[水沼貴史の欧蹴爛漫023]1月だけで2敗のリヴァプール タイトルを獲るために何を直すべき?

相手クラブの対策が進む

相手クラブの対策が進む

今季よりリヴァプールでプレイしているN・ケイタだが、本領を発揮できていない photo/Getty Images

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水沼貴史です。2018-2019シーズンの欧州主要リーグも後半戦に突入し、各リーグの優勝争いや残留争いの様相が明確になってきました。今回はプレミアリーグ23試合消化時点で首位に立ち、29シーズンぶりのリーグ制覇が期待されているリヴァプールについてお話しします。磨き上げられた堅守速攻を武器にリーグ戦で無敗をキープしてきた彼らですが、1月だけで公式戦2敗を喫するなど、雲行きが怪しくなってきました。今月19日のクリスタル・パレス戦(プレミアリーグ第23節)では4-3で競り勝ちましたが、盤石と思われていた守備にも綻びが生じ始めています。昨年順調なスタートを切った彼らの身に、一体何が起きているのでしょうか。

今季も自慢のハイプレスで敵陣深くでボールを奪い、縦に速い攻撃で多くのゴールを挙げてきたリヴァプールの面々ですが、彼らの速攻を封じるべく、ライバルクラブが中盤に5人“横一列”のラインを敷くようになりました。サイドと中央のスペースを満遍なく消されたことで縦パスを通しづらくなり、第22節のブライトン戦や翌節のC・パレス戦でリヴァプールは攻めあぐねています。C・パレス戦では右サイドバックのジェイムズ・ミルナーが敵陣深くへのスプリントを繰り返してパスを引き出したり、左サイドバックのアンドリュー・ロバートソンがベースポジションを上げて味方MFが横パスを出しやすい状況を作るなど、攻撃面でいくつか工夫は見られました。

しかし、この試合では右サイドの攻撃がある程度充実していた反面、[4-2-3-1]の左サイドハーフを務めたナビ・ケイタの出来が芳しくなく、左サイドの攻撃にやや物足りなさを感じました。昨夏に鳴り物入りでRBライプツィヒから加わったケイタですが、今季のリーグ戦で1アシストのみと、本領を発揮できていません(得点なし)。
リヴァプールがシーズン終盤の過密日程を乗りきるためには彼の復調が不可欠ですが、リヴァプールの他の選手と比べ、敵陣ペナルティエリアへ侵入する回数が少ないと私は思います。ライプツィヒでは自陣の深い位置から縦にボールを持ち運ぶ役割を担っていたので、敵陣の深い所での仕事が求められる今との違いに、彼自身も戸惑っているのではないでしょうか。

また、ライプツィヒにいた頃は相手クラブに引かれる経験が少なかったため、中盤にある程度のスペースがありました。この頃は今よりも余裕を持ってボールをキープできましたが、常に相手クラブに引かれ、敵陣の密集地帯でボールを受けることが求められるリヴァプールでは事情が異なります。こうした環境の違いが彼の不調に繋がっているのかもしれません。

ただ、自陣に引きこもる相手の攻略に苦労している今のリヴァプールにとって、足下の技術が高いケイタは貴重な存在です。彼が勇気を持ってペナルティエリアへ入る回数を増やせば、相手DFがそこに引き付けられ、守備ブロックに風穴が開く可能性が高まります。彼が復調できればリヴァプールの遅攻の威力が増すことは間違いないのですが……。攻撃面ではこの点がカギを握るでしょう。

自慢のハイプレスに陰り C・パレス戦で気になる現象が

自慢のハイプレスに陰り C・パレス戦で気になる現象が

C・パレス戦でプレスをかわされてしまったヘンダーソン。次戦以降に挽回できるか photo/Getty Images

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C・パレス戦で今季のリーグ戦初の3失点を喫してしまいましたが、1失点目の場面で気になる現象が起きていました。このシーンではボランチのジョーダン・ヘンダーソンが敵陣深くまで飛び出し、ボール奪取を試みましたが、サイドチェンジでプレスをいなされたうえに、彼が空け渡したスペースを相手に使われてしまいました。その後相手のFWウィルフリード・ザハにリヴァプール陣営の右サイドを突破され、失点に繋がっています。

もちろん、ヘンダーソンとしてはなるべく敵陣でボールを奪う、ボールホルダーを複数人で囲むというチームの約束事を守ったにすぎないので、失点の全責任が彼にあるというわけではありません。ですが、今回失点の遠因となってしまったことで、自分が前に出るべきか否かの判断が今後うまくできなくなってしまうかもしれません。強豪クラブとの対戦では、少しの判断の遅れや狂いが命取りとなります。ユルゲン・クロップ監督としては中盤の選手に迷いを与えないためにも、ボランチが前に出るべき場面、そして自陣に留まるべきシチュエーションを今一度整備したいところでしょう。

C・パレス戦で十八番のハイプレスを破られてしまいましたが、これまで続けてきた積極的な守備を捨て、自陣にリトリートするなどの極端な戦術変更は必要ないと思います。ボールホルダーを複数人で、かつ敵陣で囲むという原則はそのままに、その際のボランチや最終ラインの選手のポジショニングを整理すれば、自ずとハイプレスの練度は高まるでしょう。就任4シーズン目のクロップ監督のもとで積み上げてきたサッカーを、リヴァプールの面々が最後まで貫けるか。久々のメジャータイトル獲得を目論む彼らの更なる進化に期待したいところです。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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