[MIXゾーン]天皇杯決勝で痛恨のミス 鹿島の犬飼は「右足か左足かで迷った」

神戸の藤本(左)とマッチアップする鹿島の犬飼(右) photo/Getty Images

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勝負の世界にタラ・レバは禁句も、2失点目がなければ……

第99回天皇杯全日本サッカー選手権大会の決勝が1月1日に国立競技場で開催された。対戦カードは神戸×鹿島で、初優勝を狙う神戸の挑戦を常勝軍団である鹿島が受けて立つという構図だった。しかし、これは過去の両チームの戦績から判断した展開予想であり、いざ試合がキックオフされると過去は関係ないことが徐々に明らかになっていった。「前半は相手の3バックのシステムに対してプレッシャーをかけられなかった」と振り返ったのは、鹿島の犬飼智也である。

この日の神戸戦に限らず、昨シーズン終盤から鹿島は3バックの相手との対戦を苦手としていた。「ミスマッチとよく言われる。ミドルゾーンでのプレスをかけるときに普段はスライドしながらコンパクトさを保っているが、最終ラインを押し上げられないときがある」(大岩剛監督)と振り返ったとおり、天皇杯準決勝でも3バックだったJ2長崎を相手に苦戦していた。こうした状況は鹿島も把握しており、天皇杯決勝の神戸戦を前にもちろん対策していた。しかし、相手の勢いに押され、うまく対応することができていなかった。

「3バックの相手のサイドハーフに対して、なかなかプレッシャーをかけることができなかった。同時に、最終ラインも下がってしまった。ムリしてでも最終ラインを上げるのか、もっと中盤から厳しくプレスにいかせるのか。判断をはっきりしないといけなかった」
試合後にこう振り返ったのは犬飼智也である。優勢なのは神戸で、鹿島は劣性を強いられていた。しかし、こうした状況を耐え凌ぎ、数少ないチャンスをモノにして勝利につなげてきたのが“常勝”と呼ばれる鹿島である。18分にオウンゴールで先制点を許したが、この時点ではまだ勝敗の行方はわからなかった。その後は一進一退の攻防となり、鹿島が敵陣のゴール前に迫ることもあった。そうした流れのなか、勝敗を左右する決定的な得点が生まれた。ゴールネットを揺らしたのは、神戸の藤本憲明だった。

右サイドから西大伍がクロスを入れる→ゴール前でクリアしようとした犬飼智也が痛恨のクリアミスを犯す→後方に走り込んでいた藤本憲明にボールが当たり、鹿島ゴールへ……という流れで生まれた追加点だった。

「個人的に2失点目は明らかに自分のミスでした。1点差のままなら、いろいろなことが考えられました。本当に悔いが残る失点でした……」

サッカーにアクシデントは付き物で、1失点は仕方ないという考え方がある。大事なのは追加点を許さないことだが、この日の鹿島はあまりにも簡単に2点目を許してしまった。そして、2点差となったのは大きく、その後の神戸は各選手が身体を張った粘り強い守備をみせた。勝負にタラ・レバは禁句だが、鹿島にとっては1点差のまま試合が進んでいれば……と悔やまれる結果となった。

「(どう対応すればよかったか?)シンプルにミスなので、どうすればというよりも、自分のミスです。サイドからあのようなボールが来るのはわかっていました。右足を出すか、左足を出すか少し迷った部分がありました。しっかり当てて、クリアしないといけなかったです」

試合後、犬飼智也は反省を口にしていた。後半になって相手のシステムに合わせて鹿島も[3-4-3]に変更し、猛攻を仕掛けた。しかし、最後までゴールを奪うことができず、試合は2点差のまま終了している。だからこそ、悔いが残る失点となってしまった。とはいえ、勝負の世界は残酷で、なにが勝敗を分けるか誰にもわからない。この日はわずかな判断ミスが勝敗に大きな影響を与えたが、長くサッカーをプレイしていれば誰にでもミスはある。というか、一試合のなかで多くのミスが生まれているのがサッカーである。

「(この日で退任する大岩監督には)これまでいっぱい言われてきました。最後に一緒にタイトルを取りたかったので、それが一番悔いとして残ります。センターバックとしての立ち振舞いは、常々言われてきました。今日のように失点したあとでも、決して集中を切らせてはいけない。やり続けないといけない。(大岩)剛さんには監督と選手というより、同じセンターバックとしていろいろと教えてもらいました。これからの成長をみせることで、教わったことを表現していきたいです」

人は痛みや失敗を知っているほうが強くなれるという。ならば、サッカー選手も同じはず。ひとつの敗戦、ひとつのミスからなにを掴み取るかが大事なのは間違いない。

取材・文/飯塚 健司


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