[粕谷秀樹]ケパは失点につながる致命的なミスが多かった そしてイングスの努力がついに報われる

粕谷秀樹のメッタ斬り 040

今季なかなか思うようなパフォーマンスを披露できなかったケパ photo/Getty Images

極度の不振に陥った理由は?

人生には明暗がある。フットボールの世界も同様で、素晴らしいシーズンを送った者がいれば、期待外れに終わった者もいる。

ケパ・アリサバラガ(チェルシー)はどうしちまったんだい!? パントの正確性を欠いたり、クロスにかぶったり、失点につながる致命的なミスもやけに多かった。37節のリヴァプール戦でもGKが処理すべきボールに反応せず、アントニオ・リュディガーに一喝されている。

「COME ON,MAN」

昨シーズンのケパは、移籍早々にトップクラスのGKだってことを証明した。的確なポジショニングと丁寧なボール処理、攻撃の基点になりうるパントキックなどで、チェルシーのチャンピオンズリーグ出場権獲得に貢献したよね。

だから、プレミアリーグによりフィットするはずの今シーズンは、リヴァプールのアリソンやマンチェスター・シティのエデルソンとともに、終盤まで最多クリーンシート数を争うんじゃないかって期待していたんだ。

ところが、ケパのパフォーマンスはお粗末すぎた。計算できるセンターバックがリュディガーただひとりとはいえ、クリーンシートはわずか8試合。昨シーズンより6試合も少ない。ケガをしているわけでもないのに、極度の不振に陥った理由はなんなんだろうね。自信喪失? 人間関係?

復調の兆しが見られないのだから、フランク・ランパード監督がケパをあきらめたのは当然だ。新GKとしてアヤックスのアンドレ・オナナ、バルセロナのマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンなどをリストアップした、という情報もある。

ケパもチェルシーに居づらくなってきた。残留して二番手に甘んじるよりは、自分の力を再証明するための移籍が、正しい選択かもしれないな。

プレミアリーグの得点ランキングで2位に入ったイングス photo/Getty Images

フットボールに真剣に向き合う

サウサンプトンで22ゴールだよ。リヴァプールやシティと違って、アシストメンバーに恵まれているわけじゃないんだな。アシストランキングのトップ10をみても、あっ、トップ20にもサウサンプトンの選手はだれもいない。

それでもダニー・イングスは、得点ランキングで2位に食い込んだ。快挙だよね、快挙! 野球解説者の張本勲さんがプレミアリーグに興味を持っていたら、「あっぱれ」をくださったに違いない。

これまでのキャリアハイは2014-15シーズン、バーンリーに所属していた当時の11ゴール。翌シーズン、リヴァプールに移籍したものの、ハイレベルの生存競争と負傷もあり、ほとんど活躍できなかった。しかしイングスは不平不満を口にせず、トレーニングで黙々と汗を流していた。

「フットボールに取りくむダニーの姿勢には頭が下がる」

ユルゲン・クロップ監督も、イングスをリスペクトしていたんだよね。

そして今シーズン、イングスの努力が報われた。信じる者は救われるじゃないけれど、フットボールを愛し、真剣に向き合ってきたからこそ、20ゴールっていう大台に到達できたんじゃないかな。

いま29歳。まだまだ闘える。来シーズンは得点王を視野に入れ、30ゴールを狙うか。イングス、やるじゃん。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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