昨夏チームに加わったクリスティアーノ・ロナウドが14得点を挙げて得点ランク首位に立つなど、セリエAの首位を快走するユヴェントスは高い攻撃力を誇っている。前半戦で積み重ねた得点数は38となっているのだが、実は最多得点チームは他にいる。39得点を挙げている8位アタランタだ。なぜ8位のチームが前半戦最多得点チームなのかと驚いた人もいるだろうが、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ率いるアタランタは超がつく攻撃集団なのだ。
アタランタの面白いところは、組織と個がバランスよく融合している部分にある。基本システムは[3-4-1-2]でセットされており、中心となるのは「1」に入るアレハンドロ・ゴメス、あるいはヨシップ・イリチッチだ。この2人はアタランタの攻撃の核であり、ファンタジスタと呼べるタイプの選手だ。トップ下に入る選手にはある程度の自由が与えられており、ポジションを目まぐるしく変えながら個の力で違いを生み出していく。スタッツでも2人は興味深い数値を出しており、イリチッチはリーグ全体で4位となる1試合平均ドリブル成功数2.3回を記録。ゴメスはチャンスに繋がるパス本数を1試合平均3.1本出しており、これはミランFWスソと並んでリーグ1位の数字だ。2人は世界的に有名な存在とは言えないかもしれないが、技術レベルは相当に高いものを持っている。
次に組織の部分だ。中央ではゴメスやイリチッチが自由に動いているが、サイドでは組織的な崩しが目立つ。特徴は両サイドのセンターバックの動きだろう。ウイングバックは常に高い位置を取っているのだが、それをセンターバックが追い越していくこともアタランタでは珍しくない。ウイングバック、センターバック、ボランチと数の力でサイドを支配してしまうのだ。そして相手をサイドに引っ張り出してしまえば、ゴメスやイリチッチを中央で活かしやすくもなる。3バックをこれほど攻撃的に使用しているチームも珍しいだろう。そのぶん組み立ての部分でボールを奪われるとカウンターを浴びてしまうのだが、アタランタはそんなことに怯むチームではない。まさに全員攻撃の姿勢で畳み掛けるのだ 。
その全員攻撃の姿勢は数字にも表れており、アタランタはここまで13選手が得点を決めている。これは16人が得点を記録しているローマに次いでセリエA2番目の多さだ。サイドを突破した際には逆サイドのウイングバックがペナルティエリアまで侵入することも約束事になっており、ペナルティエリアには常に多くの人員を送り込むことができる。センターバックが上がってくることもあるため、それが得点者の多さに繋がっているのだろう。
そうした地上戦の巧みな崩しに加え、脅威となっているのが高さだ。センターバックのジャンルカ・マンチーニ、ホセ・ルイス・パロミノ、ベラト・ジムシティの3人は190cmのサイズがあり、右ウイングバックに入るハンス・ハテブールも187cm、ボランチのマルテン・デ・ローンは185cm、最前線に構えるFWドゥバン・サパタは186cmある。他にもMFマリオ・パシャリッチ(189cm)、ロビン・ゴセンス(184cm)など、アタランタはなかなかの巨人軍団だ。彼らがペナルティエリアへ詰めてくるセットプレイは相手チームにとって脅威で、今季アタランタはセットプレイからリーグ2番目に多い8得点を決めている。それも全てコーナーキック、フリーキックを味方に合わせたものとなっており、セットプレイの対応にも 相手は四苦八苦している。背が低いのはトップ下に入る165cmのゴメスくらいで、その他は全員180cm超えというのも珍しくないのだ。
残念ながら失点数が27もあるため、セリエA最多得点ながら順位は思ったように上がってこない。しかしアタランタのフットボールはセリエAの中でも特異な面白さがある。ビッグクラブが彼らの猛攻に耐えきれず崩壊しているのも特徴的で、ローマとは3-3のドロー、インテルにいたっては4-1と手痛くやられている。わずか11失点の堅守を誇るユヴェントスとも2-2で引き分けており、アタランタの攻撃を抑え込めるチームはセリエAの中に存在しないと言ってもいい。前半戦最後のゲームでもサッスオーロを6-2で葬っており、アタランタは一度調子に乗せてしまうと手がつけられなくなる。
後半戦が始まると27日にローマ、そしてコッパ・イタリア準々決勝ではユヴェントスとの対戦が予定されている。ユヴェントスにとってセリエAとコッパ・イタリアのダブルは当たり前のミッションだが、アタランタの存在だけは不気味だ。コッパ・イタリアでサプライズが起きる可能性も捨てきれず、壮絶な打ち合いになるかもしれない。どこが相手でも超攻撃的姿勢を崩さないアタランタのサッカーは、今セリエAで最も面白いと言っていいだろう。