[水沼貴史]欧州の強豪クラブで見てみたい! コパ・アメリカで輝いた4人の若手たち

水沼貴史の欧蹴爛漫 031

水沼貴史の欧蹴爛漫 031

縦方向のドリブルだけでなく、鋭いカットインからもゴールを狙えるエべルトン(左) photo/Getty Images

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ネイマールの穴を埋めたエべルトン

水沼貴史です。6月14日に開幕したコパ・アメリカ2019も、いよいよ3位決定戦と決勝戦を残すのみとなりました。この大会のゲームをいくつか解説させて頂きましたが、ペルー代表との準々決勝が終わった直後、PK戦でキックを失敗したFWルイス・スアレス(ウルグアイ代表)が泣き崩れた場面を目の当たりにし、この大会に対する各選手の思いの強さというものを改めて感じました。今回はそんな熱戦が繰り広げられているコパ・アメリカ2019に出場した選手のなかから、ぜひ欧州の強豪クラブで見てみたい選手をピックアップしました。彼らの魅力をプレイの解説を交えながらお話ししましょう。

まず紹介したいのが、ブラジルの名門グレミオに在籍中で、今大会直前に負傷離脱したネイマールに代わりブラジル代表で左ウイングFWを務めているエべルトン(23歳)です。今大会のグループリーグ初戦(ボリビア代表戦)で彼が挙げたミドルシュートでのゴールをご記憶の方も多いでしょう。彼の最大の特長は、縦方向へのドリブルとカットインを状況に応じて使い分けることができる点です。開幕戦とベネズエラ代表との第2戦ではダビド・ネレス(現アヤックス)が左ウイングFWで先発しましたが、縦へのドリブル一辺倒という印象が拭えず、ブラジル代表の攻撃がやや単調に感じました。ひとつの試合のなかで一度縦方向のドリブルを見せておきながら次はカットインするというように、相手DFとの駆け引きがうまいエべルトンが左ウイングに固定されて以降、ブラジル代表の攻撃力が上がったように見受けられます。エべルトンの台頭がブラジル代表の他のアタッカーの良い刺激となっているようにも感じますし、彼のドリブルのキレやスピードは欧州でも十分に通用すると思います。

攻守両面で献身性を発揮するR・エルナンデス(左)と、ドリブル突破に定評があるソテルド(右) photo/Getty Images

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ベネズエラにも気になる逸材が

準々決勝でアルゼンチン代表に敗れてしまいましたが、若手の有望株が多く揃うベネズエラ代表のパフォーマンスには好感が持てました。なかでもブラジルの強豪サントスで現在10番を背負っているMFジェフェルソン・ソテルド(22歳)や、右サイドバックで現在ノルウェーのスタバエクに在籍しているロナルド・エルナンデス(21歳)のプレイが印象に残りました。ソテルドは身長160cmとリオネル・メッシよりも小柄なプレイヤーですが、ドリブルの敏捷性はピカイチで、今大会でも途中出場からベネズエラ代表の攻撃にアクセントを加えていました。欧州には彼ほど小柄でアジリティーの高いドリブラーはそうそういないので、大柄でフィジカルコンタクトに物を言わせるDFが多い欧州リーグであっという間にブレイクするかもしれませんね。いずれ彼が欧州のトップリーグで活躍してくれることを密かに期待しています。

ソテルドと同じく2017年のU-20W杯の準優勝メンバーであり、この大会で久保建英や堂安律がいたU-20日本代表とも対戦したロナルド・エルナンデスは、堅実性が持ち味のDFです。ブラジル代表とのグループリーグ第2戦でもあわや得点というドリブル突破を見せていましたが、テクニカルで攻撃性の高いサイドバックと言うよりも、攻守両面で献身性を発揮できるセサル・アスピリクエタ(現チェルシー)に似たタイプの選手だと私は思います。既に欧州でプレイしていますが、5大リーグの強豪クラブからお呼びがかかるのも時間の問題でしょう。

的確なポジショニングが光ったリカルド・サンチェス(左) photo/Getty Images

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パラグアイの守備を支えたR・サンチェス

最後に私が紹介したいのは、パラグアイ代表のボランチで、自国のオリンピア・アスンシオンというクラブに在籍しているリカルド・サンチェス(23歳)です。彼は準々決勝のブラジル代表戦で[4-4-1-1]の布陣のボランチに入り、バイタルエリアへの侵入を試みる相手MFフィリペ・コウチーニョをマンマーク気味に監視していました。後半の立ち上がりに退場者を出しながらブラジル代表相手にPK戦まで持ち込めたのは、彼の守備力のおかげであると私は思います。ゴールやアシストなどの派手なプレイは少ないのですが、この若さで常に首を振って周囲の状況を確認し、自陣の危険なスペースをいち早く埋めることができる選手は決して多くありません。本来は見づらい自分の背後のスペースもきちんと見れていたことにも驚かされましたし、ブラジル戦では基本的にコウチーニョのマンマークを担いながらも、必要に応じて彼を離してでも自陣の危険なエリアをケアしに行くという臨機応変さも光っていました。追加招集という形でコパ・アメリカに参戦したサンチェスですが、今大会での活躍は欧州クラブのスカウトマンの目にとまっていることでしょう。

どの選手がどの欧州クラブでプレイすると面白いかを私なりに考えたのですが、今はコパ・アメリカで輝いたこの4人を「どのリーグでもいいから早く欧州で見たい」という気持ちでいっぱいです(笑)。今回紹介させて頂いた選手たちが今後どのような成長を遂げるのか。私自身も楽しみにしながらこれからも世界のサッカーの動向を追い続けたいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。


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