプレイはワールドカップではなかった。アジアカップで違う状況になったときに、これまで目立たなかった弱点を露呈する危険はある。

 第三は決定力。引いて構えている相手を攻略するのは容易ではないが、中島、南野、堂安、大迫のアタックラインは強力なので得点力そのものに関してさほど心配はない。ただ、彼らの破壊力は対戦相手も十分承知しているので、ファウル覚悟で潰しにくることは覚悟しておかなくてはならない。中島、堂安はサイドからカットインするドリブルが武器だけに、ドリブルを潰されると攻撃が止まってしまう。また、4人の素早いコンビネーションは大きな長所であるとともに、ボールを奪われたときに4人が置き去りにされるリスクも内包している。

状況察知能力と的確なプレイ選択

キルギス戦で存在感を発揮した守田 photo/Getty Images

 以上の3つのポイントを踏まえると、状況に合わせてプレイを変化させることが大事だと思う。

 常にハイラインではなく適宜にミドルゾーンに引き込んで守る時間を作る、守備重視なら中島ではなく原口を起用する、リードしてカウンターを狙うときはスピードのある浅野をトップに置く(※編注:負傷により武藤嘉紀が追加招集)、相手が放り込んでくる終盤に3バックで中央を固める、前線の4人だけで攻撃を完結させずにサイドバックと連係して相手を押し込む攻め方も加える……これまでの強化試合と違って、イケイケで攻撃するだけでは真剣勝負では足下をすくわれかねない。点差、時間帯、流れ、バランスを考慮して丁寧に戦うこと。監督の采配だけでなく、フィールド上の選手たちで状況を察知して的確なプレイを選択しなければならない。 その点で、長谷部誠というリーダーがいない今回のチームで、誰がリーダーシップをとるのかも注目される。経験豊富な吉田がその役割を果たすと思うが、中盤では柴崎または青山、前線では大迫が試合を読んでチームメイトに伝える役目になるだろう。

 ベストメンバーはこれまでの強化試合から予想すると、GK東口、DFは酒井、吉田、長友が確定で、吉田と組むセンターバックは冨安、三浦、槙野の争いだが、ポテンシャルを買って冨安を推したい。ボランチは柴崎と守田。アタックラインは1トップに大迫、トップ下に南野、右が堂安、左が中島。対戦相手によっては原口の先発もありうる。リードしている状況なら中島→原口で守備を固め、大迫→浅野でカウンターを狙う。残り時間が少ないときは高さのある三浦をDFに投入して3バックでハイクロスに備える。2列目の誰かとの交代になるだろう。先発組で点をとれないときの切り札がないのと、機会が多そうなセットプレイキッカーが確定していないのがやや心配なところか。

 初のオフィシャルな大会であるアジアカップで真剣勝負の場数を踏み、ステップアップすることを期待したい。

文/西部謙司

theWORLD228号 2018年12月15日配信の記事より転載
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