[粕谷秀樹]ビッグクラブのエゴってハンパじゃないから ポチェッティーノは焦らずに……

粕谷秀樹のメッタ斬り 023

粕谷秀樹のメッタ斬り 023

今季苦戦を強いられ、トッテナムの指揮官を解任されたポチェッティーノ photo/Getty Images

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ステップアップを目論みながら

潮時だろうがなかろうが、区切りをつけなきゃいけないときがある。人生なんかそんなものさ。

現地時間11月19日、トッテナムはマウリシオ・ポチェッティーノを解任した。まぁ、そう長くはないと思っていたよ。 前々回のコラムでも報じたように、今シーズンの彼らは信頼関係がグチャグチャだったからね。忠誠を誓った選手がいれば、ステップアップを目論みながら失敗した者もいる。考え方が違う。うまくいくはずない。強化プランを巡り、ポチェッティーノとダニエル・レヴィ会長も対立していたので、収拾がつかなくなった。

ただ、人が動くとすれば来年1月の移籍市場しだい、と予想していた。トッテナムではプレイしたくない選手を放出し、ポチェッティーノのもとに再建する。あるいは新戦力を獲得できず、監督が代わるってね。ところが、寒い冬が来る前にポチェッティーノが切られた。やっぱり、サー・アレックス・ファーガソン(元マンチェスター・ユナイテッド監督)の指摘は正しかってことなのかなぁ。
「チームは4年周期」

ポチェッティーノ体制は5シーズン目だったね。

トッテナムを支えてきたポチェッティーノとコーチ陣たち photo/Getty Images

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企業防衛の手段としては当然だ

さて、トッテナムの新監督にジョゼ・モウリーニョが就任したものだから、みんな大騒ぎしている。相変わらずの人気だ。おいおい、ちょいと待っとくれ。新監督の話題ばかりじゃなく、ポチェッティーノの就職先も探った方がよくはないか。

レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダンは求心力が低下している。ナポリを率いるカルロ・アンチェロッティの立場も危うく、ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャールはつねに危険と隣り合せだ。3チームとも、ポチェッティーノを次期監督にリストアップしている公算大ね。

ここで問題になるのは、トッテナムを解雇されたとき、どのような条件を提示されていたかなんだな。契約は4年半以上も残っていたので、ポチェッティーノには違約金が支払われる。ヘスス・ペレス、ミゲル・ダゴスティーノ、トニ・ヒメネスといったコーチングスタッフの分も含め、30億円前後の出費になるようだ。

その代償として、国内外を問わず、2020年7月1日までは他クラブと契約してはならない。あるいは、今後1年間はプレミアリーグの監督に就任してはならない……みたいな縛りも考えられる。

レヴィ会長が、契約でポチェッティーノをブロックしていたとしても不思議ではないし、企業防衛の手段としては当然じゃん。この人の力量はだれよりも分かっているから、とくに国内のライバルには渡さないでしょ。あっ、どこかのだれかさんがバカげた額のカネを支払い、契約を無効にした場合はまた別の話ね。

113勝43分46敗/勝点382/勝率55・9%。プレミアリーグ通算のデータを踏まえても、ポチェッティーノは引く数多だ。色よいオファーも届いているだろう。でも、焦っちゃダメだ。ビッグクラブのエゴってハンパじゃないからね。現場復帰は、就職先の内情を十分に調査してからでも遅くないよ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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