[特集/史上最高のCLラウンド16 07]ユーヴェの敵は己自身 攻撃的トリデンテがカギ

対照的なシーズンを送っている両チーム

対照的なシーズンを送っている両チーム

5度の欧州制覇を経験しているC・ロナウド。今季こそユヴェントスの悲願を叶えられるか photo/Getty Images

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 チャンピオンズリーグのラウンド16でユヴェントスはリヨンと対戦する。悲願のビッグイヤーを目指すイタリア王者は、圧倒的なアドバンテージがあるはずだ。ただ、使い古された表現をすれば、「チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに楽なカードは存在しない」。落とし穴は仕掛けられているか。存在するのであれば、どこにあるのか。大一番を予想してみよう。

 まずは今季の両チームの比較だ。ユヴェントスはセリエAでインテルと並んで首位でクリスマス休暇を迎えた。一方のリヨンはリーグ・アン(第19節終了時点)で12位と不振を極めている。どちらが有利かは考えるまでもない。ラウンド16抽選会の翌日、イタリア紙はこぞって「良い抽選結果」と、このカードを歓迎した。

 チームの現状もユヴェントスに分がある。DFジョルジョ・キエッリーニはあと2カ月ほどピッチに戻れない見通し。ベテランCBが間に合わないとすれば痛い。ただ、同選手の負傷は8月末のこと。ユヴェントスはディフェンスリーダー不在でもセリエAで順調に勝ち点を重ねた。
 対するリヨンは、主力のFWメンフィス・デパイが12月に負傷し、今季中の復帰が難しいとのこと。こにより、ユヴェントス守備陣が特に警戒すべきはムサ・デンベレに絞られることが予想される。

 キエッリーニを欠くユヴェントスと、デパイを欠くリヨン――。どちらがチームにとってより大きな痛手であるかも明白。もちろん、実際の対戦までに負傷者が出たり、移籍市場で大きな動きがある可能性はある。それでも、両チームのこの差は1ヶ月半程度で逆転するようなものではないはずだ。

 戦力面での違いは明らか。ユヴェントスが目標に一歩近づくためにすべきことは、「本来の力を発揮すること」だろう。

 そのためにまず注目されるのは、マウリツィオ・サッリ監督の選択だ。[4-3-1-2]を採用する指揮官は、ある程度形が決まっている。その中で前線2人の組み合わせをクリスティアーノ・ロナウド、パウロ・ディバラ、ゴンサロ・イグアインの中から選んできた。

 しかし、前半戦の終盤に周囲からの期待の声が大きかった3人を同時起用する「トリデンテ」を採用。これがうまくハマったことで、選択肢が増えている。

 もともとエンポリ時代に組織的な守備が高く評価されたサッリ監督は、トップ下の位置に攻撃だけの選手を置くことをリスクと捉えてきた。しかし、フェデリコ・ベルナルデスキが攻守両面でしっくりこなかったこともあり、指揮官はコンスタントに結果を残してきた3人の同時起用を選択肢に含めるように。「対戦相手次第」と繰り返し語り、トリデンテ採用に慎重な姿勢を続けるサッリ監督だが、状況に大きな変化がなければ、敵地での1stレグから攻撃的な布陣で仕掛ける可能性があると予想する。

 セオリーどおり、敵地での1stレグを慎重に戦った結果、0-0などで折り返してしまうと、2ndレグはアウェイゴールで一気に状況が悪くなる恐れがある。それをリスクと捉えた場合、1stレグでアウェイゴールを奪って逃げ切るという選択肢をチョイスしてもおかしくない。

精神面の強さを示し落とし穴を回避へ

精神面の強さを示し落とし穴を回避へ

今季もリヨンの攻撃を支えてきたデパイだが、昨年12月に靭帯断裂の大怪我を負った photo/Getty Images

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 チャンピオンズリーグ制覇に懸ける熱意もユヴェントスが上。近年セリエAで圧倒的な強さを示してきた彼らは、1995-96シーズンを最後に遠ざかっている欧州王者の座を渇望している。この数年は手が届きそうなところまできていただけに、これまでの悔しさが与えるモチベーションは計り知れない。これは精神面で大きな武器だ。

 実際、今季のユヴェントスのパフォーマンスが圧倒的なものかと問われたら、多くの人はノーと答えるだろう。ただ、それはあくまでセリエAでのユヴェントス。“本命”であるチャンピオンズリーグでは、また違った姿を見せられる。グループステージ第5節のアトレティコ・マドリード戦では、明らかにギアが入れ替わった。ユヴェントスの真の姿はこちらと考えた方がいい。このときはまだクリスティアーノ・ロナウドの調子が悪かったものの、1-0で勝利を収めている。エースの調子が上がっているこれからであれば、さらに強力なユヴェントスが出現するかもしれない。

 ただ、その真の姿は、意図して出せるものではない。そこに落とし穴の可能性を感じることも確かだ。表向きは油断できないと繰り返しながらも、脳が格下と認識してしまうと、気の緩みは自然と生じる。ユヴェントスに限ったことではないが、イタリアのクラブは特にその傾向が顕著だ。


文/伊藤 敬佑

※電子マガジンtheWORLD241号、1月15日配信の記事より転載


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