3人目は今やFC東京のボランチとして定着し、日本代表の常連となりつつあるMF橋本拳人(26歳)です。以前はボールホルダーに寄せるプレイ一つをとっても自分の決断に確信を持てていない印象があったのですが、長谷川健太監督が2018年に就任し、堅守速攻型のサッカーがFC東京に根付いて以降、プレイに迷いが無くなったように見受けられます。
特に今年はボランチでコンビを組む髙萩洋次郎が前線でチャンスメイクを担い、そのことによって生じる中盤のスペースを橋本が埋めるという役割分担ができていました。自分の役割が明確になったことで、自信を持ってプレイできるようになったのかもしれませんね。ボランチでの出場を重ねるにつれボールホルダーに寄せるべきかスペースを埋めるべきかの判断が的確になりましたし、“縦に速く攻める”という約束事がチーム内で徹底されていたので、橋本自身の不必要なバックパスも減りました。時折見せる前線への飛び出しも攻撃面で効果的だったと思います。彼のボール奪取力であったり、前への推進力がワールドクラスの猛者たちを相手にどこまで通用するかを、私自身見てみたい気がします。
どの選手がどの欧州クラブでプレイすると面白いかを私なりに考えたのですが、ナショナルチームで一定数以上の試合に出ていないと労働許可証がおりにくいイングランド(プレミアリーグ)のクラブへいきなり移籍するのは、リスクが高いかもしれませんね。もし海外移籍をするのであれば、かつてマインツからレスターへ渡った岡崎慎司やレヴァークーゼンからトッテナムへ移籍したソン・フンミン(韓国代表)のように、一度ブンデスリーガで経験を積むのがベターなのではないでしょうか。
まず橋本についてですが、フランクフルトでプレイする姿を見てみたいですね。今のフランクフルトの陣容に目を向けると、自陣と敵陣を行き来し、攻守両面で貢献できる“ボックス・トゥ・ボックス型”のMFが見当たりません。長谷部誠は最終ラインで起用されることが増えていますし、ジェルソン・フェルナンデスやルーカス・トロも守備面での貢献は見込めますが、ボランチの位置から前線へ飛び出すことがあまりなく、攻撃面で物足りません。ボールハントだけでなく、前線への飛び出しも得意としている橋本が加われば、厚みに乏しい今のフランクフルトの攻撃が改善されるような気がします。トップ下で起用されることが多い鎌田大地との絡みにも期待したいです(笑)。
仲川はアリエン・ロッベンやフランク・リベリ(元バイエルン・ミュンヘン)のように独力で全てを解決するというよりは、優れたパサーや攻撃的なサイドバックとの連係を大事にするタイプのウインガーです。これらの人材に恵まれているドルトムントやシャルケあたりであればフィットできそうですし、彼のスピードをもってすれば、この2クラブの縦に速い攻撃に適応できると思います。古橋についてはRBライプツィヒが合うかもしれませんね。相手最終ラインとの駆け引きが上達した彼であれば、ライプツィヒの十八番であるカウンターを完結してくれそうですし、彼は守備面でのハードワークも厭わないので、このクラブが以前から掲げているハイプレスのサッカーに適応できそうです。
私の希望的観測はさておき、今回名前を挙げさせて頂いた3人を含むJリーガーたちが、来年も光り輝いてくれることを願っています。新たなスターの誕生を楽しみにしながら、今後もJリーグの発展を見届けたいです。
ではでは、また来年お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
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