「セリエAほどゴールが少ないリーグはない」
以前こう語ったのは、ユヴェントスでプレイしていた元アルゼンチン代表FWカルロス・テベスだ。イタリア・セリエAは守備を第一に考えるチームが多く、下位クラブでも細かい守備戦術を敷いているチームも多い。FWにとって得点量産が難しいリーグと言われてきたのだ。
しかし今季ここまでの戦いはどうだろうか。主役になっているのはDFではなく、守備組織を破壊してしまう強烈なストライカーたちだ。大量得点が入るゲームも珍しいものではなく、今のセリエAは攻撃力が1つの注目ポイントになっている。
何と言っても目立つのはラツィオFWチーロ・インモービレの快進撃だ。ここまでリーグ戦で23得点を記録しており、狙うは2015-16シーズンに現ユヴェントスFWゴンサロ・イグアインがナポリ在籍時に達成したリーグ戦36得点のセリエAシーズン歴代最多得点記録更新だ。今のペースならば達成も不可能ではなく、セリエAのDFたちもインモービレの対応に四苦八苦している。
そのインモービレを怒涛のペースで追い上げるのが、ユヴェントスFWクリスティアーノ・ロナウドだ。序盤はおとなしかったのだが、昨年12月1日のサッスオーロ戦より突如として爆発。現在はリーグ戦7試合連続得点中で、得点数も16まで伸びてきた。ロナウドもリーグ制覇とともに自身初のセリエA得点王を狙っているはずで、インモービレの独走を許すつもりはないだろう。
昨季はサンプドリアのベテランFWファビオ・クアリアレッラが26得点を挙げて得点王に輝いたが、インモービレはもちろんロナウドもこのペースならば30点を超えてくる可能性がある。今季の得点王レースは昨季と比較にならないほどハイレベルだ。
インテルのゴールデンコンビも忘れてはならない。14得点を挙げて得点ランク3位につけるFWロメル・ルカク、10得点を挙げるFWラウタロ・マルティネスとのコンビネーションは、欧州最高の完成度と言っても大袈裟ではない。サイズを活かしてボールを強引に収めてしまうルカク、それに合わせて最終ラインと巧みな駆け引きを見せるマルティネスのコンビは理想的な組み合わせだ。ルカク目掛けて単純なロングボールを放り込むパターンも目立つのだが、1対1のデュエルでセリエAの守備陣はルカクに勝ち切ることができない。マルティネスはドリブルも優れているため、この2トップは地上と空中の両方を支配できてしまう。2人だけでフィニッシュまで持ち込むことも可能で、インテルがスクデットを獲得した場合はこの2人をセリエAの歴史に名を刻む黄金2トップと評価してもいいだろう。
さらにイタリアサッカー界にとってポジティブなのは、2人のイタリア人アタッカーに復調の兆しが見えていることだ。1人は2016-17シーズンにセリエAで26得点を記録し、NEXTスター候補と呼ばれるようになったトリノFWアンドレア・ベロッティだ。
当時のシーズンこそ印象的だったが、ベロッティが大ブレイクしたのはあのシーズンだけだ。続く2017-18シーズンには10得点まで落ち、昨季も15点止まりだった。ところが今季はすでに9得点を挙げており、2017-18シーズンの得点数を超えてくるのは確実だ。2016-17シーズン以来の20得点超えも目指せるはずで、EURO2020を前にイタリア代表のベロッティが得点量産モードに入ってくれると心強い。欧州予選でも7試合で4得点を挙げていたため、インモービレと同じくイタリア代表の点取り屋になることが求められている。
もう1人は、ベロッティに並ぶ9得点を挙げているサッスオーロFWドメニコ・ベラルディ。現在25歳のベラルディは、2014-15シーズンにリーグ戦15得点を記録してブレイクしたアタッカーだ。そのままスタープレイヤーへと成長していくと期待されていたのだが、二桁得点を記録したのは2014-15シーズンが最後だ。
ややセリエAの中でも影が薄くなっていたのだが、すでに9得点を挙げている今季は二桁得点達成が確実だ。主に右のウイングを主戦場としている選手で、ベラルディの復調もイタリア代表にとって大きなプラスになることは間違いない。
しかも26歳のベロッティ、25歳のベラルディは年齢的にチームでも中堅世代となり、ともにクラブではゲームキャプテンを務めるケースが増えている。精神面でも成長しており、EURO2020へイタリア代表FW陣が結果を残しているのは非常に楽しみだ。
他にはセリエA得点数No.1クラブのアタランタで異彩を放つFWヨシップ・イリチッチ、インモービレに次ぐペースとなる87分に1点を決めている同じくアタランタFWルイス・ムリエルなど、今季のセリエAはアタッカー陣が面白い。ルカク、ロナウドらスター不足と言われてきたセリエAに実力あるFWがやってきていることも大きく、もはやセリエAを得点が入らない面白味に欠けるリーグとは言えなくなってきている。
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