[水沼貴史]悲願のCL初制覇へ トッテナムがやるべき“リヴァプール対策”は

水沼貴史の欧蹴爛漫 030

当意即妙に布陣を使い分け、トッテナムをクラブ史上初となるCL決勝の舞台へ導いたポチェッティーノ監督 photo/Getty Images

ポチェッティーノの選択がカギに

水沼貴史です。欧州5大リーグの全日程が終了し、2018-2019シーズンもいよいよフィナーレを迎えようとしています。今回は現地時間6月1日に開催予定のUEFAチャンピオンズリーグ決勝、トッテナム対リヴァプールの一戦についてお話しします。今回のファイナルも見どころが盛り沢山ですが、私が最も注目しているのは、相手のストロングポイントに応じて自分たちの戦い方を微調整できるトッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督が、この大一番でどのような布陣を敷くかです。強敵リヴァプールを破るうえで彼が考えなければいけないこととは、一体何でしょうか。

リヴァプールに勝つためには、まず彼らが得意としている速攻を封じる必要があります。特にロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ、モハメド・サラーの快足3トップにドリブルスペースを与えないことが大事になってきますが、そのために有効な布陣が二つあると私は考えています。

一つ目は中盤に“5人横一列”のラインを敷いてサイドと中央のスペースを満遍なく消し、リヴァプール攻撃陣の縦パスや縦方向のドリブルを封じるというものです。格下のクラブがこぞって[4-5-1]のシフトを敷いてきた今年1月から3月にリヴァプールが苦戦したという事実がありますので、この戦い方を踏襲するのはありでしょう。

二つ目は、3月31日のプレミアリーグでリヴァプール相手に敷いた[5-3-2]の布陣をそのまま採用するというプランです。トッテナムは1-2でこの試合に敗れてしまいましたが、特に前半は5バックで自陣ゴール前のスペースを消し、リヴァプールが誇る3トップの進撃をある程度スローダウンさせることができていたと、私は思います。

どちらのプランを選ぶにしても、トッテナムの面々が攻撃時に狙うべきは相手のサイドバックの背後です。今季のリヴァプールを見ていると、相手に縦方向のパスコースや進路を消された際に、アンドリュー・ロバートソンとトレント・アレクサンダー・アーノルドの両サイドバックがすかさず高い位置をとる傾向にあります。この二人がパスの出しどころに困っている味方を助けたり、サイドからのクロスで攻撃に厚みをもたらしたりしているのですが、必然的に彼らの背後に広大なスペースができます。

トッテナムとしては奪ったボールを素早くソン・フンミンやルーカス・モウラの両サイドアタッカーに預ければ、ビッグチャンスに繋がるでしょう。攻撃面でやるべきことははっきりしていますが、問題はポチェッティーノ監督がボールの奪いどころをどこに設定するかです。中盤に人を多く並べて高い位置でのボール奪取やショートカウンターを目指すのか、それとも自陣ペナルティエリア付近のスペースを消すことにより重きを置き、ロングカウンターに賭けるのか。ぜひ皆さんにはポチェッティーノ監督がどちらのプランを選び、その選択がどれほど功を奏したかに目をむけて頂きたいです。私としては彼らが極端に守備的に振る舞うのではなく、攻守両面においてアグレッシブで前がかりにプレイしてくれることを期待しているのですが! 今季のCL準決勝でサッカー史に残る奇跡を演じた両チームによる熱き攻防を、心行くまでお楽しみ下さい。

ではでは、また次回お会いしましょう!


※UEFAチャンピオンズリーグ決勝、トッテナム対リヴァプールの一戦は日本時間6月2日(日)の早朝4時00分にキックオフ!

水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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