J1第26節FC東京×鹿島が開催され、敵地に乗り込んだ鹿島が2-1で逆転勝利を収めた。試合後、鹿島の監督、選手からは“選択”という言葉が何度か聞かれた。サッカーは常に動いていてそれこそ選択の連続だが、試合前、試合中に彼らがどんな選択をし、結果として勝利をもぎ取ったのか? 各々のコメントから紹介してみたい。
「まずはスタメンの選択というところで、できるだけフレッシュな状態の選手を起用しました。それがうまく機能してくれたと思います。手ごわい相手に対して、メリハリをつけたプレイ、的確に判断することを要求していましたが、選手たちが実行してくれました」
これは試合後のザーゴ監督のコメントで、過密日程で選手のやり繰りが難しいなか、荒木遼太郎、ファン・アラーノ、関川郁万、沖悠哉など、この日の鹿島は経験や実績はまだ少ないが、最善の力を発揮できる選手たちをピッチに送り出していた。
もっとも、これは現在の各クラブに当てはまる選択で、FC東京も主力数名がベンチに控え、フレッシュな選手たちがピッチに立っていた。お互いに同じ決断をしたわけだが、前半からチーム全体がうまく機能していたのは鹿島だった。11分に荒木遼太郎、26分にはエヴェラウドが決定的なチャンスにシュートを放っている。どちらもGKに防がれて得点に至らなかったが、流れは鹿島がつかんでいた。
さらには、これまでファン・アラーノ、土居聖真が同時出場するときは、ファン・アラーノが中央、土居聖真が右サイドという選択をするときもあったが、この日は両名のポジションを入れ替えていた。その理由について、ザーゴ監督は以下のように説明している。
「決定機を迎えたときに、土居のほうがシュートという意識が強いので中央へ入れました。一方、アラーノはサイドバックやボランチとトライングルを作るのがうまいです。それぞれの良さがあるわけで、いまうちの右サイドバックは本職ではありません。そういった意味で、どう組み合わせるとサイドバックの力をよりよく引き出せるかを考え、これからも選択していこうと思っています」
48分に生まれた同点弾は、中央の土居聖真からファン・アラーノへ短くつなぎ、右サイドの小泉慶へ。ここからふたたびファン・アラーノに戻され、ファン・アラーノがゴール前に入れたボールにエヴェラウドが反応して生まれたものだった。ザーゴ監督の狙いがうまくいったプレイで、57分に奪った決勝点も同様だった。
相手陣内のやや左サイドで荒木遼太郎がボールを受けると、前方にいた土居聖真が中央から左サイドへ、ファン・アラーノが右サイドから中央へ同時に動き、複数のパスコースを作り出した。荒木遼太郎が選んだのはファン・アラーノのほうで、強めのラストパスを入れた。ファン・アラーノがこのタテパスをしっかりとトラップし、左足でフィニッシュしてゴールネットを揺らしている。そして、このときに荒木遼太郎も最善の選択をしていた。
「ボールを持ったときに、パスかシュートの選択をまずは考えました。最初に聖真さんの動きがみえましたが、(パスを出すには)ちょっと厳しかった。アラーノがいい感じに走ってきたので、目の前にいた相手選手の動きをみて、ちょっと溜めてからパスを出しました」
最初にも触れたように、サッカーは選択の連続で成り立っている。そこに正解、不正解はなく、常になんらかの意図を持って判断をすることが大事で、それが結果につながっていくのだと思う。なんの意図もないプレイは、おそらく結果にはつながらない……。だとしたら、逆転勝利を収めたこの日の鹿島は、スタメンの選択からはじまり、多くの場面で正しい判断をしたことになる。
ただ、サッカーでは同じ試合、同じ場面は二度とない。似たようなシチェエーションを迎えて同じ判断をしても、同じ結果が得られるとは限らないのがサッカーでもある。それでも繰り返しトライすることが大事で、決勝点を奪ったファン・アラーノは「練習で繰り返しやっているカタチがいまはフィニッシュにつながっています。手ごたえは感じています。これからも精度を磨いていきます。もっとゴールできるようにチーム全体で頑張っていきます」と言葉を残している。
文/飯塚 健司
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