[粕谷秀樹]パスを選択するよりもガツンと一発かましたれ 南野はもっともっとエゴイストでいい

粕谷秀樹のメッタ斬り 039

ブライトン戦で途中出場を果たした南野 photo/Getty Images

クロップの信頼は揺るがない

あと一歩だったんだけどなぁ……。

34節のブライトン戦に途中出場した南野拓実は、試合終了間際に決定的なチャンスをつかんだ。ボールコントロールがちょっとだけ流れて初ゴールには至らなかったけれど、動き自体は悪くなかったよ。攻守の切り替えも素早く、鋭い。ユルゲン・クロップ監督も手を叩いて南野の健闘を称えていた。

1月にザルツブルクからリヴァプールに移籍し、いまだに無得点。そんな記事を目にするケースが増えてきた。でもね、名もないオーストリアのクラブから世界最強にやって来たのだから、とまどって当然じゃん。とくにプレミアリーグは世界一の戦場だ。ありとあらゆる事象に適応するまで時間がかかる。

しかも新型コロナウイルスの感染拡大で3か月も中断した。異国の地で未知のウイルスと戦う難しさは、われわれの想像のはるか上なんじゃないかな。プロだから結果が問われて当然だとしても、南野のプレイ内容を吟味してから発信するのが、仁義ってヤツだと思うよ。

「タキ(南野の愛称)はトップチームの貴重な戦力だ。日々のトレーニングをしっかりこなし、戦術も非常によく理解している」

クロップの信頼も揺らいでいないんだな。

移籍後初ゴールが遠い南野。今後は積極的なプレイを期待したい photo/Getty Images

間違いじゃないけれど歯がゆい

ただ、もっと積極的というか、場面によってはエゴ大爆発でもいいんじゃないかな。相手の陣形を即座に察知し、シュートを狙える場合でも南野はパスを選択するでしょ。間違いじゃないけれど、FWなんだからガツンと一発かましたれや、と歯がゆくなることもあるんだよね。

自分が大好きなモハメド・サラーは、パスが最適なシーンでも強引にシュートを撃つ。フリーで待っていたロベルト・フィルミーノとサディオ・マネが不満そうでも、OBのジェイミー・キャラガーが「あまりにも利己的」と批判しても、いっさい意に介さない。南野は、サラーのような貪欲を身につける必要があるな。

「タキ、なんで俺にパスしないんだ!?」(サラー)
「狙えるから狙っただけだ。黙ってろ、ボケ!!」(南野)

これくらい強気でも構わないさ。

リーグ優勝が決まったとはいえ、史上最多となる勝利や勝点、ゴールディファレンスなど、リヴァプールにはリーグ記録更新の可能性がいくつか残されている。クロップも「消化試合なんかひとつもない」と、最後まで全力を尽くすと誓った。残り試合も前線はフィルミーノ、マネ、サラーの3トップが基本で、南野はバックアッパーに位置づけられる。チャンスの数は多くない。

でも、世界最強クラブのトップチームに名を連ねていることは、紛れもない事実でしょ。実力の証じゃん。だから南野は焦らず、かといってノンビリせず、積極性を全面に打ち出していくべきなんじゃないかな。

そしてゴールを量産し、フィルミーノとマネ、サラーが南野を強く意識するようになれば、リヴァプールはさらに強くなる。バックアッパーからレギュラーへ──。ピッチの上では、もっともっとエゴイストでいいと思うよ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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