[水沼貴史]アーセナルがリヴァプールに勝つために “理想の攻め方”は 

水沼貴史の欧蹴爛漫 033

長短の正確なパスに定評があるダビド・ルイスだが、リヴァプールのハイプレスを掻い潜れるか photo/Getty Images

開幕連勝スタートの2チームが激突

水沼貴史です。2019-2020シーズンの欧州主要リーグが開幕し、プレミアリーグでは序盤戦からビッグクラブ同士の対戦が組まれていますね。8月25日(日本時間)に開催予定のプレミアリーグ第3節では、開幕連勝スタートのアーセナルとリヴァプールが顔を合わせます。限られた予算のなかで効果的な補強を行い、幸先の良いスタートを切ったアーセナルですが、昨シーズンの欧州王者リヴァプールに対しどのように立ち向かうべきでしょうか。今回の試合の見どころやキープレイヤーについてお話ししましょう。

アーセナルがこの試合で最も避けなければならないのは、自陣中央でボールを失うことです。ペナルティエリアの手前、なおかつ中央寄りの場所でボールを奪われると、リヴァプールが得意としている縦に速い攻撃をもろに受けてしまいます。アーセナルとしてはこの試合にむけ、中盤を経由しなくても成立する攻撃というものを用意しておいたほうが良いでしょう。最終ラインからのロングボールでリヴァプールの高い最終ラインの背後を狙う、もしくは最終ラインから素早くサイドにボールを送り、ニコラ・ペペとピエール・エメリク・オバメヤンの両ウイングFWの突破から活路を見出だすのが得策だと私は思いますが、ここで重要になってくるのが、今夏にアーセナルに加わったDFダビド・ルイスの出来です。モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネの3トップを起点にハイプレスをかけてくるであろうリヴァプールに対し、足下の技術に定評があるルイスがどれほど臆せず正確にボールを散らせるか。この試合をご覧の皆さんには、ボールを受けたセンターバックのルイスと、リヴァプールの3トップが繰り広げるであろう熱き攻防にご注目頂きたいです。

リーグ第2節のバーンリー戦で先発出場を果たしたセバージョス。攻守の切り替えの速さが特長だ photo/Getty Images

中盤のキープレイヤーは

先ほどご説明した攻め方を貫くには、相手最終ラインの背後を突くランニングが得意なオバメヤン、ペペ、アレクサンドル・ラカゼットを3トップに置き、彼らに攻め残りさせるのがベストだと思います。まだシーズン序盤ですし、「この試合を落とすと上位進出が絶望的」という状況でもありませんので、強敵リヴァプールが相手とは言え、アーセナルには攻撃的な姿勢を貫いてほしいですね。布陣も3バックや5バックといった守備的なものではなく、[4-3-3]で良いのではないでしょうか。

今夏にアーセナルに加わった面々のなかで今のところ好印象に映っているのが、17日のリーグ第2節(バーンリー戦)で先発出場を果たしたMFダニ・セバージョスです。同じくトップ下を主戦場としているメスト・エジルと比べ守備がうまいという印象を受けましたし、攻守の切り替えも速いなと感じました。実際に、バーンリー戦の決勝ゴールはセバージョスの鋭い出足によるボール奪取から生まれています。

また、ボールを持った際に自分が理想とするリズムやテンポにこだわる傾向が強いエジルに対し、セバージョスからは簡単にボールを捌くべきシチュエーションではいち早く味方へのパスを選択するという、球離れの良さが窺えます。速攻の打ち合いが予想されるリヴァプール戦では、セバージョスの強みである素早い攻守の切り替えや球離れの良さが活きそうな感じがしますし、3トップとセバージョスを起点にハイプレスを仕掛ければ、リヴァプールの最終ラインや中盤を慌てさせることも可能だと思いますが! 多くの新戦力を加えたアーセナルのサッカーが、欧州屈指の完成度を誇るリヴァプールを相手にどこまで通用するのか。私としてはこのような視点で今回のビッグマッチを見守りたいと思います。    

ではでは、また次回お会いしましょう!

※プレミアリーグ第3節、リヴァプール対アーセナルの一戦は日本時間8月25日(日)の午前1時30分にキックオフ!


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。



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