[粕谷秀樹/プレミア・ポジション別BEST5]雀百まで踊り忘れず……。ギグスはプレミアリーグ史上最高のドリブラーだ

粕谷秀樹のメッタ斬り 035

粕谷秀樹のメッタ斬り 035

タイプは違うものの素晴らしいドリブルを披露するトラオレ(左)、アザール(中)、サンチェス(右)photo/Getty Images

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フェイクを用いずトラオレ走る

〈プレミア・ポジション別BEST5〉の2回目はドリブラー編。早速キックオフしよう。ちなみに今回も、順位の決定基準は個人的思考が色濃く反映されている。

第5位はウォルバーハンプトンのアダマ・トラオレだ。走る走る、さらに走る。フェイクは用いず、ただひたすらスピードとパワーで突破してしまうのだから、まさに規格外だ。しかも今シーズンは、足もとのボールコントロールが柔軟になってきた。当然、ボールロストも少なくなる。トラオレのドリブルはだれにもコピーできない必殺技だ。プロの成せる業、といっていいんじゃないかな。

さて、チェルシーに多くのタイトルをもたらしたエデン・アザール(現レアル・マドリード)を第4位にしよう。緩急のリズム変化でマーカーを幻惑し、スペースを見つける感覚も独特だった。プレミアリーグの大型DFを手玉に取った左サイドからのカットインも、彼の持ち味だな。公称175センチ(たぶんサバを読んでいる)でありながら、体格のハンデをいっさい感じさせなかったね。
続いて第3位。首、傾げるかな。それとも「たしかに~」と膝を打ってくれるかな。アレクシス・サンチェス(現インテル・ミラノ)だ。スピードがあってキレもある。アーセナルでプレイしていた当時、とくに14-15シーズンからの3年間は凄まじかった。彼を止める手段はファウルしかなかったでしょ。しかも体幹が強いから、そう簡単には倒れない……というか、倒れる位置を計算しながらドリブルするようなケースもあった。

プライベートの問題とか度重なるケガとか、この2~3年は精彩を欠いているけれど、完全復活を待っているファンも少なくないと思うよ。このまま終わるような選手じゃないよね。

アーセナルのレジェンドであるオーフェルマルス(左)とユナイテッドのレジェンドであるギグス(右)photo/Getty Images

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オーフェルマルス対策は難しい

第2位はマルク・オーフェルマルスだ。1990年代後期のアーセナルで大活躍したウイングね。一瞬の隙を見てマーカーを出し抜いたり、スピードで圧倒したり、対策を立てるのが難しいドリブラーだった。

また、高度なボールコントロールでも相手DFを悩ませていた。一対一に絶対の自信を持っていたガリー・ネビル(元マンチェスター・ユナイテッド)でさえ、最もやりづらかった相手のひとりにオーフェルマルスを挙げている。ひとを滅多に褒めない男の高評価は、この上ない勲章だよ。

さぁ、いよいよ第1位だ。もう、分かっているよね。はい、そのとおりです。ライアン・ギグス! 彼にまさるドリブラーはユナイテッド……いや、プレミアリーグにはまだ存在しない。

超絶技巧を持っていたわけではなく、トラオレのような規格外のスピードもパワーもなかった。しかし緩急の変化、マーカーとの間合いの図り方、小刻みなボールタッチなどを駆使し、相手DFを翻弄した。さらに68キロという痩身を補うため、ヨガを採り入れたコンディション調整にも余念がなかった。

晩年は二列目に下がってゲームメイクもしていたけれど、時おり見せるドリブルの切れ味は、最後の最後までギグスだったなぁ。まさに〈雀百まで踊り忘れず〉。今日はこれから、彼の名場面集を堪能しよう。あっ、自分で編集したやつです。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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