16強の顔ぶれを見て「アタランタかリヨンか、まあ、バレンシアでもいいか」と対戦を“希望”したその他のチームのファンは、おそらくかなり多かったに違いない。
しかし“非メガクラブ”と侮るなかれ。おそらくその算段は間違っている。アタランタもバレンシアも、16強のみならず8強にさえ勝ち上がる力を十分に備えている。だから奇しくも“ナメられた両者”の直接対決となったこの対戦は、きっと面白いゲームになるに違いない。
アタランタは今、イタリアで最も“完成度”が高いチームと言えるだろう。
3バックシステムと“オールコート・マンツーマン”の使い手である指揮官ジャン・ピエロ・ガスペリーニが率いて4年目。オフのたびに主力選手を引き抜かれながら、しかしピッチのクオリティをまったく落とすことなくチーム戦術はいよいよ完成の域に達した。
特長はなんといってもマンツーマンをベースとする守備だ。アタランタの面々は、パスコースを限定したり、サイドに追い込んだり、前を向かれないための“中途半端な守備”をしない。そのエリア、そのタイミングで自分がマークにつくべき相手にボールが入ったら、必ずボールを“奪い取る守備”を実行する。
特に今シーズンは、3バックの中央に位置するホセ・ルイス・パロミーノのプレイを見てほしい。相手のCFに入るクサビのパスに対し、まずは相手の前に入ってインターセプトを狙い、それができなければトラップ際に足を出して引っ掛ける。もちろん彼だけでなく、すべての選手が1対1のシチュエーションで相手を上回ろうとする守備こそが、ガスペリーニが率いるチームの最大の特長だ。
もちろんそうした特徴的な守備は、“最も効果的な攻撃への切り替え”を目的としている。相手が前がかりになる縦パスを奪い、そのままスピードを上げてカウンターにつなげる。重要なのはボールを奪った瞬間に周囲の選手がどのようなアクションを取り、派生的により多くの人数をかけてボールをゴールに運ぶか。時間をかけてその精度を高めきった結果として、アタランタは戦術にうるさいイタリアでも特に連動性と組織性に優れたチームとなった。
守備のキーマンは先述のとおりパロミーノだ。失点パターンはこのエリアでの1対1の駆け引きに負けること。CLグループステージではマンチェスター・Cのセルヒオ・アグエロに、国内リーグのユヴェントス戦ではゴンサロ・イグアインとのマッチアップにパロミーノが“ボロ負け”を喫し、失点を重ねた。最も失点に直結しやすい最終ラインでの1対1の負けは、そのまま失点につながると考えていい。それだけのリスクを負ってマンツーマンの勝負に勝とうとするから攻撃の迫力が増す。
攻撃のキーマンは1トップのドゥバン・サパタと2列目に位置するアレハンドロ・ゴメス、ヨシップ・イリチッチの3枚看板だ。サパタの突進力と決定力は今や欧州屈指のレベル。そのカウンターが停滞しても、ゴメスとイリチッチの抜群のキープ力があるから簡単にボールを失わない。彼ら2人は攻撃面では自由を与えられており、最終ラインと中盤のハーフスペースに下りて組み立てに加わることもあるし、サイドを入れ替えたり中央でプレイすることもある。いい意味での“自由さ”が、アタランタの攻撃をカウンター一辺倒にせず、相手にとっては実に的を絞りにくい。