[粕谷秀樹]アーセナルの次期監督はマルセリーノが最有力 復活には多少の痛みも覚悟せよ

粕谷秀樹のメッタ斬り 024

現在、暫定指揮官としてアーセナルを率いるユングベリ監督(右)photo/Getty Images

英語力は基準を満たしているか

ウナイ・エメリを切り、若手とサポーターに人気があるフレドリック・ユングベリを新監督(暫定)に起用したにもかかわらず、アーセナルはリフレッシュできていない。エメリの時代の悪いイメージを引きずっている。一時しのぎではない新監督を、一刻も早く決めた方がいいね。

イギリスの高級紙『THE TIMES』は「新監督候補を12人リストアップ」と報じていた。ブレンダン・ロジャーズ、ミケル・アルテタ、パトリック・ヴィエラ、エディ・ハウ、カルロ・アンチェロッティ、ラファエル・ベニテス、ヌーノ・エスピリト・サント、マルセロ・ガジャルドといった現職から、マッシミリアーノ・アッレグリ、マウリシオ・ポチェッティーノ、マルセリーノ・ガルシアのフリーランスまで豪華なラインアップだ。そうそう、ユングベリも候補のひとりらしい。

エメリの失敗を踏まえると、英語力は絶対に必要だよ。英語はしゃべれて当然、みたいな感覚で接していた選手に問題があるとしても、やっぱりコミュニケーションを欠くとうまくいかない。ガジャルド、アッレグリ、マルセリーノは不安だな。英語力が基準を満たしているとは思えないからね。

次は経済面。現職を引き抜くと違約金が発生する。いま、エメリに違約金を支払っている。支出が増えるばかりだ。ロジャーズ、アルテタ、ヴィエラ、ハウ、アンチェロッティ、ベニテス、サントが消えた。

残る選択肢はポチェッティーノとユングベリだけだ。トッテナムの前監督はありえないでしょ。ファンの感情がエスカレートして暴動が起きる。じゃぁ、ユングベリで手を打つ? いや、やっぱり監督経験者が欲しいから、英語力の基準を落とすとか、少しでも支出をカバーするプラン……数人の選手を換金するとかね。多少の痛みは覚悟しなくちゃ。

かつてビジャレアルやバレンシアなどを率いた経験があるマルセリーノ photo/Getty Images

ポチェッティーノは危なすぎる

さて、『THE TIMES』は次のようにも報じているんだ。「新監督の候補者とはすでに面談を始めている」。ってことは現職ではないよね。他クラブと契約中の監督、選手との接触は基本的に禁じられているわけだからさ。すると候補者は限られ、アッレグリとマルセリーノが再浮上してきた。くどいけれどポチェッティーノはセキュリティの都合上、危なすぎる。

アッレグリは「今シーズン中の現場復帰は考えていない」と、『ESPN』のインタビューに応えていた。こうして、マルセリーノが最有力になった。スペインでも指折りの戦術家で、[4-4-2]を好む。どちらかといえば守備的だ。ん? アーセナルのアイデンティティにそぐわないじゃん。

いや、悪くない人選だ。個人的にはアルテタとかヴィエラとか、OBが率いるアーセナルを見たかったけれど、シーズン途中の監督招聘はなにかと制限がある。そのなかでマルセリーノが来てくれるのなら、「ラッキー」って手を叩いたほうがいいと思うよ。そして上層部は、おそらく不安なマルセリーノの英語力をカバーするために、労力を惜しまないこと。シーズン中に同じミスを二度犯したら、お笑い種だからさ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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