[粕谷秀樹/プレミア・ポジション別BEST5]A・コールはすべての要素を装備した左サイドバックだった

粕谷秀樹のメッタ斬り 036

粕谷秀樹のメッタ斬り 036

リヴァプールの両翼を務めるA・アーノルド(左)とロバートソン(中)、チェルシーの主将を務めるアスピリクエタ(右)photo/Getty Images

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アスピリクエタはパーフェクト

〈プレミア・ポジション別BEST5〉の第3回はサイドバック編。いやぁ、苦労したなぁ。マンチェスター・ユナイテッドで一世を風靡したガリー・ネビルとパトリス・エブラ、2000年代初期のリーズで大活躍したイアン・ハートなどが選外だからね。プレミアリーグのサイドバックって、なかなかの激戦区だよ。

さて、彼ら名手を押しのけて第5位にランクされたのが、リヴァプールのトレント・アレクサンダー・アーノルドだ。「えっ、もっと上じゃないの?」と首を傾げるんでしょ。たしかにアシスト能力は高い。リヴァプールだけではなく、イングランド代表でもA・アーノルドの右足は貴重な武器だ。

でも、今シーズンは守備が軽くなった。ここがマイナスポイントだったんだ。DFである以上、守りに磨きをかけないとね。
逆サイドのアンドリュー・ロバートソンを見てごらんよ。アシスト能力はA・アーノルドと同ランクであるうえに、一対一でも粘り強い。簡単には抜かれない。サイドバックを評価するとき、近ごろは攻撃力に焦点が当たりすぎているような気がするんだよ。そんな観点に基づき、ロバートソンを第4位にプッシュ。

リヴァプールの両サイドバックをしのいで第3位に入ったのが、セサル・アスピリクエタ(チェルシー)だ。一対一でもポジショニングでもほとんどミスを犯さない。ジョゼ・モウリーニョ監督(現トッテナム)もチェルシーを率いていた当時、「パーフェクトなサイドバック」と絶賛していたね。ほんの少しだけスピードを上乗せできれば、トップ2だったんだけどな。惜しいっ!

エヴァートンでプレイするベインズ(左)、かつてチェルシーで活躍したA・コール(右)photo/Getty Images

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ベッカムの記録に迫る男とは?

プレミアリーグのDFとして最多の53アシスト。つい先ごろ、所属クラブと1年間の契約延長で合意に至った。今年38歳。まだまだ元気。だれだか分かる? エヴァートンのレイトン・ベインズだ。彼が第2位ね。

左足から繰り出されるクロスは正確無比。中央により優れたゴールゲッターを配置できていたら、アシスト数はいまごろ70を超えていたと思うよ。デイビッド・ベッカム(元マンチェスター・ユナイテッド)の80に迫っていたんじゃない?

ちなみにプレミアリーグの公式記録では、69アシストのアシュリー・ヤング(現インテル・ミラノ)がDF部門のトップなんだけれど、FW登録だったアストン・ヴィラ所属時の38アシストも含まれている。ベインズは左サイドバックひと筋。どちらが上かは明らかじゃん。

そして第1位は、2000年から10シーズン以上、アーセナルやチェルシーで異彩を放ったアシュリー・コールだ。彼が易々と攻略されたシーンは記憶にない。スピード、クロスの精度、対人プレイ、攻守の切り替えなど、すべての要素を装備した左サイドバックだった。

それから176センチ・66キロという痩身にもかかわらず、ハイ・インテンシティの持続が可能な肉体も大きな強みだったね。うん、そうなんだ。ケガや選手生活の晩年を除けば、コールはつねにコンディションを維持していたよ。少なくともポッチャリ体形にはならなかった。

嗚呼、全体練習に戻ってきたルーク・ショー(ユナイテッド)の腹まわり……。コールの爪の垢でも煎じて飲まんとあかんのですよ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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