[4-4-2]と[4-3-3]、アトレティコ戦で敷くべきは......
R・マドリードを電撃退団し、新天地ユヴェントスでもゴールを量産しているロナウド。アトレティコの息の根を止められるか photo/Getty Images
水沼貴史です。2018-2019シーズンのUEFAチャンピオンズリーグが再開し、来週にはラウンド16・ファーストレグの残り4試合が各地で行われます。今季もビッグカード目白押しとなりましたが、今回は日本時間21日に行われるアトレティコ・マドリード対ユヴェントスの一戦についてお話しします。昨年の夏にレアル・マドリードからFWクリスティアーノ・ロナウドを引き抜いたことからも、CLに対する本気度が窺えるユヴェントスですが、直近5シーズンで2度決勝進出を果たしている難敵アトレティコを相手に、どのように戦うべきでしょうか。
アトレティコの本拠地で行われるファースト・レグでは、ユヴェントスを率いるマッシミリアーノ・アッレグリ監督のゲームプランや人選がカギを握ると、私は思います。まずはユヴェントスが敷くべき布陣についてご説明しましょう。
アッレグリ監督は今季、ロナウドとマリオ・マンジュキッチを2トップに置く[4-4-2]、もしくはこの二人のどちらかをウイングFWに置く[4-3-3]という二つの布陣を使い分けていますが、アトレティコと同じ[4-4-2]を選び、中盤で“3対4”の数的不利が起きないようにしたほうが良いでしょう。また、守備ブロックの構築が素早いアトレティコが相手ですので、中盤で余分なパスを回さずにボールをロナウドかマンジュキッチに預け、ブレイズ・マテュイディやフェデリコ・ベルナルデスキらのサイドハーフの攻め上がりも促しながら、なるべく直線的に速く攻めるのが有効だと思います。無論、アトレティコも最前線からの連動したプレスでユヴェントスのパスワークを潰しにかかると思いますが、ボランチのミラレム・ピャニッチを中心に素早く最前線へボールを供給し、攻撃のリズムを掴めるか。この中盤の攻防はこの試合の見どころの一つと言えるでしょう。
両CB負傷で窮地に! アッレグリは誰をチョイスする?
2014年よりユヴェントスを率いているアッレグリ監督。戦術の引き出しが多い指揮官だが、アトレティコ戦ではどんな策を繰り出すのか photo/Getty Images
基本的にはユヴェントスがボールを支配したうえで果敢に敵陣に侵攻し、アトレティコが自陣で守備を固めるという構図だと思いますが、堅守速攻が持ち味のアトレティコが遅攻を苦手としていることをふまえ、ユヴェントス側があえてリトリートを選択する可能性も排除できません。強豪相手に守備的なゲームプランで臨むこともあるアッレグリ監督ですが、今回はジョルジョ・キエッリーニとレオナルド・ボヌッチの両センターバックが負傷を抱えています。仮にこの二人の出場が叶わなかった場合、安易に自陣に引き籠ったり、アトレティコにやすやすとボールを渡すような戦い方は避けるべきでしょう。
今月10日のセリエA第23節(サッスオーロ戦)では負傷離脱中のキエッリーニとボヌッチに代わり、マルティン・カセレスとダニエレ・ルガーニがセンターバックに起用されました。二人ともボールホルダーにアプローチすべきかポジションに留まるべきかの判断が的確でなく、対峙したアタッカーに簡単に抜かれてしまう場面が少なくなかったと、私は思います。
アトレティコ戦でもカセレスとルガーニの両名、もしくはどちらかの先発が予想されていますが、遅攻が苦手なアトレティコが相手とはいえ、彼らにボールを支配されてFWアントワーヌ・グリーズマンらの自陣深くへの侵攻を許せば、カセレスやルガーニのところから守備ブロックが決壊する可能性が高いです。対人守備やポジショニングに絶対の自信を誇るキエッリーニとボヌッチが揃って復帰できれば、先ほどご説明した“守備的プラン”もアリですが! ベテラン2名の復帰が間に合わなかった場合、なるべく最終ラインを自陣のゴールから遠いところに設定し、[4-4-2]のコンパクトな布陣からのハイプレスやミドルプレスでボールを奪い、敵陣で過ごす時間を増やしながらアウェイゴールを積極的に狙うのが得策でしょう。
対戦相手の出方に応じて自分たちの戦い方や布陣を微調整できるのが、アッレグリ監督の最大の特長です。それゆえにこの試合の展開予想が難しかったのですが、キックオフ直後のユヴェントスの配置や最終ラインの高さを見れば、彼の狙いがある程度分かるはずです。この試合をご覧の皆さんには、百戦錬磨のアッレグリ監督がこの大一番でどのような布陣を敷き、それがどれほど功を奏したかにご注目頂きたいです。
ではでは、また次回お会いしましょう!
※UEFAチャンピオンズリーグ・ラウンド16(1stレグ)のA・マドリード対ユヴェントスの一戦は、日本時間2月21日の早朝5時にキックオフ!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。