[貢献度で選んだ18-19ベスト11 セリエA編]チャンスに強いベテランFWと人材豊富なDF陣がもたらす安定感
セリエA屈指の守備職人たちがズラリ
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前人未踏のセリエA8連覇という偉業を達成したマッシミリアーノ・アッレグリ(ユヴェントス)を外すのは失礼かもしれないが、監督はジャン・ピエロ・ガスペリーニを選択する。ユヴェントスでスクデットを獲ることと、アタランタでチャンピオンズリーグ出場権を争うことでは、やはり後者の方がインパクトは大きい。よって、システムはアタランタの[3-4-3]をベースに考えたい。
まずはGK。カリアリのアレッシオ・クラーニョとユヴェントスのヴォイチェフ・シュチェスニーを選出した。一皮むけた印象のジャンルイジ・ドンナルンマ(ミラン)や安定のサミル・ハンダノビッチ(インテル)らも捨てがたいが、24歳のクラーニョはスーパーセーブの数で何度もカリアリに勝ち点をもたらしている。カリアリの守備のもろさが活躍の場を増やしたきらいはあるが、存在感が非常に大きかった。
シュチェスニーについては、目立ち過ぎなかったことが最大の功績。ジャンルイジ・ブッフォンという偉大な象徴が去ったユヴェントスにおいて、その話題が出る隙を与えなかったことを評価したい。
「セリエA最強DF」との呼び声も高いクリバリ photo/Getty Images
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次にディフェンスライン。ユヴェントスのジョルジョ・キエッリーニは外せない。34歳という年齢が不安材料に見えたが、ブッフォンが去ったことで生まれた責任感がキエッリーニを一回り成長させた印象。キャリアで最高のパフォーマンスという声もしばしば聞かれている。
失点数がユヴェントスに次ぐ少なさであるインテルからはミラン・シュクリニアルをチョイス。マウロ・イカルディ騒動に揺れた今季のインテルにおいて、センターバックとGKが安定していたのは救いだった。その中でも、ファンが未来の主将にと期待しているシュクリニアルは欠かせない選手だ。
インテル次代のリーダーを入れるのであれば、ミランの若きカピターノも忘れてはいけない。ミランもまた難しいシーズンを過ごしたが、アレッシオ・ロマニョーリは冷静だった。「NEXTネスタ」という評判に押しつぶされない働きを見せている。
ナポリのカリドゥ・クリバリは、今季も変わらずハイレベルなパフォーマンスでチームに落ち着きをもたらした。彼を選ばないわけにはいかない。
孤軍奮闘する若手から安定感のベテランまで
ユヴェントスに必要不可欠な存在として躍動したピャニッチ photo/Getty Images
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そして、中盤にもまずはユヴェントスから1人。チームの攻撃の起点であるミラレム・ピャニッチを選出した。得点数は物足りないかもしれないが、3月のナポリ戦で決めた直接FKは、チームをスクデットに大きく近づけた一撃だった。
そんなピャニッチと来季はチームメイトになるかもしれないと言われるフィオレンティーナのフェデリコ・キエーザは、不安定なチームで輝き続けた若手。ロドリゴ・デ・パウルも、ウディネーゼで一人別次元のプレイを見せていた。チームがセリエA残留を成し遂げたとしたら、最大の功労者となるはずだ。
躍進するトリノからはクリスティアン・アンサルディを選出。シーズン序盤は負傷で欠場が続いたが、攻守両面においてインテル時代には見られなかった質の高さを披露している。
ルイス・アルベルトは、ラツィオの攻撃のキーマンとして奮闘。チャンスの起点となり、フィニッシャーとしても活躍し、チームに不可欠な存在だ。今季9アシストで、SPALのマヌエル・ラッザリも一気に評価を高めた。アンドレア・ペターニャのような選手が中に待つチームで相手の脅威になれることを証明している。
サプライズを起こしたストライカーが多数
移籍初年度ながら圧倒的な存在感を放ったC・ロナウド photo/Getty Images
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最後に今季のセリエAを特に盛り上げた最激戦区のFWだ。セリエA1年目にもかかわらず圧倒的な存在感を放ったクリスティアーノ・ロナウドを外すという選択肢はない。不甲斐ない試合をしても、結局エースが決めて勝利……。それが今季のユヴェントスの勝ちパターンの一つだった。彼がいなければ、優勝はここまで早く決まらなかったはずだ。
アタランタのドゥバン・サパタは、チーム飛躍の中心的役割を果たした。チーム総得点でリーグトップが見えているアタランタの攻撃の軸だ。
忘れてはいけないのが、サンプドリアのファビオ・クアリアレッラ。36歳の大ベテランは若手時代からアクロバティックな得点で観る者を魅了してきたが、この年齢になってシンプルなゴールも量産するようになった。4年ぶりのイタリア代表招集は、ご褒美などではなく、正当な評価だ。
ベテランの星がクアリアレッラなら、ニュースターはユヴェントスのモイーズ・キーンだ。19歳という年齢、シーズン後半戦のスーパーサブとしての働き――。イタリアの未来を担
う若者が登場したと、連日イタリアメディアが盛り上がった。
シーズン終盤の失速があったものの、ミランのクシシュトフ・ピョンテクは今季のセリエAにおけるサプライズだった。シーズン前半戦はジェノアでゴールを量産し、後半戦はミランの救世主に。冬の補強でピョンテクを獲得していなければ、ミランの今季はもっと悲惨なものになっていたに違いない。
ローマのステファン・エル・シャーラウィも印象深い。ミランで早くから注目された同選手は、2012-13シーズン以来の2桁得点を達成。シーズン後半の決定力や第33節イン
テル戦で魅せたミドルシュートなどを見る限り、来季はさらに期待できそうだ。
高すぎる要求に見事応えたC・ロナウドを含め、今季のドリームチームはもちろん期待値以上の活躍を見せた選手ばかり。ユヴェントスのスクデットは大方の予想どおりだったが、こうしてみると、各ポジションに安定感を生み出す理由があった。
セリエAでは、チャンピオンズリーグ出場権争いや残留争いが最終節までもつれる見通し。これから滑り込みでベストイレブン入りを果たすようなヒーローが現れるようなチームは、良い形で次のシーズンの準備を始めることができそうだ。
文/伊藤敬佑
イタリア・セリエAの熱に吸いよせられ、2007年、大学卒業と同時にイタリアへ渡る。以後、現地在住のフットボールライターとして、イタリアサッカーを追い続ける。ミラノを拠点に、インテルやミランを中心に取材活動を展開し、現地からの情報を提供している。
theWORLD233号 2019年5月15日配信の記事より転載