[水沼貴史]バイエルンに見過ごせない弱点が? ブンデス7連覇を阻む落とし穴とは
水沼貴史の欧蹴爛漫 028
現地時間24日に行われたDFBポカール準決勝。後半29分すぎにフンメルスがボール奪取を試みるも、ブレーメンのFWラシカにかわされる photo/Getty Images
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直近のブンデス10試合で無敗だが......
水沼貴史です。今季のブンデスリーガも残り4試合となり、優勝争いや来季のチャンピオンズリーグ出場権争いが熾烈を極めています。今回お話しさせて頂くのは、2位ドルトムントとの勝ち点差1で首位に立っているバイエルン・ミュンヘンについてです。直近のリーグ戦10試合で9勝1分け。今月6日に行われたドルトムントとの首位攻防戦で5-0の完勝と盤石に見える彼らですが、見過ごせない弱点があると私は思います。前人未踏のブンデスリーガ7連覇を目指すバイエルンにとって落とし穴となり得るポイントとは、一体何でしょうか。
センターバック陣が空中戦で強さを発揮している反面、彼らがスピードに乗ったドリブラーの対応に手を焼き、自陣の危険なエリアへの侵入を簡単に許してしまうケースが多いというのが今季のバイエルンを見ての印象です。24日に行われたDFBポカール準決勝でも中盤でのボールロストからブレーメンのFWミロット・ラシカにボールを運ばれ、センターバックのマッツ・フンメルスがあっさりとかわされて同点ゴールを浴びてしまいました。この場面ではボールを持っているラシカとゴール前に走り込んできたMFマキシミリアン・エッゲシュタインを同時に見なければならなかったので、フンメルスとしては対応が難しかったと思います。ですが、彼がラシカと並走することなく一か八かのスライディングを試みたところを見ると、彼の中でスピード勝負に対する苦手意識があったのかもしれません。同じくセンターバックのジェローム・ボアテングもスピード豊かなドリブラーの対応を不得手としていますので、バイエルンとしては自陣でのボールロストから相手のショートカウンターを浴び、センターバックが相手のドリブルに晒される場面をより減らしていく必要があるでしょう。
正確なパスでバイエルンの攻撃を司るチアゴ・アルカンタラ photo/Getty Images
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最大の関門はRBライプツィヒ戦 優勝へのキーマンは?
2部降格圏に沈むニュルンベルク(第31節)やハノーファー(第32節)を相手にバイエルンが勝ち点を取りこぼすことは考えにくく、難敵フランクフルトとの最終節はホームで戦えるという環境面でのアドバンテージがあります。来月11日に予定されている敵地でのRBライプツィヒ戦(第33節)が、彼らにとって最大の関門になるのではないでしょうか。仮にドルトムントがシャルケとの第31節やブレーメンとの第32節で連勝した場合、バイエルンにかかる重圧は凄まじいものになると思います。
ライプツィヒには相手最終ラインの背後をとる動きやスピードに定評があるFWティモ・ヴェルナー(ドイツ代表)がいますが、彼はフンメルスやボアテングが最も苦手とするタイプのアタッカーと言えるでしょう。また、ライプツィヒは格上相手にもハイプレスであったり、無駄な横パスを省いて“縦に速く”攻めることを臆せずやってくるチームですので、バイエルンが彼らの勢いに飲まれて失点を重ねる可能性は無きにしも非ずです。
そこで重要と思われるのがチアゴ・アルカンタラです。彼が2ボランチの一角に固定されて以降、中盤でのパスワークが安定してシーズン序盤よりもカウンターを浴びる機会が減りました。ライプツィヒ戦を含む残り4試合で彼が正確なパスを供給し、相手のプレスをいなせるか。シーズン最終盤で彼が担う役割は大きいでしょう。近年で最も厳しいタイトルレースに巻き込まれているバイエルン。彼らは底力を発揮できるでしょうか。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。