バラック、バティストゥータも あと一歩で夢が消えた伝説の”中堅クラブ”たち

3冠に近づいたレヴァークーゼン photo/Getty Images

天国から地獄へ

世界的な強豪チームではなくとも、サッカー界の主役になったプチ黄金期を経験したチームは数多い。例えば2015-16シーズンにプレミアリーグを制したレスター・シティも、あのシーズンだけは伝説級の強さを誇った。

今回英『FourFourTwo』は、そうした特別な力を放ったチームを特集している。今回は惜しくもタイトルを掴めなかったチームを中心に特集されているのだが、当時はサポーターも夢を見たことだろう。

・フィオレンティーナ(1998-99)



フィオレンティーナは1968-69シーズンを最後にセリエA制覇から遠ざかっているが、1998-99シーズンにはチャンスがあった。アルゼンチンの英雄FWガブリエル・バティストゥータがいたのだ。このシーズンはバティストゥータも絶好調で、開幕から17試合で17得点と大暴れ。当然のことながら得点王レースをリードした。しかしシーズン途中で怪我を負ってしまい、それに伴ってチームの勢いも低下。徐々に勝ち切れなくなり、前半戦を首位で折り返しながら最終的には3位に沈んだ。

またコッパ・イタリアでもファイナルまで進んだのだが、決勝ではエルナン・クレスポのいたパルマに敗れてしまった。全てが上手く進めば国内2冠も達成できたかもしれないが、あと一歩のところで頂点を逃してしまう結果となった。

・レヴァークーゼン(2001-02)



レヴァークーゼンはドイツ国内の中堅クラブといったところだが、このシーズンには3冠達成のチャンスがあった。ミヒャエル・バラック、ルシオ、ゼ・ロベルト、ディミタール・ベルバトフ、オリヴァー・ノイビルなど名選手が揃っていた。リーグ戦でも快調に飛ばし、DFBポカールでもファイナルへ、さらにはチャンピオンズリーグでもリヴァプールやマンチェスター・ユナイテッドを撃破してファイナルに進出。まさに黄金期だったと言っていい。

しかしリーグ戦では終盤にハンブルガーSVと引き分け、ブレーメン、さらには残留争いをしていたニュルンベルクに敗れる大波乱。結果的にドルトムントにひっくり返されて2位でシーズンを終えた。

DFBポカール決勝ではシャルケ相手にリードしたものの、4点を奪われて2-4の敗北。チャンピオンズリーグ決勝ではレアル・マドリードに1-2で敗れ、3つの準優勝を経験する奇妙なシーズンとなってしまった。当時のチャンピオンズリーグといえば、あのジネディーヌ・ジダンが伝説のボレーシュートを決めたことでも有名だ。レヴァークーゼンはあれを喰らってしまったのだ。

・セルティック(2002-03)



スコットランド国内で圧倒的な力を持つセルティックは、2002-03シーズンにUEFA杯(現在のヨーロッパリーグ)制覇にあと一歩のところまで近づいた。当時のチームにはスウェーデンの英雄ヘンリク・ラーションが所属しており、このシーズンもラーションは全てのコンペティションで44得点を記録。セルティックでは2番目に多い得点数を記録したシーズンだった。

UEFA杯では決勝トーナメントでイングランドのリヴァプールまで撃破。チームとしては1967年以来となる欧州タイトルまであと少しだった。しかし決勝ではジョゼ・モウリーニョ率いるFCポルトに延長戦の末2-3で敗北。このゲームではラーションが2得点を決めたのだが、頂点には届かなかった。

しかもこのシーズンの最悪なところは、国内でも2番止まりだったことだ。リーグ戦ではライバルのレンジャーズに得失点差で上回られて2位、リーグカップでも決勝でレンジャーズに1-2で敗れた。この試合でもラーションは得点を奪っている。

・ボルドー(2009-10)



2008-09シーズンにリーグ・アンを制覇し、クープ・ドゥ・ラ・リーグも制していたボルドー。ヨアン・グルキュフ、ベノワ・トレムリナス、マルアン・シャマフらタレントも揃っており、2009-10シーズンも夢の連覇へ開幕7試合を6勝1分と見事な滑り出し。さらにチャンピオンズリーグではバイエルン、ユヴェントスと同居したグループステージを5勝1分の無敗首位通過。クラブに黄金期が訪れたかと感じたサポーターは多かったはず。

しかしリーグ戦では年明けから急に失速。最後の10試合は2勝2分6敗と大きく躓き、まさかの6位でフィニッシュしてしまった。しかもチャンピオンズリーグではベスト8で同国のリヨンに敗れる屈辱を味わった。クープ・ドゥ・ラ・リーグでは決勝でマルセイユに1-3で敗れ、なんとも後味の悪いシーズンの終わりとなってしまった。

・ベンフィカ(2012-13)



ベンフィカはポルトガルを代表する名門クラブだが、2012-13シーズンは終盤に地獄を見ることとなった。このシーズンは特に優勝争いがハイレベルで、ベンフィカは第28節を終了した時点で無敗。ライバルのFCポルトも無敗で、第29節の直接対決で運命が決まることになった。

ベンフィカは前半18分に先制したものの、28分に同点弾を許して1-1。しかし、焦ることはない。勝ち点ではベンフィカがポルトを2点上回っており、ドローでも悪くない結果だ。ところが後半アディショナルタイム、ポルトのケルビンに得点を許して1-2の敗北。嫌な意味で一生忘れられないシーズンとなってしまった。

さらに悪い流れは続く。国内カップのタッサ・デ・ポルトガルではファイナルまで進んだが、まさかの格下ヴィトーリアに1-2で敗北。これも逆転負けで、リーグ戦に続く悪夢となった。

極め付けはヨーロッパリーグだ。ヨーロッパリーグでもファイナルまで進み、対戦相手はイングランドの強豪チェルシー。試合終盤まで1-1と互角の戦いだったが、またまた悪夢が起こる。後半アディショナルタイムにブラニスラフ・イヴァノビッチの決勝点を許し、ベンフィカは準優勝となってしまった。このシーズンは嫌な形で3冠達成のチャンスを逃したことになる。


今回同メディアが取り上げたいくつかのチームは、国内と欧州タイトルの両方に近づいていた。しかしあと一歩のところで全てを逃すことになり、まさに悪夢のような展開だ。しかもビッグクラブと違って中堅クラブにはこのようなビッグチャンスはなかなか訪れない。それだけに失望は大きかったことだろう。

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