[粕谷秀樹]なかなかレベルが上がらないプレミアリーグの審判たち 

粕谷秀樹のプレミアメッタ斬り

プレミアリーグで一定の評価を得ているオリバー主審。欧州コンペティションでも笛を吹いている photo/Getty Images

他リーグに比べてレベルが低い?

はるか30メートル彼方から笛を吹き、親の敵にでも出会ったような形相で走って来る。「あんなところでジャッジできるわけないじゃん」と不満を抱いた選手にすれば、「勘弁してよぉ〜」である。反論しようものならイエローカードを出されるし、単なる軽口が暴言と誤解され、痛すぎる罰金なんてケースもないわけじゃない。

どうしたもんかね、プレミアリーグのレフェリーは──。なかなかレベルが上がらない。好き嫌いはあるかもしれないけれど、各方面で一定の評価を受けているのはマイケル・オリバーただひとりだ。前半と後半でジャッジの基本が変わる人や、長い距離を走れるとは思えないからだつきのオッチャンもいる。

そこのあなた、正解です。そう、ジョナサン・モスなんだな。以前に比べると多少はマシになっている、なんて声も聞こえてくる。えっ、マジかよ!? どこがマシなんだい? ぽっちゃり体形の中年が、世界一のプレイ強度を誇るプレミアリーグを裁けるわけないでしょ。選手たちの動きについていけないのだから、正しいジャッジを下すことは難しくなる。リー・メイスンやポール・ティアニーも同じだね。もっともっとからだを絞らなきゃダメだ。リーガ・エスパニョーラやセリエA、ブンデスリーガに、腰まわりがダブついているレフェリーはいないでしょ。

アシスタントレフェリーのレベルも考えものだ。女性のシアン・マッシー・エリスはラインをきっちり判定できるし、走力、運動量ともに申し分ないけれど、もっと走れや、と突っ込みたくなる男も少なくないんだな。第25節のウェストハム対リヴァプール戦で、マシュー・ウィルクスは間近のプレイを左斜め前方からジャッジしてオンサイドにした。ラインと平行には立っていなかったので、オフサイドを見逃した。スピードあふれるパフォーマンスを瞬時のうちに平面でジャッジする難しさは分かる。でも、見る位置が正しくないアシスタントレフェリーも多いような気がするね。

すでにカラバオ杯ではVARが導入されていたが…… photo/Getty Images

来季ついに導入されるVAR

そこでプレミアリーグは、来シーズンからVARを導入する。レフェリーも大変だ。ミスジャッジが糾弾され、言い逃れもできなくなる。ただ、VARは試合の流れをブチッと切るケースも少なくない。「やった、ゴールだ」と喜んでいたら、数分後にノーゴールの判定。気持ちもからだも冷めちまう。しかも担当レフェリーが優柔不断な場合、ビデオルームの意見に左右され、ジャッジを下すまでに時間を使うことだって考えられる。試合の流れに大きな影響を及ぼすよね。

だから来シーズンのプレミアリーグは、VARでギクシャクするんじゃないかな。悪質なタックルから選手を守るためには必要なテクノロジーであると同時に、試合の興味が損なわれるリスクもあるからね。アクシデント続出、レフェリーは顔面蒼白……。ま、覚悟しておきますか。

文/粕谷秀樹

サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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