“ペップ流”MIXのアーセナルでエジルも輝く アルテタの大改革が面白い

アーセナルはここから浮上するか photo/Getty Images

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超アグレッシブな3試合

ミランやレアル・マドリードなどビッグクラブでの経験も豊富な名将カルロ・アンチェロッティか、それともアーセナルの哲学を知るOBのミケル・アルテタか。昨年11月29日にウナイ・エメリを解任したアーセナルでは、対照的な2人の指揮官が後任候補としてリストアップされていた。

実績で判断するならばアンチェロッティが圧倒的に上だが、アーセナル上層部は経験の浅いアルテタに賭ける判断を下した。リスクのある選択なのは間違いないが、この賭けが予想を超えるヒットに繋がるかもしれない。

驚きだったのは、アルテタが就任から思い切って自分のアイディアをチームに植えつけたことだ。特にビルドアップの部分には手を加えており、スタート時の[4-2-3-1]から選手の配置を大きく動かして相手のプレスを巧みにかわしている。
その1つがボーンマス戦、マンチェスター・ユナイテッド戦でボランチに入ったMFグラニト・ジャカをビルドアップ時に左サイドバックの位置へ下げる動きだ。ジャカが左サイドバックの位置に入る代わりに左サイドバックの選手が高い位置を取り、ビルドアップ時に3バックのような形となる。さらに右サイドバックのエインズリー・メイトランド・ナイルズが中へ絞ってボランチの位置へと入るのだ。

メイトランド・ナイルズが中へ絞る動きはマンチェスター・シティ指揮官ジョゼップ・グアルディオラも採用する「偽サイドバック」の動きであり、2016年より3年間マンCのアシスタントコーチを担当してきたアルテタがさっそくグアルディオラ流を取り入れてきたわけだ。

1日にはマンUを2-0で粉砕したが、マンUの方はこの動きに明らかに戸惑っていた。左サイドではサイドバックのセアド・コラシナツが高い位置を取り、左ウイングのピエール・エメリク・オバメヤンが中へ絞ってくる。この動きに対してどう対処すべきか混乱しているシーンが何度かあり、左サイドではアーセナルが数的優位を作るケースがしばしば見られた。

上手くいけばコラシナツ、オバメヤン、トップ下で先発したメスト・エジル、右ウイングのリース・ネルソン、最前線のアレクサンドル・ラカゼットと5枚が攻撃に絡むことになり、前線に厚みが生まれる。

アルテタは守備時にも[4-4-2]をベースに陣形をコンパクトに保ち、高い位置から相手のパスコースを限定する積極的なプランを採用している。攻守両面で変化があり、僅かな期間でここまで手を加えてきたのは驚きでもある。まずは様子見とばかりに前任のやり方を尊重していくタイプの指揮官もいるが、アルテタの姿勢は想像以上にアグレッシブなものだった。

選手起用の方では、エメリの下でポジションを確保しきれていなかったMFメスト・エジルを3試合連続で先発起用。エジル本人も新指揮官の下で気合が入っているのか、ここ3試合のパフォーマンスレベルは非常に高い。英『sky SPORT』の紹介したデータでは、1日のマンU戦でエジルはチーム最長となる11.53kmもの走行距離を記録している。どこかエジルは走らない選手と誤解されている部分もあるが、この数字がモチベーションの高さを証明していると言えよう。

またチャンスメイクの方では、初陣となった12月26日のボーンマス戦にて75分間の出場ながら今季最多タイとなるキーパス数(シュートへ繋がるパス)4本を記録(『Whoscored.com』調べ)。攻撃面でエジルは自由を与えられており、中央から右サイドと幅広く顔を出しながらチームの攻撃を巧みに組み立てている。エメリ政権時とは大きく異なるエジルの姿だ。

就任からの3試合はボーンマス、チェルシー、マンUとなかなかハードな日程で、1勝1分1敗でスタートしたのはまずまずと評価していいはずだ。チェルシー戦は先制されながら逆転される残念な展開ではあったものの、前半はアーセナルのペースでゲームを動かせていた。サポーターもアルテタ政権の可能性に期待をかけているに違いない。

もちろん指揮官としての経験が浅いため、このままアーセナルを高みへ導けるかは分からない。まだ賭けが上手くいくと決まったわけではないが、グアルディオラ流も取り込む攻撃的なアルテタがアーセナルを劇的に変える可能性も考えられる。アンチェロッティを選択していれば、ここまで大きな変化はなかったかもしれない。エメリ解任でアーセナルを包む空気は重かったが、アルテタ政権での3試合で一気に明るいムードへと変わってきている。

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